2026/05/13 特集

秩父「クチーナ サルヴェ」自産自消型イタリアン、農園とレストラン運営を両立する経営モデル

自産自消型イタリアン「cucina salve(クチーナ サルヴェ)」。埼玉県秩父市、130アールの自家農園で年間150種以上の野菜や果実を育て、自然養鶏を行う「種をまく料理人」坪内 浩シェフの店だ。その日に生まれる料理を求め、県内外のゲストや同業者も多く訪れる。食の理想を形にする飽くなき探究心を保ちながら、飲食店運営と両立していく秘訣(ひけつ)とは。持続可能な店づくりの裏側を探る。

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食材の宝庫「秩父盆地」で農園とレストラン経営を両立

  • 店は、秩父神社の表参道・番場通りに面する複合施設「秩父表参道Lab.」内にある
  • Lab.に入ってすぐ、写真左が「cucina salve」、同右は坪内氏の兄が経営する秩父地ビールバー「MAHOLLO BAR(まほろ バル)」

レストランがあるのは秩父駅から徒歩10分程の秩父神社近く。そこから10km離れた場所に自宅と自家農園があり、「種をまく料理人」坪内 浩シェフの1日は農作業から始まる。収穫時期を迎えた野菜や果実と対話し、考えるのではなく感じたものをそのまま、レストランで皿に表現。店は事前の予約制でおまかせコースのみ。その日の味を求め、季節ごとに来店するリピーターも多い。

土壁は、坪内氏の畑の土と稲ワラを合わせたオリジナル。通路を進み、左手がレストラン入り口
テーブルは全16席で、予約人数によりカウンター席を設置。店内にも秩父の木々を使い、手作りのオブジェも飾られている
入り口前にはレストランガイドブック「ゴ・エ・ミヨ」の認定プレートや、取材を受けた雑誌などが多数並ぶ

自身の畑で育てる年間150種以上の作物と自然養鶏に加え、秩父のネットワークも活用し、全ての料理が背景の確かな食材で構成されている。この真摯(しんし)な姿勢が支持され、レストランガイドブック「ゴ・エ・ミヨ」にも2022年から5年連続で掲載。その確かなクオリティーは、一般のゲストのみならず、食材のすばらしさや自産自消型レストラン(※)に関心を持つ、多くの同業者をも惹きつけている。

(※)自産自消型レストラン:自社農場などで生産した食材を、自ら運営するレストランで提供するスタイルの飲食店。新鮮な旬の食材が使われ、環境負荷の少ないサステナブルな経営が特徴。

オーナーシェフ・坪内 浩(つぼうち ひろし)氏。幼少期からの極端なアレルギー体質を、自然豊かな環境での食事療法により少しずつ克服。自ら料理をする経験の中で食の道に目覚め、1999年に移動販売、2002年に飲食店を開業する。しかし不規則な生活によりアレルギーが再発。生活を見直し、2004年より有機農業主体の坪内農園を開始、2019年には「cucina salve」として再出発を果たした。現在は、持続可能な循環型社会を目指す“秩父食農”を立ち上げ、農場長兼シェフとして農業とレストランの運営に従事している。
【店舗Data】
cucina salve(クチーナ サルヴェ)

業態:イタリアン
席数:16席(テーブル席、カウンター席)
客単価平均:ランチ5,000円、ディナー13,000円
客層:30~60代を中心に幅広い。遠方からの目的来店、同業者も多い
住  所:埼玉県秩父市番場町17-14
アクセス:西武池袋線西武秩父駅より徒歩8分、秩父鉄道御花畑駅より徒歩4分
営業時間:月・金曜日17:30~22:00、土・日曜日11:30~14:00、17:30~22:00
定休日 :火~木曜日
https://r.gnavi.co.jp/f12w75ws0000/
https://salvagest.jp/

目次
1.【秩父野菜】豊かな風土で育てる年間150種以上の作物
2.【ネットワーク】日本中、世界へと足を運びルートを構築
3.【売上・集客】EC・予約サイトを活用し安定化

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1.【秩父野菜】豊かな風土で育てる年間150種以上の作物

冬は雪が積もり、夏は酷暑となる秩父。年間の気温差が50℃に及ぶ地域もあり、厳しい寒暖差に加え高低差のある盆地特有の地形、石灰岩の山々、粘土質の土壌など、この地には多様な地質が混在している。この独特の環境が、野菜や果実、小麦、大豆、ハーブ、きのこに至るまで、多種多様な作物の栽培を可能にしている。

坪内氏は2004年より農業を独学で始めたが、次第に限界を感じ、2011年からは有機農業の第一人者である埼玉県霜里農場の故・金子 美登(よしのり)氏に師事し、改めて学び直したという。こうして土づくりや種まきから始まる有機循環型農業(※)の畑には、自然交配を繰り返しながら土地に馴染んだ作物が、今では年間150種以上も実る。現在は活動の幅を広げて、JOAA(日本有機農業研究会)の会員として、仲間とともに持続可能な農業生産のアップデートを重ねている。

(※)有機循環型農業:家畜の排せつ物や作物の残渣(ざんさ)を堆肥化して土に戻し、資源を地域内で循環させる持続可能な農業手法。土壌の栄養を保ち、化学肥料や農薬などの環境負荷を低減しながら、安全な農作物を育てることを目的とする。

ショートコース(4,400円〜)メニュー例。朝収穫したばかりの野菜や果実からインスピレーションを得て、その日のコースメニューが決まる
取材時(4月下旬)のショートコースのアンティパスト1皿目は「シェフの園の春野菜とレンズ豆のサラダ仕立て」(フォカッチャ付き)。季節によって、色合いや組み合わせが変わっていく
  • アンティパスト2皿目。写真左上から時計回りに「筍とハリギリのサルサベルデ」「紫芋とベニハルカのピューレ 風布の密柑」「プラチナたまごのフリッタータ」「虎杖のガルム風 コゴミ」「リコッタチーズ 百花蜂蜜 いちご あまりん」
  • ズッパ(スープ)「春キャベツとチェチ(ひよこ豆)のミネストラ」収穫が始まったグリーンアスパラガス入り
カルネ(メインの肉料理)「秩父横瀬産二ホンシカ マルベリーとバルサミコソース 自家製野菜のコントルノ」
ランチはパスタやメインが選べるショートコース(4,400円〜)。ディナーはショートコース(6品6,600円)、おすすめコース(9品8,800円)、スペシャリティコース(10品11,000円)の3種

自ら畑に種をまき、育て、収穫し、調理して提供する。畑から調理まで一貫して手間ひまを惜しまない独自のスタイルは、どのような歩みから生まれたのか。

背景にあるのは、かつてアレルギーに苦しみ、飲食店経営の苦難も重ねてきた自身の経験だ。「有機農業で育てた食材の背景や、なぜこの料理を作り続けるのかを伝え、分かち合いたい。その使命感は秩父愛であり、大きく言えば地球愛です」と、坪内氏は熱く語る。

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2.【ネットワーク】日本中、世界へと足を運びルートを構築

秩父地鶏「いのちのたまご」。秩父の酒造の米糠や豆腐店のおからなどを発酵させた肥料で地鶏を育てている

畑で採れる作物以外もこだわりが光る。卵は坪内氏が養鶏する秩父地鶏のもので、鶏肉も同種を使用。豚肉や牛肉は主に埼玉県(武州)で育てられた信頼のおける生産者のものを選び、魚は島根県をはじめ全国の産地から直送してもらっている。イタリア産の調味料やワインも取り扱うが、全て無添加で、作り手の顔と背景が見えるものに限定している。

  • ベンチャーウイスキー秩父蒸留所で作られた秩父のウイスキー「イチローズモルト」も多数ラインナップ
  • ドリンクメニュー。秩父ウイスキーのほか、Lab.内「MAHOLLO BAR」で提供している秩父地ビールも各種楽しめる
ドリンクはペアリングを提案していく(1杯あたり1,100円)。上記料理の順に合わせ、左からヴェネト州のスプマンテ「DE STEFANI」、ヴェネト州の自然派白ワイン「MASIERI」、有限会社秩父ワインの「源作印 甲州シュール・リー(白)」、秩父・兎田ワイナリーの「兎雫 Shizuku」(赤)

食の理想を形にするために、どのようにネットワークを広げていったのか。

「思い立ったらすぐ動くタイプなので、毎年数件の生産者を訪ねています。まずは商品を購入して味にほれ込んだら、直接アポイントを取ります。門前払いされることもあるので、共通の知人を探してアプローチすることもあります。食材への愛を伝え続けるうちに熱意が伝わり、関係性が生まれていきました。最初は無名だった自分ですが、次第に”野菜に特化したシェフ”や”無農薬・無添加の店”として認知されるようになり、ここ数年は生産者側からオファーをいただくことも多くなりました」(坪内氏)。

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3.【売上・集客】EC・予約サイトを活用し安定化

「店で扱っている食材が欲しい」という声に応え、店頭での販売に加え、2026年4月にはECサイト・自然食品店 「cucina salve SHOP」も立ち上げた。「県外のお客様も多く、ネット通販の展開を喜んでいただけました。気に入った商品を友人にプレゼントされる方もいらっしゃり、うれしいですね」と手応えを感じている。レストランでの体験が商品としての信頼につながり、好循環を生んでいる。

  • オリジナルのジャムや粒マスタードのほか、店で使っているオリーブオイルや有機スパゲッティも販売。食後に買って帰る人も多い
  • 畑でとれた下ごしらえ済みの野菜やピクルス、坂本ファームの武州豚なども、店頭およびECサイトで販売している

予約で満席の日が続く人気店であるが、一方で、経営には波もある。2025年には大人数の予約キャンセルや猛暑による客足の減少という課題に直面したが、即座に楽天ぐるなびなどのグルメサイトを活用した集客施策を強化しカバー。「ネット通販で一定の売上を確保し、体制を整えて集客を安定させることで、従業員を減らすことなく運営を続けていきたい」と語る。

坪内氏とスタッフ(左から小野寺 塁 氏、新川 伶音 氏、藤田 寛樹 氏)。「今日も全員に感動してもらいましょう」というのが、スタッフ間での合い言葉

また、店では「坪内氏のもとで学びたい」と全国から志願して集まった若手料理人たちが、意欲的に働いている。「彼らも自分の畑を持って有機農業を実践しており、私にできることはすべて伝えています。秩父で広く学び、修業を終えて地元に戻ったら、それぞれの場所で学びを生かしたお店を展開してほしいですね」(坪内氏)。

「cucina salve」のオープン当初から「10年後は次のステップに進む」と考えていたという坪内氏。それは畑の中にオーベルジュ(レストランと宿泊場所を兼ね備えた施設)をつくるという構想だ。「食べるもの、触れるものがフルオーガニック。農場で力強く育つ作物を見て、感じて、味わっていただきたいです」と目を輝かせる。立ち止まらず、理想を現実に変えていく行動力が、次なる循環の形を描き出している。

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