Vol.177
テーブルタッチ力がお客様の満足を高める
一度来店したお客様には、「また来たいな」と思っていただかなければなりません。
お客様は、漠然と「良かった」という印象しか持ちませんが、その気持ちを分解してみると、次のような要素になります。
(1)便利な場所に店があった。
(2)店の規模が適正で、雰囲気が良かった。
(3)お迎えからお見送りまで、きちんとしたサービスが行き届いていた。
(4)料理の内容が充実していて、味が良かった。
(5)値段が手頃だった。
この5つに集約されますが、これをもっとコンパクトにまとめると、立地が良くて、雰囲気が良くて、サービスが良くて、料理がおいしくて、値段が思ったより安かった、ということになります。
「当たり前のことばかりじゃないか」と思われるかもしれませんが、でもどうしてどうして、この全部を満たすのは結構難しいのです。外食業のレストランチェーンはこのうちの(3)をあえて省く戦略をとっています。サービスレスに突き進んでいるのです。
お迎えはなし、席もお客様が自分で決める。テーブルのタッチパネルやQRコードからお客様が注文する。ロボットが料理を運ぶ、下膳もロボット、支払いは自動精算機、お見送りはもちろんなし。
こんなありさまですから、入店から退店まで一度も従業員に会わない、というケースにもしばしば遭遇(そうぐう)します。 徹底的なサービスレスに突き進んでいるのです。
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サービス力が高まると値上げをしても客数が増える
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個人店の経営者にとっては、チャンス到来ですね。チェーングループは人手を極限まで使わずに所定の売上と利益を確保することに力を入れていますが、個人店はこれを真似してはいけません。
少数精鋭のチームで店を切り回すことを心掛けなければなりませんが、サービスレスなどに向かってはいけません。
チェーングループは、極力人を使わないことが生産性を確保(利益がでるように)します。しかし、個人店の繁盛店の多くは適正に人を使って、一人当たりの生産性が高い営業をやっています(高い利益を上げています)。
調理技能の高い主人とその弟子がキッチンにいて、フロアは奥さんとサービス力の高いアルバイトが担当。忙しい時には、主人がフロアに出てくることもあるし、奥さんがキッチンに入ることもあります。つまり守備範囲が広いのです。調理とサービスの両方ができる多能工になっているのです。
明確な看板商品を持っているから、メニューが絞り込まれています。それでもサイドディッシュが充実しているため、注文皿数は結構多くなります。
サービス力の高さは、テーブルタッチの回数で決まります。今日のおすすめのリコメンド、メニューを届ける、お水のリフィル、追加・再注文を促す、アルコールメニューのリコメンド、デザートのおすすめ、食後の飲み物のおすすめ。お客様のテーブルに行って注文や要望を受けること、これがテーブルタッチです。
心のこもったテーブルタッチ、これはレストラン業の命です。これで、客単価が狙い通りのところまで引き上げられるのです。無理な客単価の引き上げではありません。店の魅力をお客様に最大限に享受していただくためのアクションなのですから、満足度がより上昇するのです。
テーブルでの接触を通じて、「次はこのメニューを注文してみよう」「こういう注文の仕方をしてみよう」という楽しみをお客様に抱かせることができます。つまり、テーブルタッチの充実こそが、来店頻度を上げるきっかけになるのです。
チェーングループでは、これを全部取っ払ってしまっているのですから、客単価は下がる、来店頻度も落ちる、で結局生産性は下落していきます。
チェーンから学ぶこともたくさんある
一方、チェーングループでは、いい(業態に合った)立地に店を置くのは得意です。また、店の改装への投資はしっかり行います。
メニューの中身はともかく、商品構成と価格設定は手堅く、間違いありません。店の改装の頻度については、チェーンから学ばなければなりません。店は毎日少しずつ古くなっています。店の絶えざるリフレッシュメントは、外食業にとっては必須です。
個人店の多くは、一度店を作ってしまうと、その後何年経っても追加投資をしません。それが客数の下落を引き起こしていることに、気がつかなければなりません。
もう一つ、チェーンから学ばなければならないことは、明日一日の正確な客数予測です。今やAIをフル活用して明日一日の1時間ごとの客数予測をするチェーンも増えています。その予測に合わせて、準備をするのです。すなわち、1時間ごとの人の手当て、1日の食材と下ごしらえの準備の最適化が図られているのです。
個人店ではチェーンのようなAIシステムの導入は現実的ではありませんが、過去のデータをきちんとインプットして、明日の売上、明日一日の客数の流れをしっかりと予測しなければなりません。その時に天候、気温、曜日、近隣の祭事、学校の行事なども、十分に視野に入れなければなりません。外食業は準備業なのだ、ということを肝に銘じておかなければなりません。
もう一つ、チェーン店から学ぶことがあります。1年間を通じての期間限定メニュー、季節メニューの投入の手法です。チェーングループでは、年間のメニューカレンダーがしっかりとできています。そして気温の上昇が一足早まったりすると、季節メニューの投入の日にちを早めたりもします。
全く新しいメニューの投入もありますが、大体は固定化した季節メニューで構成されています。絶えざる特別メニューの投入で、お客様の来店を刺激し続けなければなりません。固定したベーシックメニューだけですと、お客様は次第に休眠化してしまうのです。その休眠を目覚めさせるためには、強い季節メニュー、期間限定メニューを持ち、それをいつ打ち込むか、明確なメニューカレンダーを作っておかなければなりません。
しかしメニューの数は固定しておかなければなりません。1品入れたら1品引っ込める。数を増やしてはいけません。新メニューを入れるごとにメニュー数が増え、いつの間にか何屋だか分からなくなってしまう外食店があまりにも多いのです。
一番大事なことは看板メニューの磨き込みです。「味は変えない、質は上げる」を大前提に、コツコツ進化させ続けなければなりません。これも強いチェーングループはやっています。また、1品に命をかける老舗専門店も、これをやり続けています。1カ所に留まっていると、お客様は必ず「まずくなった」と評価します。
教師としても、また反面教師としても、チェーン店から学ぶことは随分あるものですね。
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