五ノ神製作所
Key Point
- エビの香りと味が際立つ海老つけ麺を開発
- 洋食の要素を採り入れ女性客の支持を獲得
- 麺も多めで、量的にも満足感を与えている
東京・青梅市の繁盛ラーメン店が
都心に海老つけ麺専門店を出店
東京・青梅市の繁盛ラーメン店「いつ樹」の2号店である「五ノ神製作所」は、エビの味わいが際立つ海老つけ麺専門店として、路地裏にありながら行列ができる人気店となっている。経営元は株式会社五ノ神製作所で、2006年にいつ樹が創業した場所である東京・羽村市五ノ神の地名から名付けた。2010年9月にいつ樹が羽村市から青梅市に移転し、同年12月24日に東京・渋谷区千駄ヶ谷に五ノ神製作所を出店。最寄りの新宿駅から徒歩7~8分の場所にあり、同店ができるまでは、店前の通行量は1時間に5人程度という静かな場所であった。
いつ樹では、「鯛塩らーめん」と「濃厚海老つけ麺」を二枚看板としているが、2号店での都心進出にあたっては、原料の調達面で比較的安定している海老つけ麺に絞ることにした。「海老つけ麺は本店でも人気があり、私たちも自信を持っているので、場所が悪くてもお客様は来てくれるのではないかと考えました」と、同社の鈴木英智専務は語る。店内は19坪。以前は事務所として使われていたが、数年間は空いており、スケルトンの状態だった。この物件に決めると、店舗デザインとしても印象に残るように、オープンキッチンをステージのように高めにし、L字型のカウンターに15席を設けた。入口横の看板にはエビのオブジェをあしらっている。
同店の「海老つけ麺」750円のスープは、一口食べるとすぐにエビの濃厚な風味が口いっぱいに広がる。詳しい作り方は企業秘密で、試行錯誤しながら改良を重ねてきたものだが、まず甘エビの殻をじっくり炒め、豚のゲンコツ、鶏ガラ、モミジ(鶏の足)でとったスープと合わせる。また、甘エビの頭を油の中で煮て、エビの風味を油に移したエビ油を別途作る。最後にエビのスープとエビ油を合わせることで、しっかりとエビの味がするスープに仕上げている。
麺も太めでかみごたえがあり、小麦粉の風味が凝縮されたような存在感を持ち、濃厚なエビのスープに負けない味わいとしている。また、普通盛りで生麺270g(茹で上がり約530g)とボリュームがあり、100円増しの大盛りは生麺400g(茹で上がり約650g)を提供する。小盛りは生麺180g(茹で上がり約380g)で、価格は普通盛りと同じだが、トッピングが1品サービスされる。オーダー比率は、普通盛りが8割、大盛りと小盛りが1割ずつとなっている。茹で時間が10分弱かかるので、混雑時にはウエイティングの人数と客席の様子を見ながら茹で始め、着席後は3分ほどで商品を提供できるようにしている。なお、同店ではスペースの制約や近隣のオフィス、住民への配慮から、麺もスープもいつ樹で製造し、毎朝配送する体制としている。
フレンチの要素を採り入れた商品で
女性客の取り込みに成功
海老つけ麺のほか、みそ味の「海老味噌つけ麺」850円と、「海老トマトつけ麺」850円のバリエーションがある。男性客には海老つけ麺が好評だが、女性客は8~9割が海老トマトつけ麺をオーダーしている。鈴木専務がフランス料理店で10年ほど働いていた経験があるため、エビを使ったアメリケーヌソースを参考にしたり、フランス料理でソースをパンにつけて楽しむ食べ方や、トマトと相性のよいバジルを取り入れるなど、ラーメンを超えた発想で開発した商品である。海老トマトつけ麺のスープは、海老つけ麺のスープとオリジナルのトマトソースを半々に合わせたもので、生トマトのスライスをバーナーで焼いて加えている。麺には、パンとバジルソースを添えて提供する。
食券式で、客単価は900円、1日平均客数は平日で200人前後、土・日・祝日で約300人で、営業中はウエイティングが絶えないほど認知度を高めてきた。また男女比は6対4と、つけ麺専門店としては女性客が多いのも特徴である。
同店が個性的な海老つけ麺で人気を得ている要因は、以下のようになるだろう。
1エビの香りと味が際立つ濃厚なスープと、存在感のある自家製の太麺とを合わせた、インパクトの強い海老つけ麺を開発している。
2フランス料理の要素を採り入れた海老トマトつけ麺で女性客の支持を獲得している。
3麺は普通盛りでも生麺270gとたっぷり提供し、量的にも満足感を与えている。
「海老つけ麺のほかにも、期間限定商品やイベントへの参加時に新しい味を考えています。今春は、焼いた銀ダラそのままの味がする銀ダラのつけ麺が好評でした。ラーメン店は、普通の味ではお客様は何度も来てくれません。やはりインパクトがあり、記憶に残り、また食べたいと思ってもらえる商品にするために、化学調味料は一切使わず、材料をたっぷり使用して素材の味を引き出しています。最初の一口でどれだけインパクトを与えられるかによって、商品価値も上がるでしょうし、お客様にリピートしてもらえると思うのです」という鈴木専務。今後も新商品開発と同時に、1年に1店ほどのペースで出店していきたいという意向である。
東京都渋谷区千駄ヶ谷5-33-16 シャトレー新宿御苑第一101
TEL
03-5379-0203
営業時間
11:00~15:00、17:00~21:00
(土・日・祝11:00~21:00、スープ切れ、麺切れの場合あり)
定休日
無休