2012/08/31 繁盛の黄金律

目先の銭を追うな!忘年会シーズンは翌年の客数が伸びたら成功!

そろそろ忘年会の準備にとりかからなければなりませんね。かき入れ時とやたらに張り切っている方が目立つ時期ですが、たいていは空振りに終わります。なぜか。何を達成したいかの目標がないからです。

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Vol.12

たいていの店が評判だけを落とす

そろそろ忘年会の準備にとりかからなければなりませんね。1年の総決算、ここぞかき入れ時と、やたらに張り切っている経営者が目立つ時期ですが、たいていは空振りに終わります。

なぜか。何を達成したいかの目標がないからです。「目標? ありますよ。しっかり売って、しっかり儲けること、これ以外にあるわけがないじゃありませんか」と、口をとんがらして反論する店主・経営者がいますが、それを目標にすると失敗に帰することが多いのです。

では、目標はどこに置くべきでしょうか。決まっています。「店を知ってもらうこと」「店の評判を上げること」、これに尽きます。忘年会のシーズン(というよりは、年間を通じての繁忙期。ファミリーレストランならば7~8月ですね)は、初めて来店するお客が一番多い時期です。そのお客が「おっ、いいじゃん。また来よう」と思うか。それとも「二度と来るもんか」と思うか。その決断の時になります。

かき入れ時というと、客単価アップを狙い、価格の高い季節の新メニューを導入する店がありますが、これは最悪の策です。普段作っていないメニューですから、調理のスキルが安定しておらず、品質にバラツキが出ます。メチャクチャのメニューで、しかも高い。そんなものを押し付けられたお客はたまったものではありません。「高マズの店」の評価が下され、絶対に足を運ばない店として頭の中にインプットされます。この時期にやるべきことは、店の武器となっていて人気も高い看板メニューを、さらに広く深く定着させることです。店の価値の肝(キモ)を徹底的にアピールし、マイ・フェイバリット(お気に入りの店)としてエントリーしてもらうことです。

もちろん、ちょっと高めの新メニューを売って、売上を伸ばすことは否定しませんが、主眼は、店のいちばん強いところをお客に徹底的にアピールすることです。

なじみのお客がさらなるファンになるシーズン

忘年会シーズンの目標は、店の評判を上げ、ハイシーズン後の客数を伸ばすことです。ですから、成功か失敗かの判断の基準は、「その後」客数が伸び基調に向かっているかどうか、に置かなければなりません。忘年会シーズンはワンサワンサお客が来て儲かったけれども、年が明けたら客足がぱったり途絶えた…という店にしばしば遭遇します。悪い評判だけを残した典型ですね。

ですから、忘年会の作戦を立てる大前提は、来年の1年間を通じて客数を何%伸ばすか、その具体的な目標が設定されていなければなりません。それも、「客単価を据え置いて、通年で客数を103%にする」とか、「客単価は5%下げて、客数を110%にする」とか、「客単価も客数も105%にする」とか、客単価と客数の具体的な明示がなければなりません。

とはいえ、一般的に言って、客単価も客数も上げるというのは至難のワザです。客数増というと、新しいお客が増えることと考えている経営者が多いのですが、それは間違っています。客数増の内実を調べてみますと、その8割(商売の内容や立地によって変わりますが)は、既存の固定客の来店頻度が上がることで達成されているのです。なじみのお客がこれまで以上のファンになってくれる。より頻度高く使ってくれる。これが客数増の中身なのです。ところが、なじみのお客が一番失望して「二度と来るか」と決意するのも忘年会のシーズンです。サービスは荒れに荒れ、無愛想な対応をされ、提供時間は遅れ、出てくるメニューは日頃の質とは似ても似つかないものが提供される。これでは、「二度と来ないぞ」と決意されても仕方がありません。ハイシーズンのもっとも大事なことは、常連客の満足度を日頃以上に高めること、こう言い切ってよいでしょう。そこで、日頃気が付かなかった店の魅力をさらに知ってもらえれば、言うことはありません。

また、忘年会シーズンは通常よりも来店客が多いことを想定して、キッチン、ホールスタッフを増員し過ぎるのも考えものです。既存戦力で繁忙期を乗り切ることで、調理のスキル、サービスのレベル、店全体の有機的な結束力が一段上がり、より高次のオペレーション能力を身に付けることもできます。このことも目標としなければなりません。繁忙期を(ほぼ)既存のメンバーで乗り切ったという経験は、働く人全員に自信を与え、それが何にも代えがたい財産となります。

ひとりひとりが“多能工”になること。調理とサービスの個々の才能が有機的に結びつくこと。そして何よりも、その忙しさの中で、飲食という仕事の楽しさを共有すること。こういうことで、飲食店の生産性は高められるのです。

目先の銭を追って、店の評判をガタ落ちさせ、消えていった店が山ほどあります。その道をたどってはなりません。

株式会社エフビー 代表取締役 神山 泉 氏
早稲田大学卒業後、株式会社 柴田書店に入社。「月刊食堂」編集長、同社取締役編集部長を経て、2002年に株式会社エフビーを発足。翌年、食のオピニオン誌「フードビズ」を発刊。35年以上もの間、飲食業界を見続けてきた、業界ウオッチャーの第一人者として知られる。

※本記事の情報は記事作成時点のものであり、情報の正確性を保証するものではございません。最新の情報はご自身でご確認ください。

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