Vol.179
店テイクアウトとデリバリーで「消費税10%」を回避しようとしている
消費税の難問が、外食業全体に立ちはだかっています。ご存知の通り、現在は食品のみが8%で、その他の物品には10%の消費税が課せられています。外食はその他の物品に入れられて10%です。まだ結論に至ったわけではありませんが、2年間限定で2027年から食品のみが1%になりそうです。外食はどうなるかと言うと、10%のままになる可能性もありそうです。
今でも食品とは2%の差があるのに、これが9%の差になったら外食にとっては大打撃です。しかし外食にも逃げ道はあって、「店外」(テイクアウト、デリバリー、ドライブスルー)になると、食品小売りとみなされて、1%になりそうです(「店外」をオフプレミスと呼びます)。
もし、そうなった場合、同じ1,000円の商品が店内(イートイン)ですと1,100円に、店外ですと1,010円ということになります。本来であれば、外食も一般食品と同じ消費税にするべきです。つまり、外食の消費税も1%にするよう外食業全体が強く主張すべきなのですが、今一つ盛り上がりません。むしろ外食業の関心は、いかにしてオフプレミス(店外売り)を強化するかに向かっています。
具体的にはテイクアウトとデリバリーのお客様をごっそりと取ろうとしているのです。ちょうど、コロナ禍と同じ状況が生まれようとしているのです。あの時は、イートインそのものがほぼアウトでしたが、今回は同じ商品を税率の低い売り方(=オフプレミス)で強く売ろうとしているのです。
マクドナルドをはじめとするファストフードなどの外食や、弁当店、おにぎりの店、惣菜店といった店は、原形が小売業であり、オフプレミスが主流でありますから、新しい税率になってもさほど影響は出ません。またピザや寿司の宅配業は現在でも消費税は8%ですし、食品が1%になれば同じように1%になります。
こうなると苦しいのはイートイン主体のテーブルサービスの外食業です。どうやったらオフプレミス力をつけることができるか、そこに気持ちが集中するのは当然といえば当然でしょう。例えばテイクアウトした商品をお客様が、店の外で食べてくだされば、消費税が1%になるのであれば、屋外にテラス席を設ける店も増えてくるでしょう。どの店もランチボックスの開発などに熱心になるでしょうし、店での飲食とは別にテイクアウトで売れる強い商品を持つことにも力を入れていくでしょう。
また、デリバリー企業が手ぐすねを引いて待ち構えています。絶好のチャンス!と捉えているはずです。コロナ禍でも、デリバリー企業は飛躍的に売上を伸ばしました。あれと同じ状況が再び到来しようとしているのです。
膨らむ(はずの)デリバリー市場の争奪戦が激しくなります。コロナ禍の経験を経て、顧客を増やすために配送料を下げてきています。高い配送料がネックだったのですが、その価格がこなれてきました。とにかく下げて顧客の数を増やそう、そしてライバルのお客様を奪おう、という動きが激しくなりました。デリバリー業界も、最後の生き残りの戦いをしているのです。
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オフプレミスに走り過ぎない。イートインの体験価値をとことん高めよう
“テイクアウトとデリバリーに力を入れなければ外食は生きていけない”、そういうことなんだなと思ってもらっては困ります。私が言いたいのは、そうではありません。逆です。「オフプレミスに走るな、イートインのお客様を大事にしろ。そこにこそ、生き残る道がある」、そう言いたいのです。
コロナ禍の4年間を思い起こしてください。コロナ禍が終息して、一番立ち直りが早かったのは、オフプレミスに走り過ぎなかった店です。イートインのお客様を大事にした店です。外食(特にテーブルサービス)は、レストランにしても居酒屋にしても専門店にしても(1)高い技術を持つ料理人が腕を振るい、(2)出来立ての熱々の(あるいは適温の)商品を、いい盛り付けで、(3)即テーブルに運び、(4)キビキビとしたフレンドリーなサービスで提供する、ことで成立するビジネスです。さらに何度もテーブルに出向き、種々のお客様の要望に的確に応えることで、体験価値を生み出すビジネスです。出来たての商品はおいしければおいしいほど、経時劣化が激しいですから、本来テイクアウトやデリバリーには向きません。その場の時間こそが勝負なのです。
この体験価値は、他のいかなるビジネスでも代替することはできません。外食のイートインだけが提供できる価値なのです。この外食の魅力を、今放り投げようとしているのです。外食だけが10%の消費税というのは、いかにも不公平で、私なども憤慨しているのですが、怒ってばかりいても仕方ありません。
10%の重圧をかわす(テイクアウト・デリバリーを強化する)のではなくて、跳ね返すだけの魅力、体力を身に付けることの方が大事なのです。繰り返しますが、イートインのお客様をとことん大事にすることです。満足度を高めることに、全力を傾注するべきです。大手のチェーングループでは、オフプレミス強化に走ります。間違いなくそちらに向かいます。さらに、チェーングループでは、ロボット、自動精算機などの省人化マシンを使い尽くして、生産性を上げることにさらに力を入れていきます。これを別の角度から見ると、イートインのお客様の満足度向上に力を入れる店が少なくなる、ということです。
「レストラン」という言葉は、ストレスから解放して生きる活力を回復する場所という意味があるそうです。それは人間の技能とサービスする心と、ほっこりとなごめる店舗空間があって初めて実現できるものです。外食店は山ほどありますが、こういう「回復の場」を持つ外食店はどんどん減ってきているのです。だから、チャンスなのです。
ここは一つ、アナログに徹してイートインでしか提供できない楽しさ、豊かさを強化することに専念してください。それができたら、税率10%の不利な外食の立場を跳ね返すことができます。
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鍛えられた十分な取材力、現場を見抜く観察力、網羅的な情報力、変化を先取りする予見力、この4つの強みを生かして、外食業に起こっている変化の本質を摘出し、その未来を明確に指し示す“主張のある専門誌”です。表層的なトレンドではなく、外食業に起こっていることの本質を知りたい人にこそ購読をおすすめします。読みたい人に直接お届け!(書店では販売しておりません)
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