Vol.174
巨大投資が「壁」になる。大手チェーンが郊外を独占する理由
今回は外食立地としての郊外ロードサイド(以下、郊外)の特性についてお話ししましょう。独立開業を目指す人、あるいは街場で繁盛店を作った人。こういう人たちは、まず、郊外で店を出そうとは思いませんね。その理由は「店前に人が歩いていない」「店舗投資がデカい」という2点です。 この恐怖心ゆえに、個人店は足がすくんで出せないのです。
それでも果敢に郊外に店を出して、繁盛店を手に入れた経営者もいますが、ごく稀(まれ)です。ですから、郊外を車で走っていると、大手のチェーンの看板・建物ばかりが目につきます。“郊外はチェーンが出る立地”という考えが固定化しているようですが、大手チェーンが郊外に出店する理由は、投資は大きいがそれ以上の利益を生み、車で来店するファミリー客が取れるからです。
たとえばマクドナルドの郊外の大型店(敷地面積1,000坪、ドライブスルーは2レーン)になると、2億5,000万円を投じて、年商3億円を稼ぎ出します。車で来るお客様が相手ですからとりわけ重視するのが、大商圏からお客様を引き寄せる「リード看板」の働きです。よく目にする「2km先にマクドナルド」と大書された、あれです。大手の回転ずしチェーンも同様に、巨大な投資をして大きな年商を確保します。
「とても太刀打ちできない」と思われるでしょうが、実はそこが大手チェーンの思うツボなのです。巨大な投資が「壁」になって競合を排除し、郊外の外食市場を独占することが可能になります。
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実は寿命が短い「街中立地」。流行に流されない贔屓(ひいき)」の底力
郊外立地の最大の特徴は、車に乗ったファミリー客を取る店だということです。ファミリーレストランの店数は今や頭打ちだといわれていますが、それは市場が小さくなったからではありません。他の店がことごとく「ファミリーレストラン化」してお客様を奪い合っているからなのです。先のマクドナルドも、回転寿司もそうですが、ファミリー客が取れない店は、郊外では戦えません。
では、ラーメン店はどうでしょうか?店数が1番多い「幸楽苑」も、そのひとつ上の価格で伸びている「丸源ラーメン」もファミリーレストランです。一方、ファミリー客を相手にしないラーメン店もあります。一部の固定客をしっかりつかんでいますが、こちらは大きなチェーンにはなれません。
ファミリーレストランになるメリットは何かという、“店の寿命が長くなる”ことです。ファミリー客というのは非常に義理固い客層なので、いったん“贔屓(ひいき)”になってくれると、長期にわたって一定の頻度(ひんど)で来店してくれます。
では、個人店の多くが出店している“繁華街やターミナル”はどうでしょうか。こちらは不特定多数が広い商圏から集まる場所で、常に新しいコンセプトの店が次々と参入してきます。お客様も目移りしてしまい、なかなか1つの店に落ち着いてくれません 。出入りが激しく、結局、店の寿命が短くなるのです。
郊外出店一辺倒の大手創業者が「街中の方が怖くて出せない。お客様は新しい店に流れていってしまうからね」と言っていましたが、その通りでじっくりと腰を据えて息の長い商売をするならば、郊外以外には考えられないのです。
「世代の継承」が利益を支える。息の長い商売を作る5つの条件
郊外立地は保守的ですが、しかるべき条件さえ押さえていれば、とても息の長い商売ができるのです。逆に、特定の客層を狙ったトレンド商売は、郊外では全く不向きだということです。
ファミリー客に支持される強さは、“世代の継承がスムーズにいく”ことにもあります。かつての子供が親になって、また昔の店を使ってくれる。郊外には半世紀近く続いている店がたくさんあるのは、こうして下の世代に引き継がれて生き延びているからです。これは中心部ではまず考えられないことです。
言うまでもなく、ファミリー客に支持されるには条件があります。それは
1)アクセスしやすい立地にある
2)家族全員が食べたいメニューがそろっている
3)支払額が妥当で、一定の頻度で使っても、家計の大きな負担にならない
4)楽しい
5)クセになる味になっている
特に3)と5)が大事 です。使いやすい価格、クセになる味の2つの条件を満たせない店は、たとえメニュー選択の幅があっても、ファミリー客には長く使ってもらえません。
街中立地は郊外に比べると投資は小さいですが、浮き沈みが激しく、実は投資回収率は郊外店の方が高いのです。ここにチェーンが郊外に出店する最大の理由があります。つまり、先ほどの外食創業者の言葉ではありませんが、街中立地の商売の方が実は圧倒的に難しいのです。
「郊外駅前」で勝つ。平日を補完する重層的な客層の狙い方
日本にはもう1つ、“郊外駅前”という立地があります。郊外にあるJRや私鉄線の駅や駅近、という立地です。ここは郊外のように大きな投資を必要としませんし、中心部の繁華街のようにべらぼうな家賃を取られるようなこともありません。さらにこの立地の後背には、分厚いファミリー層が居住してますから、店はファミリーレストランとして機能します。
ただし、乗降人員が5万人以下の駅近は避けるべきでしょう。そして、商圏内に大きな大学があったり、オフィス機能があるなど、客層が重層的でなければいけません。なぜなら、ファミリー客相手の弱さは、平日の客数が伸びないところにありますが、オフィスや大学があれば、平日の売上の弱さを補完することができるからです。
居酒屋グループでは「鳥貴族」が好調なのは、ファミリー客とをつかんでいるからです。「鳥貴族」では、こういう立地で“昼営業”をする店を増やしています。まさに、ファミリーレストランとして機能しているのです。
店を長寿にする秘訣は、ファミリー客が使える店にすることです。そのための条件は、結構厳しいものなのです。
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