※スマイラー117号(2025年11月)より転載
値上げ以上の付加価値向上を目指した5年間
「レストランHACHI」(以下、HACHI)は1979年、名取市で1号店を開業し、現在6店舗を県内で展開している。2021年に佐々木 源大郎 氏はオールスパイスに入社。叔父にあたる先代や家族がコロナ禍で飲食店運営に苦悩する姿を目の当たりにし、力になりたいと全く異業種の前職を辞めて地元に戻った。
コロナが収束すると同時に、じわじわと原材料価格の高騰が深刻化していく中で、佐々木氏が掲げた経営方針は「価値を上げる」だった。佐々木氏が入社した頃からオールスパイスには、値上げを繰り返さなければいけないだろうという認識があった。「そのためには値上げした価格以上の価値を感じてもらいたい。一言で言えば『付加価値の向上』に取り組んでいます」と佐々木氏。
野菜、米、肉にパンやビールまで地元食材をふんだんに取り入れているオールスパイスには企業理念がある。それは“店の食材を提供してくれる生産者の代弁者として素材の魅力を伝える使命”だ。この理念のもと、価格転嫁を抑えるために仕入れ先に無理な価格交渉を行うことは考えなかった。値上げは不可欠な前提で取り組みがなされてきたようだ。
<関連記事はコチラ>
オンリーワンの商品と質の高いサービスがあれば、値上げしてもお客様はついてきてくれる
強い商品と質の高いサービスが客数を回復させる
▼ぐるなび公式アカウント▼
【LINE】ぐるなび通信デジタル
週1~2回新情報をお届け。ぜひ友だち追加をお願いします!
高単価メニューと割引券で常連客に恩返し
オールスパイスは2023年に15%の価格改定を行った。また、その年に「HACHI」史上、最も高単価「仙台牛100%ハンバーグ」の販売を開始。以前に月替わりメニューで出されていたものを、グランドメニューに昇格させた形だ。こうした高単価メニューの導入は、既存メニューの値上げだけに頼らず、客単価を高めていくための取り組みでもある。
この店の変化に対し、既存客は店に行きづらくなったと離れていかなかったのだろうか。「比較的客単価が低いオリジナルの『黄金比率ハンバーグ』もあり、メニューの価格帯に幅を持たせています。高単価メニューは“今日はちょっとぜいたくしたいな”というお客様に届くメニューであってほしいです」と佐々木氏。
退店時に定番や人気メニューの割引券を配布するなどリピート客集客の施策も継続中だ。価格転嫁する度に常連客には心苦しくなるが来月もぜひ来て欲しい、という想いを込めて“感謝クーポン”と名付けている。
メニューの宣言と変化に強い組織づくり
2024年に二度目の値上げを行った際、宣言としてメニューの1ページ目に載せた言葉がある。「要約すると『私たちは人の手による料理と人の手によるサービスで、これからも料理やサービスの向上に努めてまいります』といった一文です」。この言葉を載せたのは、値上げでお客様に課した負担に対し、誠意を持ってお客様に向き合う覚悟と姿勢を示したかったからだ。また、この宣言は掲げるだけで終わらせず、その言葉をスタッフたちは朝礼で読み上げ、お客様への約束を忘れない取り組みをしているという。
古参の従業員に囲まれた中での改革に、佐々木氏に戸惑いはなかったのだろうか。「HACHI」はコロナ禍以降、“変化の激しい時代において柔軟に対応できる、変化に強い組織でなければいけない”というメッセージを先代から今に至るまでスタッフに発信し続けている。「スタッフはそれをしっかり理解しており、会社としても『変化に強い人が評価される』という部分も含めた組織づくりに取り組んできています。そのため戸惑いはなく、全社一体となって改革に向き合うことができています」と自信をにじませる。
セット編成で満足度を高め、ES向上も追求
2025年の価格改定では、グランドメニューの価格は変更せず、代わりにこれまで単品で提供していたサイドメニューを、「セットメニュー」という見せ方で、客単価アップに取り組んだ。これ以上の値上げはリスクが高いと判断したからだ。スープの具材なども仙台産に切り替え、オリジナルドレッシングをリニューアルするなど品質の改良を重ねてきた。
佐々木氏は、客単価=お客様満足度と考えていると話す。「例えばナポリタンを単品で召し上がったお客様に私たちの自信作であるサラダとスープも提供することで、より満足度をあげてもらいたいと考えました」。
値上げを繰り返した3年間で、客単価はコロナ禍前と比較して3割から5割アップ。今年はようやく前年比を上回る客数も獲得し、数字の上でも手ごたえが戻ってきた。しかし、予断を許さない状況だ。「それはあくまでも現時点までの話で、今後も価格転嫁は避けられないので、さまざまなリスクを覚悟して挑戦し続けていかなければいけないと思っています」。
ボトムアップ形式でやりがいと成長機会を
オールスパイスが原価高騰以外に留意するのは、最低賃金の引き上げだ。原価だけでなく、スタッフの時給といった人件費の上昇は価格転嫁の要因となる。サービス・商品の価値を高める施策はもとより、従業員のレベルも上げていかないと顧客満足を高めた価格転嫁は難しい。そしてレベルを上げるために従業員の満足度を上げることも重要と佐々木氏は考える。「顧客満足(CS)のための付加価値向上と、従業員満足(ES)の向上、この二つが大きなミッションですね」。
ES向上の取組みについて聞いた。「私たちの規模では、大企業のような手厚い福利厚生を用意するのは正直難しい。その分、当社で働く価値として、成長ややりがいを感じられる環境づくりに取り組んでいます」。店舗の管理職や先輩スタッフは、雇用形態に関わらず皆から意見を吸い上げて店をより良くするべき、という考えを分かち合っている。また社内連絡ツールを用いてさまざまな情報も共有。アルバイトのスタッフが社長に「こんなことに気付いた」といったダイレクトメッセージを入れることも。社内研修も本社にスタッフを集めて活発に行っている。
仙台に根差し“「HACHI」らしさ”を貫く
県外に進出することは否定的だ。「どこにでも『HACHI』があるようになれば、仙台らしさや仙台に来た時の『HACHI』、という意味合いが薄れてしまうので、仙台でのみあり続けることを大事にしていきたい」と佐々木氏は言う。「HACHI」が「HACHI」であるのは、地元や地域の食材生産者や常連客といった人々の支えがあるからこそであり、佐々木氏は彼らを一番大切にした店づくりをしていきたいと語る。
「『HACHI』はこれからもどこか人の温かみを感じるという持ち味を強みに、なるべく人の手による仕事で付加価値を高めていきたい。こうした取り組みはコストのかかることですが、会社としてはそれも必要な支出と考え、今後も価格以上の価値を与えられる価格転嫁を続ける考えです。お客様にもその努力をわかってもらえるよう挑み続けたい」。
2025年1月に佐々木氏は先代からオールスパイスを事業承継した。創業以来守り続けてきた店の理念と世界観。それらを保ちつつ、新しさも果敢に取り入れていくであろう若き三代目の今後の取り組みに注目したい。
住所:宮城県仙台市青葉区片平2-4-15東急ドエルアルス仙台一階
https://www.maido-8.com/company/
Restaurant HACHI(ハチ)仙台本店
https://r.gnavi.co.jp/68uzkn3j0000/map/
■飲食業界誌「スマイラー」
「スマイラー」公式サイトはこちら!
Googleビジネスプロフィール(GBP)の運用代行サービスは、ぐるなびで!
ぐるなびによるGBP(旧Googleマイビジネス)を活用したMEO対策・クチコミ対応を含む、飲食店に特化した集客支援・運用代行サービスを紹介します。
【ぐるなび】飲食店向けGoogleビジネスプロフィール(GBP)集客支援・運用代行サービス
資料請求・お問い合わせはお気軽にどうぞ
「ぐるなび通信」の記事を読んでいただき、ありがとうございます。
「ぐるなび」の掲載は無料で始められ、飲食店のあらゆる課題解決をサポートしています!
