2012/12/12 繁盛の法則

薪窯で焼くナポリピッツァを日常価格で提供する専門店とは

センプレピッツァ 阿佐ヶ谷店に学ぶ‐薪窯を使って焼き上げる本格的なナポリピッツァ11品目を、350~850円という低価格で提供する「センプレピッツァ 阿佐ヶ谷店」が、地元客を増やしている。

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センプレピッツァ 阿佐ヶ谷店

JR阿佐ヶ谷駅北口から徒歩1分の場所にあり、店頭に設置された薪窯が目を引く

Key Point

  1. 食材調達力をつけてから低価格業態に挑戦
  2. 生地や薪窯にこだわったピッツァを提供
  3. 商品数を絞りセルフ式にして低価格を実現

イタリア・ナポリで出会った庶民的なピッツァから構想

薪窯を使って焼き上げる本格的なナポリピッツァ11品目を、350~850円という低価格で提供する「センプレピッツァ 阿佐ヶ谷店」が、地元客を増やしている。株式会社BOUNA VITA(ブォナビータ)が経営するセンプレピッツァは、現在、2012年3月オープンの阿佐ヶ谷店(13坪20席)のほか、2011年6月オープンの高円寺店(10坪20席)、2012年7月オープンの高田馬場店(17坪34席)の計3店舗がある。各店で立地や物件、客層に合わせ、商品内容や価格を若干変えており、今後はさらなる多店舗展開を計画している。

オーナーの志水将児社長は、2004年に東京・荻窪に「ピッツェリア ダ ジョヴァンニ」を出店し、独立開業を果たした。薪窯で焼くナポリピッツァをメインとするトラットリアで、客単価は昼1,500円、夜4,000円になる。その後、2007年に株式会社BOUNA VITAを設立し、また2010年には阿佐ヶ谷に「ピッツェリア パラディーゾ」を出店するなど、トラットリア業態で経営基盤を固めていった。

志水社長は、イタリア・ナポリを旅行中に、手頃な価格で、屋台などでは新聞紙に包んで渡されるような庶民的なピッツァに親しみ、日本でもワンコインで食べられるピッツァ店をやりたいという構想を持ち続けていた。そして、まずはパスタやメイン料理も提供するトラットリアを軌道に乗せ、店舗数も増えて食材調達力がついてきた時機を見計らって、商店街にある雑居ビルの1コーナーを使った高円寺店を出店した。アイテム数を絞り込んで効率を上げ、セルフサービス式にして人件費を抑えることなどにより、マリナーラ280円~という低価格を実現している。

「高円寺店は、ドアを開けて入店するような独立した店舗ではなく、商店街に面したピッツァスタンドのような形態。1度食べたらおいしかったからと、リピートしてくれるお客様が多いです。商店街自体が地元のお客様で賑わっていますので、庶民的な商材と立地がマッチしたのかもしれません。また、ピッツェリアとしては珍しいと、メディアで紹介されるたびに、段階的に認知度が上がってきています」と、同社統括本部長の光成純子氏は説明する。現在、高円寺店は月商400万円前後を上げる人気店となっている。

手前がマルゲリータ450円、奥がジェノベ―ゼ650円。店内で手作りするピッツァ生地は1枚220gで、直径約28cmに延ばして具材をのせ、約400℃の薪窯を使って短時間で焼き上げる

今後はFC展開も計画し、3年で100店舗体制が目標

高円寺店の好調を受け、9カ月後に阿佐ヶ谷のパラディーゾをセンプレピッツァに業態変更した。もともとあった薪窯を生かし、商品構成をピッツァ中心に絞り込むとともに、サービス方法をセルフ式に変更した。来店すると、まず商品を選んで会計を済ませ、着席する。ピッツァが焼き上ったらスタッフが客席まで運んで来てくれるが、食べ終わったら食器はお客に返却口まで下げてもらう。以前のパラディーゾを知る客からは、当初は「パスタはなくなってしまったの?」といった戸惑いの声もあったが、センプレピッツァのコストパフォーマンスの高さは概ね好評に受け入れられており、さらには新規客も増えてきている。客単価は終日平均で800円になり、現在は平均月商300万円前後を上げている。

販売価格は抑えているが、同店では原価率35%をかけ、ピッツァ生地も店内で手作りしている。施設の制約上、ガス窯を使用している高円寺店では、ピッツァ生地は1枚190gだが、薪窯を使用している阿佐ヶ谷店と高田馬場店では、1枚220gとボリュームを持たせている。人件費率は約25%で、FLコスト60%弱とし、健全な利益構造を確保している。

同店が低価格ナポリピッツァ専門店として、地域に根差した繁盛店となっている要因は、以下のようになるだろう。

1トラットリアで基盤を固め、食材調達力をつけたところで低価格業態に挑戦している。
2生地から手作りし、薪窯で焼く本格的なピッツァを提供している。
3商品数を絞り込み、セルフサービス式にして低価格を実現している。

また、今後はテイクアウト専門店も構想しており、そのテストケースとして現在、JR荻窪駅の駅ビルの食品売り場に出店している(2013年1月9日まで)。薪窯と遜色のない400~500℃まで上がる電気オーブンをバックヤードに持ち込み、焼成後30分~ 1時間ほど経ってもおいしく食べられるように生地の配合を工夫したピッツァを、箱代を含め500円~という価格で販売している。

センプレピッツァについては、すでにフランチャイズ加盟についての問合せも多く、今後は多店舗展開を本格化していく計画である。直営店としては、2014年3月までに10店舗体制を目標とし、さらには直営・FCで、3年間で100店舗の達成を目指している。

住所
東京都杉並区阿佐ヶ谷北1-3-3
TEL
03-5356-6130
営業時間
11:30~15:00、17:00~22:00(土日祝11:30~22:00、売切れ次第終了)
定休日
無休(1月1日のみ休業)