2013/01/18 繁盛の法則

生活習慣病の改善に寄与する炭水化物を抑えた料理とは

中国糖質制限料理の梅花に学ぶ‐中国糖質制限料理店「梅花」は糖尿病や肥満、心臓疾患等の原因となり得る過剰な糖質摂取を防ぐレストラン。糖質制限で糖尿病の症状が改善された実体験をもとに出店した。

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梅花

新橋駅から徒歩5分ほどのビルの地階に出店。シックにデザインされた25坪35席の店内。テーブル席のほか、カウンター席、個室を用意

Key Point

  1. 砂糖と炭水化物を控えた料理を提供
  2. 食材や調理法でおいしさを追求
  3. 糖尿病患者も健常者も楽しめる店を指向

糖質制限により糖尿病の症状が改善された実体験をもとに出店

東京・新橋の中国糖質制限料理店「梅花(メイファ)」は、糖尿病を始め、肥満、心臓疾患、脳梗塞などの原因となり得る過剰な糖質摂取を防ぐレストランとして、2011年6月にオープンした。経営者の株式会社會(ガイ)・ダイニング取締役社長の梅橋嘉博氏は、糖質を制限することで自身も1カ月弱で5kg以上やせ、糖尿病の判定に使われる数値のHbA1c(ヘモグロビン・エイワンシー)も、一時は入院レベルだったが、2カ月後からは正常範囲内を維持するようになった。

「糖尿病患者や、健康面で不安を持っている人たちが、安心して外食できるレストランがあちこちにあるのが理想的だと思うのですね。生活環境が変わり、運動不足や、精製した米や小麦の普及が、糖尿病患者および予備軍の増加に影響しているのだと思います」と梅橋氏は語る。1953年鹿児島生まれの梅橋氏は、19歳で上京し、20歳で新橋の名店「新橋(しんきょう)亭」に入り、中華の調理人としての修業を始めた。17年間の料理修業の後、新宿にあった繁盛店「胡座楼(あぐらろう)」でホールサービスに転向し、以後8年間、敏腕店長として実績を上げた。しかし、同店の経営が他社に移ったのを機に49歳で退社し、独立開業を目指して準備を進めた。常連客の中から協賛者を募り、約3年の紆余曲折を経て、2004年12月に、東京・新宿6丁目に中国薬膳料理「歓(ファン)」をオープンした。地下鉄の新宿三丁目駅から徒歩5分ほどの場所にある30坪40席の店舗で、「胡座楼」で2番手だった料理人を迎え、同店時代からの根強いリピーターに支持され、現在は平均月商400~450万円を上げている。

中華料理店での勤務は約30年の経験があるが、初めて経営者となった梅橋氏は、しゃにむに働くと同時に、経営者ならではのストレスを食べることで解消するようになった。そんな折、生命保険の切り替えで健康診断を受けたとき、「糖尿病の気がある」と指摘され、疲れやすさや頻尿などの症状も出てきていることに気づいた。薬を服用しながら、毎日往復16kmの自転車通勤で運動にも気を配っていたが、1年後、今度は自転車で坂道を登ると咳が止まらなくなるという、狭心症の症状が現われた。そんなときに友人から糖質制限を勧められ、半信半疑で実践してみると、82kgあった体重が20日ほどで74.5kgに落ちた。また、HbA1cは11近くあったが、1カ月後には7台に下がり、2カ月後からは5.8以下で推移するという、短期間での効果に驚いた。

980円ランチの一例。料理6品の中から2品を選び、豆腐麺、杏仁豆腐がつく。写真の料理は手前が「あさりと韮と干し海老と豆腐の煮物」、右が「牛挽肉と野菜と糸こんにゃくのオイスターソース炒め煮」

1年間の低迷期をしのいだ後、テレビなどの露出で認知度が急上昇

そこで梅橋氏は、砂糖と炭水化物を極力少なくした糖質制限レストランの出店を企画し、新宿の「歓」の常連客に呼びかけて出資を募り、2011年6月に梅花をオープンした。新橋駅から徒歩5分ほどの新築ビルの地下1階にあり、25坪35席の店舗である。ところが、当初の客の反応は冷ややかで、「糖質制限? 自分は病人じゃないのに、なぜそんな料理を食べないといけないのか」と見向きもされず、損益分岐点を大きく割り込む日々が1年間続いた。2012年5月に、梅橋氏は胡座楼時代の上司に「梅花を閉店する」と報告に行ったほどだったが、上司から「君は正しいことをやろうとしているのだから、どんなに苦しくても貫き通せ」と叱咤され、踏み止まった。

転機となったのは、『おやじダイエット部の奇跡』(桐山秀樹著、マガジンハウス刊)で紹介され、さらに2012年6月にテレビ番組でも取り上げられたことだった。以来、雑誌やテレビでの取材が相次ぎ、客が急増して一気に軌道に乗った。客単価は昼1,200円、夜5,000円で、月商500万円を超えるようになった。

同店が中国料理店として糖質制限に取り組み、認知されるようになった要因は、以下のようになるだろう。

1砂糖と炭水化物を極力控えた糖質制限料理を提供している。
2食材や調理法を工夫し、おいしさや満足感を追求している。
3糖尿病患者も健常者も一緒に食事を楽しめる中国料理店を目指している。

同店で人気のある980円ランチは、週替わりの6種の料理から好みの2品を選び、豆腐麺、杏仁豆腐がつく。料理は白飯がなくても食べやすい薄味に仕上げており、魚介類や肉類も使われ、揚げものも含まれる。豆腐麺は、前菜や和えものによく使われる中華食材の豆腐干絲(とうふかんす)を汁そば仕立てにしたものだ。このランチ1人前で、糖質は4~10g程度になる。

夜の糖質制限ディナーコースは、3,000円、5,000円、8,000円を用意しているが、総糖質はそれぞれのコースで16~18gに抑えており、これはおにぎり1/3個分程度。「テレビの影響がある程度落ち着いてきても、今後はそれほどお客様が離れることはないだろうと予想しています」と、確かな手応えを語る梅橋氏。当面は現在ある2店舗のさらなる充実を目指していく。