2012/08/13 繁盛の法則

ワインと小皿料理で差別化するダイニングとは

オレンジコンセプトに学ぶ‐横浜・野毛地区にある「オレンジコンセプト」は、ワインと小皿料理を気軽に楽しめる隠れ家風の店。1人客、女性客でも利用しやすい業態でオープンし、繁盛している。

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オレンジコンセプト

築50年ほどの2階建てビルに出店。1階は8坪10席(喫煙可)、2階は7坪16席(禁煙)

Key Point

  1. 豊富な小皿料理を用意
  2. 「3皿セット」で気軽な入店を促進
  3. 多彩なグラスワインを提供

システムエンジニアから飲食業に転身。女性客のニーズに合う業態で独立

横浜・桜木町駅の周辺は、ランドマークタワーをはじめ近代的なビルが並ぶ海側のみなとみらい地区と、古くからの飲食店、個人商店が残る内陸側の野毛地区とで、好対照な表情を見せる。野毛地区にも、最近はしゃれたカフェやバルがポツポツと登場しており、そのひとつの「オレンジコンセプト」は、ワインと小皿料理を気軽に楽しめる隠れ家風の店である。

オープンは2010年12月13日で、1階8坪、2階7坪の築約50年の2階建ての建物を使っている。1階は厨房とカウンターのみ10席、2階はテーブルとカウンターで16席を設けている。

オーナーの福島伸幸氏は、1972年横浜生まれで、29歳まではコンピューター関連会社でシステムエンジニアとして働いていた。しかし、変化の早いIT業界で働き続けることに疑問を感じ、退職を決意。高校、大学と体育会の水泳選手だったことから、会社を辞めるとまずオーストラリアに渡り、海の監視員として1年働いた。帰国後はサーフショップの店長を2年務め、その間にサーフショップの経営者がハンバーガー店を出店したことから、飲食業に興味を持つようになった。そして、いずれは飲食業で独立したいと考えた福島氏は、まず大手飲食企業で店舗運営の仕組みやマニュアルを学ぼうと、関内の焼鳥のチェーン店に入り、2年勤めた。次いで、グルメバーガーなどを提供する都立大学のアメリカンダイナーに2年、関内のこぢんまりしたスペイン料理店に2年勤めて料理を学んだ。また、スペイン料理店での勤務中にワインへの造詣を深め、一方では、ときに女性客が1人で来店した際、料理1品の量が多く、多品目の料理を楽しんでもらえないところに、お客のニーズと商品構成とのズレを感じるようになった。

独立に向け、関内などで物件を探すなかで、小学校の真向かいにある現物件を紹介された。もともと大通りではなく、裏通りを希望しており、小学校が近いので風俗店等がないところもよかった。また隣にコンビニエンスストアが出店しているので、集客が見込める場所なのだろうと判断。これまで同物件では中華料理店、バーなどが営業していたが、1階のみを使い、急勾配の階段を上がった2階は倉庫のようになっていた。福島氏は、1棟借りるのだから、1、2階とも店舗にしようと、全面改装を行なった。また、神奈川県では2010年4月から公共的施設における受動喫煙防止条例が施行されているので、1階を喫煙可、2階を禁煙席とするフロア分煙にした。

手前が一番人気の「海老と白身魚のムース(バケット付)」500円、奥が和風の器を組み合わせて提供する「バーニャカウダ」600円。スパークリングワインもグラス550円~とリーズナブルな価格で提供している

1人客でも利用しやすい
3皿セットやグラスワインを提供

メインターゲットは30~40代の女性とし、串焼き、小皿料理、一品料理、パスタ、デザートなど約40品目をそろえている。福島氏が修業先で覚えたアイテムを中心に構成しているが、オープン時には知人の紹介で、東京のフランス料理店に勤めていたシェフが、次の勤務先に移るまでの間、同店を手伝ってくれることになった。8カ月ほど勤務してもらうなかで、レシピや仕込みの方法など多くを学ぶことができ、現在の同店の基礎固めにつながった。

ドリンクではグラスワインに力を入れ、スパークリング4種、白ワイン3種、赤ワイン4種、シードル1種を550~950円で提供している。大きめのグラスを使い、1杯150ccとたっぷり注いでいる。ボトルワインは30種2,800~1万5,000円をそろえている。

オープン当初は客数が少なかったため、開店2カ月後の2011年2月からランチ営業を始めた。1,000円ほどのランチで気軽に入店してもらい、同店の存在を知ってもらうと、夜の来客数も増えていった。しかし、同じ厨房内での夜用の仕込み作業が増えるにつれ、ランチ営業が難しくなり、8カ月ほどでランチは休止した。

夜のメニューで特に好評なのが、オープン当初から出している「お1人様3皿セット」1,200円である。前菜3品、串焼き1本、ハーフパスタのセットで、1人客もグループ客も利用できる。店頭でもアピールし、まず入店してもらうために大きな効果を上げている。

現在の客単価は3,800円で、女性客が7割を占める。週末は予約で満席になる日が増えており、平均月商300万円を上げている。

同店が隠れ家的な一軒家で、徐々にリピーターを増やしている要因は、以下の3点であろう。

1少人数でも多種の料理を楽しめる小皿料理を豊富にそろえている。
21人客が気軽に入店しやすい「3皿セット」を用意している。
3多彩なグラスワインをリーズナブルな価格で提供している。

「今後、当店の料理がテイクアウトできる専門店を出店し、その店舗で仕込みを集中してできれば、ここでランチ営業の再開も可能かなと考えています。あるいは、イートインの店舗をもう1店近くに出せれば、週末などに入り切れないお客様をご案内できるのではないかと思います」と、福島氏は次の展開に向け、いろいろな構想を検討し始めている。

住所
横浜市中区花咲町2-78
TEL
045-250-6090
営業時間
17:00~翌01:00(LO24:00)
定休日
無休