2012/06/27 挑戦者たち

株式会社RETOWN 代表取締役 松本 篤氏

「街を元気に!」を掲げる株式会社RETOWN。関西を中心として飲食店事業だけでなく人材関連事業、不動産関連事業など幅広く展開している。松本氏に会社経営に対する思いと今後のビジョンについて聞いた。

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本物の日本の食材と食文化を世界に向けて発信していきたい

「街を元気に!」を事業コンセプトに掲げる株式会社RETOWN。2004年の設立以降、飲食店事業だけでなく、人材関連事業、不動産関連事業など幅広いビジネスを展開し、関西エリアを中心に大きな成長を遂げてきた。現在、生産者に目を向けた事業に尽力する代表取締役の松本 篤氏に会社経営に対する思い、そして今後のビジョンについて聞いた。

松本 篤 氏

――早い段階から、起業することを夢見ていたと聞いています

子供の頃から、漠然と将来は自分の会社を持ちたいと思っていました。小学校の卒業文集にも「将来は社長になる!」と書いたくらいです。祖父が実業家で、親戚にも商売人が多かったことが影響しているのだと思います。とはいえ、どのようなビジネスをやりたいのか、具体的なイメージがあったわけではありません。

数多くあるビジネスの中で飲食業に興味を持ったのは、学生時代に親戚が経営していた神戸・三宮のクラブでアルバイトをしたことがきっかけですね。当時、とても流行っていた店で、街に人の流れを作るほどでした。一軒の店が街に与える影響を肌で感じ、将来は自分の店を持ちたいと強く思ったのを覚えています。

そして、就職活動をしていくなかでFC(フランチャイズ)ビジネスに特化したコンサルティングを行なっていた株式会社ベンチャーリンクの存在を知り、入社を決意しました。資金力がなくても、FCシステムを活用すればスケールの大きなビジネスが展開できる点に魅力を感じたのです。

――ベンチャーリンクでの経験は、その後のキャリアにどう影響したのでしょうか?

ベンチャーリンクでの1年半で学んだことは、FCビジネスの基礎です。入社と同時に配属になったのは、新たに立ち上がったばかりの名古屋支社でした。そのため、少人数で加盟店開発や立地開発など幅広い仕事を担当することになり、ビジネスの仕組みをゼロから知ることができたのです。ここで得られた経験や知識は、後に起業するうえで大変役立ちましたね。特に、建築工法をはじめとする建築関連のビジネスに携われたことは、大きな意味があったと思います。

その後、ベンチャーリンクを退職し、建築業務に携わった経験を活かして名古屋で起業しました。工務店を対象とした建築物の性能評価の申請をサポートする事業でした。当時、欠陥住宅が社会問題になっていた背景があり、2000年に公布された品確法(住宅の品質確保の促進等に関する法律)に基づいて、建築物の品質を評価するニーズがあり、そこにビジネスチャンスを見出したのです。ただ、中小の工務店とお付き合いをしていくなかで、申請時は問題がなくても、認定時に工務店が倒産してしまうケースも多く、貸し倒れのリスクが常にあり、なかなか経営が安定しませんでした。そんななか、地元の電力会社からアライアンスの話が舞い込み、最終的には会社を譲渡することに決め、関西に戻ることにしました。

――関西に戻ったところで、いよいよ飲食業で独立する準備を始めたのですね

会社を譲渡したことで、飲食店経営をスタートさせる軍資金はできました。しかし、飲食チェーンを運営するためのノウハウがまだ自分の中に蓄積されていないように思い、そんなときに声をかけていただいた焼鳥チェーン「ぢどり亭」の役員に就任しました。そこで3年半、店舗開発などを経験した後、現在のRETOWNを設立しました。「RETOWN」という言葉には、単に店舗を繁盛させるだけでなく、街全体を活性化させたいという想いが込められています。ですから、事業コンセプトの一つは「街を元気に!」です。

そのほか、会社を設立するにあたって、重要視しようと決めていたことが4つありました。それは「人」「物件」「お金」「業態」です。ベンチャーリンクでの仕事を通じて感じたのは、どんなに繁盛している自社「業態」を持っていても、なかなか店舗拡大できないオーナーが多く存在していることでした。また、「お金」があって一時的に店舗拡大は実現しても、その後、着実な成長を続けるためには、「人」と「物件」を含めたすべての要素がバランスよく存在していなければいけないということです。そのため弊社は、創業当初から店舗関連だけでなく、人材と不動産の事業部を設置しました。最初から複数の事業を始めるなんて、いま考えれば、無謀なことをしたなと思いますね。

コンセプトこそ大々的に掲げたものの、その船出は厳しいものがありました。自社ブランド1号店となる「炭火焼鳥 ちんどん 大正店」と並行して、市から助成金をいただき、兵庫県三田市のショッピングモールに焼肉店をオープンしました。これが見事に失敗。施設の集客力と焼肉業態に対する勉強不足が原因でした。このとき、あらためて「物件」や「業態」の重要さを痛感しました。特に「物件」は絶対に妥協してはいけないと思いましたね。

その後は設立当初の様々な反省を活かし、店舗も順調に拡大させることができ、現在では複数の業態を運営、延べ約60店(FC店含む)を展開するまでの規模に成長しました。

――現在、御社がもっとも注力されている事業は何ですか?

産地を元気にする「生産者活性化事業」に力を入れています。2008年に起こった燃油価格高騰の影響で食材の価格も上昇し、飲食業界も価格競争が激しくなってきました。低価格は当然のこと、コストを抑えつつ、どれだけ品質の高いものを提供できるかが勝負の分かれ目になってきています。おいしい食材をいかに安く手に入れるかがカギ。そこで、生産者から私たちに食材が届くまでの流通ルートを見直し、徹底してムダを省くことでコストの低減を図ろうと考えました。

生産者側のメリットを考えても、複雑な流通経路を辿る必要がないため、自身で価格を決定する権利があり、従来は処分していた端材なども有効活用できます。しかし、やみくもに仲介ルートを省くことが必ずしも有益に働かないケースも考えられるので、その点では慎重にヒアリングを重ね、生産者にとっても私たちにとっても、意味のある着地点を探しました。

現在、この事業の一環で岡山県新見市の哲多和牛牧場から"千屋牛(ちやぎゅう)"を仕入れ、「犇屋(ひしめきや)」を運営。大阪・難波の「犇屋洋食喫茶」には精肉店を併設しています。同じように「Green Cafe 」では野菜直売所を併設し、ほかにも魚や鶏肉など、各地の生産者と専売契約を結んでいます。

――最後に御社の今後のビジョンについて、お聞かせください

当社は、3つのビジョンを掲げています。それは、「本物の味をリーズナブルな価格で提供する」「飲食業界で長年にわたって活躍できるプロの人材を育成する」「生産者にも喜んでいただける店づくり」です。

この3つを同時に実現できる店舗展開をしていきたいのですが、特に「本物の味を低価格で提供する」ことは、私たちにとって至上命題だと感じています。先日、ベトナムで寿司を揚げて串カツのようにして食べる店があると耳にしました。まちがった形で日本食が伝わってしまっている気がして、残念な気持ちになりました。飲食業界に携わる者として、誇るべき日本の食材と食文化を、世界に対してしっかり発信していきたい。そのために、まずは私たちがビジネスを展開している街に、"本物"を提供していきたいと考えています。

Green Cafe
(大阪・難波)http://r.gnavi.co.jp/k615116/2011年4月、なんばOCATモール1階にオープン。広々とした店内は居心地がよく、1日に2~3回来店する人もいるという。サンドイッチや生パスタが人気
犇屋洋食喫茶
(大阪・難波)http://r.gnavi.co.jp/6394783/2012年3月、なんばOCATモール1階「GreenCafe」の隣にオープン。柔らかな赤身が特徴の岡山「千屋牛」と、繊細なサシに定評がある鹿児島のブランド和牛「のざき牛」を仕入れている。昼時はサラリーマンやOLで席が埋まる。午後になると、近隣の主婦たちが夕食の食材を求めて併設の精肉店に立ち寄ることも。
陽の鶏 石橋店
(大阪・石橋)http://r.gnavi.co.jp/k615115/2011年にオープンした炭火焼鳥専門店。毎朝、契約ファームから仕入れる朝挽き鶏をリーズナブルに提供。抜群の鮮度と旨味を誇る鶏肉を様々な料理で楽しめる。阪急宝塚線石橋駅から徒歩1分に立地。最大20名に対応する掘りごたつの座敷席もあり、仕事帰りのサラリーマンや学生で連日賑わっている。

Profile

まつもと あつし

1975年

兵庫県神戸市生まれ

1999年

FCビジネスの基礎を学ぶため、株式会社ベンチャーリンクに入社。名古屋支社の立ち上げに携わる

2004年

独立して有限会社RETOWNを設立。有限会社焼味尽(やみつき)のコンサルティングおよびフランチャイズ代行業務を開始する

2008年

産地の活性化をねらい、生産者活性化事業を開始する

Company Data

会 社 名

株式会社RETOWN

所 在 地

大阪府大阪市浪速区湊町1丁目4-1 6F

店 舗 名

「炭火焼鳥ちんどん」「炭火やきとり九州郷土料理 かしわ舎」「陽の鶏」「黒毛和牛焼肉 犇屋」「鮪の脇口 天然活〆」「ほんまや」ほか