利益を残すための新しいモノサシ――スタッフ1人の1時間あたりの貢献度を可視化する
シフトの組み方や日々のオペレーションを見直す際、感覚を頼りに改善を進めるのは困難です。従業員の労働時間と売上の関係性を明確に数値化することで、無駄なコストが発生している時間帯や、逆に人手が足りずに機会損失を生んでいる時間帯が浮き彫りになります。店舗の規模を問わず、すぐに実践できる労働効率化のヒントを紐解いていきましょう。
目次
なぜ今、飲食店の現場でこの労働効率が重視されるのか
言葉の意味を整理:人時売上高と人時生産性の違い
人時売上高とは
人時生産性とは
自店の状況を客観的に評価するための目安数値
現場の負担を増やさずに数値を引き上げる具体的な高め方
シフト管理の最適化による無駄な労働時間の削減
デジタルツールの導入による業務の効率化
メニューの見直しと食材の着回し
まとめ
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なぜ今、飲食店の現場で労働効率が重視されるのか
飲食店を経営する上で、人件費率(売上に対する人件費の割合)を一定に保つことは基本とされてきました。しかし、人件費率だけを見ていると、「売上が高い日は忙しすぎて現場が崩壊している」「売上が低い日はスタッフの手が余っている」という日々のバラつきを見落としがちになります。
そこで、スタッフ全員の労働時間の合計(総労働時間)に対して、どれだけの成果が得られたかを1時間単位で算出するアプローチが必要になります。これが、シフトの無駄をなくし、適切な人員配置を実現するための強力な武器となります。
言葉の意味を整理:人時売上高と人時生産性の違い
混同しやすい2つの言葉ですが、飲食店の実務においては以下のように使い分けると経営の状況を把握しやすくなります。
人時売上高とは
従業員1人が1時間あたりに「いくらの売上」を創出したかを表す指標です。計算式は非常にシンプルで、「期間中の総売上高 ÷ 総労働時間」で導き出せます。例えば、1日の売上が15万円で、その日の全スタッフの労働時間の合計が30時間だった場合、人時売上高は5,000円となります。売上ベースで計算できるため、日々の推移を追いやすいのが強みです。
人時生産性とは
こちらは、従業員1人が1時間あたりに「いくらの粗利益(売上総利益)」を生み出したかを示す指標です。計算式は「期間中の粗利益高 ÷ 総労働時間」となります。原価を差し引いた、本当の意味での店舗の儲けを測るための指標であり、メニューの利益率や価格設定が適切であるかを評価する際に役立ちます。
自店の状況を客観的に評価するための目安数値
飲食業界において、一般的に健全な経営を維持するために目指したい人時売上高の目安は「3,500円から5,000円」程度といわれています。この水準をクリアできている店舗は、人員の配置が適正であり、利益を確保しやすい体質であると判断できます。
ただし、この目安は提供スタイルや単価によって変動します。セルフサービスのカフェやラーメン店など、少ない人員で高い回転率を誇る業態では、5,000円を大きく超えることも珍しくありません。一方で、手厚い接客や丁寧な調理が求められるフルサービス型の高級洋食店や居酒屋では、3,000円前後に落ち着くこともあります。自店の目指すQSC(クオリティ・サービス・クリーンリネス)のレベルと照らし合わせ、無理のない独自の基準値を設定することが大切です。
現場の負担を増やさずに数値を引き上げる具体的な高め方
労働効率を高めると聞くと、「スタッフをさらに厳しく動かす」というイメージを持つ方もいるかもしれませんが、それでは離職を招き、逆効果になりかねません。重要なのは、現場の動線を複雑にすることなく、システムや仕組みで解決することです。
シフト管理の最適化による無駄な労働時間の削減
まずは、過去の売上データや天候予測から時間帯別の来店客数を細かく予測し、30分単位での適正な人員配置(ワークスケジュール)を組み立てます。ピークタイムには手厚く、アイドルタイムには最低限の人数に絞るなど、メリハリのあるシフトを組むだけで、総労働時間を削減し、数値を劇的に改善できます。
デジタルツールの導入による業務の効率化
お客様自身がスマートフォンで注文を行うQRコードオーダーや、自動釣銭機、タブレット型のPOSレジなどを導入することで、注文受けや会計にかかる時間を大幅に短縮できます。これにより、スタッフが料理の提供やテーブルの片付けといった、店舗の回転率を高める基盤業務に集中できるようになります。
メニューの見直しと食材の着回し
調理工程が複雑すぎるメニューが多いと、特定のスタッフに負荷がかかり、料理の提供スピードが落ちてしまいます。仕込みをアイドルタイムに集約できる煮込み料理を導入したり、同じ食材を複数のメニューで共用(着回し)したりすることで、キッチンの動線をシンプルに保ち、少ない人数でもスムーズに回せる体制を構築できます。
まとめ
人時売上高とは、限られた人員と時間の中で、どれだけ効率的にお店の価値を最大化できているかを教えてくれる重要なバロメーターです。人時生産性の視点も交えながら、自店の業態特性に合った目安を意識することで、無駄な人件費の発生や機会損失の発生を未然に防ぐことができます。
現場に無理を強いるのではなく、スマートなシフト管理や機材の活用といった仕組みの高め方を実践し、スタッフにとっても経営者にとっても健全で心地よい店舗運営の第一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。
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