2012/11/12 繁盛の法則

本店の味を安価に提供する担担麺・麻婆豆腐専門店とは

連日高回転する雲林坊 九段店に学ぶ‐東京・神田の中国料理店「神田 雲林」での人気メニューの担担麺と麻婆豆腐を、よりカジュアルに味わえる「雲林坊」が、2011年5月2日にオープンした。

URLコピー

雲林坊 九段店

地下鉄九段下駅から徒歩1分、路地沿いの角地にある11席の店舗に、平日は1日150人以上が来店している。

Key Point

  1. 本店で人気の担担麺、麻婆豆腐に特化
  2. 人件費を抑えて低価格を実現
  3. 2店目を出店し、仕込み作業を一元化

本格中華の人気店がカジュアル業態を出店

東京・神田の中国料理店「神田 雲林(ゆんりん)」での人気メニューの担担麺と麻婆豆腐を、よりカジュアルに味わってほしいというコンセプトの「雲林坊(ゆんりんぼう)」九段店が、2011年5月2日にオープンした。わずか8.6坪、カウンターのみ11席の店舗だが、1日の客数が100人を下回ったことがないほど支持されている。

本店の雲林は、横浜中華街や一流ホテルで修業を積んだオーナーシェフの成毛幸雄氏が、2006年5月に創業した。ランチセットは1,000~1,300円が中心価格帯だが、夜は5,250~10,000円のコース料理がメインで、客単価8,000~10,000円の高級店である。本店の調理技術や評価を基盤に、中国の郷土料理や屋台料理を提供する「三希房(さんきぼう)」を2008年10月に九段にオープン。さらに今年5月28日には雲林坊の秋葉原店を出店し、計4店のグループ店を展開している。

雲林坊の担担麺、麻婆豆腐は、本店と同じ材料、レシピで作っている。その一方で、雲林坊では食券機を導入し、ホールスタッフなしで営業できるカウンター席のみの店舗とし、人件費を抑えることで、本店よりも低価格で商品を提供できるようにした。同店の客単価は、昼は920~940円、夜はビールやセットメニューのオーダーが増えるため980円になる。

一番人気の「汁あり担担麺」800円は、全粒粉を独自の配合で作ったオリジナル麺を使い、契約農場から仕入れる老鶏、北海道産ホタテの干し貝柱などで8時間かけて取るスープと合わせている。中国・四川省産の特級花椒(中国山椒)、まろやかな辛さの大型唐辛子の四川朝天辣椒(チョウテンラージャオ)と、鋭い辛さの唐辛子をブレンドして作る独自のラー油、青菜を古漬けにした芽菜(ヤーツァイ)などでアクセントをつけ、炒りたてのゴマのまろやかさで全体をまとめている。

「汁なし担担麺」800円は、小麦の外皮を入れた太麺を使い、ピーナツ、松の実、ゴマで香ばしさを出している。四川料理でよく使う、甘辛い醤油に香辛料を入れて煮詰めた甜醤油(テンジャンユ)をベースに、山西省の黒酢、スープ、醤油でシャープな味に仕上げている。

「麻婆豆腐」800円(単品)は、肉炒めの中に豆腐と葉ニンニクが入っているというイメージで、豆板醤を3種使い、自家製のラー油と山椒をきかせている。外皮のついていないゴマを炒るのも、炒ったゴマを挽くのも同店で行うため、他店では味わえない商品となり、また食べたくなる魅力を併せ持っている。

「汁あり担担麺」と、「麻婆豆腐かけご飯(小丼)」丼のセット1,000円。モヤシとザーサイの和えものがつく。ともにインパクトが強く、また食べたくなる独特の味わいだ。

不安の中でのスタートから多くのリピーターを獲得

「何回か来店されているお客様は、自分の好みに合う食べ方を探すんですよ。汁なし担担麺の山椒少なめとか、汁あり担担麺のラー油多めとか。常連客になると、このお客様はいつもこれ、とわかるようになります」と、雲林坊2店舗を統括する杵淵浩店長は語る。杵淵氏は、雲林創業時の二番手シェフから始まり、三希房ではフロアマネージャーを務め、雲林坊の立ち上げから担当してきた。

九段店は、実は波乱の中での開業だった。九段店の物件を契約したのは2011年3月10日で、翌11日に東日本大震災が起こったため、その後の混乱の影響でオープンは5月2日にずれ込んでしまった。しかしながら、ちょうど飲食店の客足も戻り始めた時期と重なり、5月中旬からは早くもウエイティングができるようになった。

最初の1年間は、15~17時をクローズし、この時間と閉店後にゴマを炒って挽く、ラー油を作るといった仕込み作業を行っていた。手狭な店内では、仕込みと営業を同時進行させることができなかったための処置だったが、スタッフの負担があまりにも大きくなり、仕込みができるスペースを確保したいと、今年5月に秋葉原店を出店した。秋葉原店は、1階が10席の店舗で、2階が2店分の仕込み場になっている。これにより、九段店は営業に専念し、昼夜通しで営業できるようになった。現在、九段店は月商360~370万円を上げているが、アイドルタイムをなくしたことが徐々に認知され、以前は満席が続いても日商17万円台だったが、今秋からは日商18万円を越える日も出てきている。

同店が1日15回転以上という集客力を維持している要因は、以下のようになるだろう。

1本店で人気のある担担麺、麻婆豆腐に特化した専門店というコンセプトを徹底している。
2食材やレシピは変えずに、サービス面を簡略化して人件費を抑え、低価格を実現している。
32店目をオープンし、仕込み作業を一元化して営業力を強化している。

「秋葉原店の仕込み場は、3~4店舗分は賄えるようにと考えて作ってあります。4店舗に増えたら、オーナーの成毛も自家製麺をやりたいと言っています。ラーメン店で製麺を経験したスタッフもいるので、先日も試作しましたが、なかなかおいしい麺ができると思います」と語る杵淵氏。店舗数の増加と同時に、商品のさらなるブラッシュアップを図る考えだ。

住所
東京都千代田区九段北1-5-5 東建ニューハイツ九段104号
TEL
03-6272-3613
営業時間
11:00~22:30(LO22:00)土祝~21:30(LO21:00)
定休日
日曜