2012/06/29 繁盛の黄金律

パート・アルバイトの古ダヌキを叩き出せ

飲食業では、パート・アルバイト(P・A)なしでは多くの店は営業が不可能です。店はまわりませんし、また利益を生み出すこともできませんが、ここに危険が潜んでいることも忘れてはなりません。

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Vol.10

パート・アルバイトの「ボス」の言いなりになってはいないか

今の飲食業では、パート・アルバイト(P・A)なしでは多くの店は営業が不可能です。P・Aの能力を高めて、機能的な集団にしないことには店はまわりませんし、また利益を生み出すこともできません。P・Aの中には、正社員以上にスキルがあって、有能で、気働きをする人間も少なくありません。実にありがたい存在ですが、ここに危険が潜んでいることも忘れてはなりません。

店主(経営者)が「こいつがいなくなったら、わが店は立ちゆかなくなるな」と絶大な信頼を置くP・Aが存在すること。このこと自体が危険なのです。P・Aは常に代替可能にしておかなければなりません。有能なP・Aが必ずそうだ、というわけではありませんが、店をすべて取り仕切っているようなP・Aがいることは、その店の崩壊の始まりです。いわゆるP・Aのボス的な存在ですね。なかなかいいP・Aが集まりづらい現在、自分の交遊関係からP・Aを集めてきてくれて、そのP・Aの訓練もやってくれる存在。気がつくと、P・Aはそのボスの号令のもとに動く集団になっていたりすると、これはもう目も当てられません。

店主(経営者)は無意識のうちに、そのボスに気を遣うようになります。ボスの機嫌を損ねると、それこそP・Aの「総上がり」が起きかねません。ボスにまかせておけば、欠員が出る心配もなく、営業を続けていけるのですから、多少のことには目をつむります。「平日のランチのフロアは3人でまわしてもらいたいのだけど、4人が常態化してしまったなぁ。」「ちょっと人件費が上がってきているけれど、まあいいか」。店主(経営者)は、人の採用という難題から解放されたかわりに、人事権という、経営の根幹にかかわる権利をボスに手渡してしまったのです。

経営者自らが身体を張って「少数精鋭」を実行する

店の進化とは何でしょうか。看板メニューがより強力になって、客数増を果たせること。これがひとつ。もうひとつは、「人時接客数」が上がって、同じ売上でも利益が上がることです。人時接客数とは、1人の従業員が1時間に対応するお客様の数です。具体的に言うと、客数を総労働時間で割った数です。例えば、100人の客数を40時間でこなしたとすると、人時接客数は2.5人ということになります。

店を進化させるためには「客数が増えても総労働時間が増えない」ことが実現されなければなりません。簡単に言うと、少数精鋭化していくということですね。これを、従業員の意欲とスキルのアップと、新しい仕組みの導入で実現させなければなりません。無理なハードワークでこれをやろうとすると、サービスの質・メニューの質が落ちて、結局、客数は減少に向かってしまいます。ボスの話に戻しますと、ボスにまかせっきりの店は、必ずこの人時接客数が落ちていきます。

いつの間にかジワジワと労働時間が増加に向かいます。P・Aのボスは、サービスのレベルを上げるためには、働く人間の頭数を増やさなければいけない、という考えが牢固としてあります。そういう仕事の仕方しか経験していないのですから、少数精鋭でやろうなどという発想は絶対にしません。少数精鋭にして利益の出やすい体質にしようという発想は、店主(経営者)にしかできないものなのです。

間違ってもP・Aのボスに経営の根幹である人事権を手渡してはなりません。気がつくと人件費が膨れ上がって、利益が出ない店になっています。「うちにも、そういうボスがいるよ」という方は少なくないと思います。

そこで、対応策です。まず、この人数でやってくれという時間帯別のシフト表を示すことです。「出きません」と言ってくるでしょう。その時は断固、切ることです。「総上がり」をちらつかされても、ひるんではなりません。全員が辞めることなんて、まずありませんし、ボスが去った後は、店主(経営者)自らが身体を張って、範を示すことです。見えていなかったことが、驚くほどたくさん見えてきます。店の士気も確実に上がります。

ボスが詫びを入れてきたらどうするか、ですが。最低時給から雇うことですね。骨のある人間ならば、心を入れ替えて、ゼロベースから粉骨砕身働くはずです。繰り返しますが、P・Aは代替可能でなければなりません。

株式会社エフビー 代表取締役 神山 泉 氏
早稲田大学卒業後、株式会社 柴田書店に入社。「月刊食堂」編集長、同社取締役編集部長を経て、2002年に株式会社エフビーを発足。翌年、食のオピニオン誌「フードビズ」を発刊。35年以上もの間、飲食業界を見続けてきた、業界ウオッチャーの第一人者として知られる。

※本記事の情報は記事作成時点のものであり、情報の正確性を保証するものではございません。最新の情報はご自身でご確認ください。

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