2013/02/01 繁盛の黄金律

超・高利益店だけが多店舗化を許される

メチャクチャ儲かる店しか多店舗化してはならない‐店舗数が増えると自然にチェーンになると考えている人がいますが、まったく間違っています。チェーンになるためには原理原則があるのです。

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Vol.17

メチャクチャ儲かる店しか多店舗化してはならない

店舗数が増えると自然にチェーンになると考えている人がいますが、まったく間違っています。チェーンになるためには、なるための原理原則というものがあるのです。それについては、別の機会にお話するとして、儲かったら2号店・3号店を出したいと考えるのは人情ですが、たいていの経営者はここでつまづきます。

多店舗化の基本原則の第一は、最初の店がメチャクチャ儲かっていなくてはなりません。売上の15%以上が利益でなければなりません。メチャクチャ売れているけど利益はチョボチョボ。これで多店舗化に踏み切ったら、地獄を見ることになります。ただ立地がいいだけで売れている店もありますし、原価率60%だから売れている店もあります。また、すごい腕を持った料理人を高給で雇っていることが人気の秘密であることもあります。

こういう特殊要因を2号店・3号店につないでいける訳がありませんから、他店舗化は絶対に禁物です。一方、メチャクチャ売れてメチャクチャ儲かっている店。これは多店舗化できますが、その理由を冷静に分析していかないと失敗します。

まず、看板メニューがメチャクチャ売れていなければなりません。業態や席の数にもよりますが、例えば100席の店ならば1日100品は最低ラインでしょう。次にこの看板商品が高利益商品であること。「売れ筋」は、「儲け筋」でなければいけないということですね。そんな強い商品を持っていれば、チェーンになれる可能性があります。ただし、そう簡単に真似されない特殊性も持っていなければなりません。特殊な商品ということではありませんよ。ポピュラーな商品でありながら、味が奥深くて、なかなか真似ができない。そういう実質性を持っているかどうかがポイントです。

次に、立地の普遍性を持っていなければなりません。特殊な場所だから売れるという店であってはなりません。よくありますよね。飲み屋街、繁華街の中のラーメン店や餃子店、たこ焼き店など、深夜でもお客が絶えない店。でも、その場所から取り出してみると、ごくごくありふれた店なのです。こんな店を多店舗化したら大やけどを負います。

2号店は歩いて行ける距離に出す

さて、多店舗化にあたって心しておかなければならないことは、店数が増えるにしたがって利益率は落ちるということです。本部費、採用費、メニュー開発費、販促費と出費がかさみ、どんどん利益が出づらくなります。それだからこそ、最初の店が儲かる店でなければならないのです。

また、次の店を別業態でやる人がいますが、愚かなことです。せっかく宝の山にたどり着いたのに、今までの苦労が水の泡になるではありませんか。次の店でも「今の店」をやるべきです。「今の店」の強い部分をさらに強くして、その“進化系”を出すべきです。そして、2号店は1号店の「増床」という意識で出すべきでしょう。具体的には、店主が歩いていける距離に出すことです。だいたい繁盛店というものは店主の不眠不休の頑張りによって生まれるもの。2号店、3号店までは、店主がかけずり回って、全営業時間、しっかりにらみを効かしておかなければなりません。

東京で言うと、新宿で成功したから赤坂へ、あるいは渋谷へ、池袋へ。これでは失敗します。多店舗化の初期段階では人も育っていませんから、店主不在の状況を作ってはいけません。同じ町の離れたところに店を拡張したのだという気持ちで次の店を出すべきです。

当然、1号店のお客が2号店へ流れ、1号店の客数は減ります。しかし、それでいいのです。1号店のお客が少々減っても、十分すぎるくらいの利益が出ていなければなりません。1号店が儲かる店でなければならない理由はここにもあります。しかし、一度減った客数がジワジワと元に戻るようにならなければなりません。そして、2店ともお客があふれるような繁盛店になっていくことです。それだけのパワフルな潜在能力を1号店が持っている必要があるということですね。2号店は、基本的にパワーダウンするものですから、そのダウンを最小限にするために「近場に出す」。これも肝に銘じておいてください。

売れていても利益が出ていない店の場合、利益はだんだん出るようになるだろうという考えは危険です。利益が出ていない店はいくら頑張っても利益は出ません。この場合は、もう一度ゼロからフォーマットを組み立て直さなければなりません。それから、アルコールの売上が50%を超える店。これも多店舗化は危険です。価格(安さ)で売れている場合はすぐに真似されますし、立地で売れている場合は、特殊立地依存商売に過ぎないからです。

2号店のつまづきは、1号店の繁盛もだめにします。よくよくの注意が必要です。

株式会社エフビー 代表取締役 神山 泉 氏
早稲田大学卒業後、株式会社 柴田書店に入社。「月刊食堂」編集長、同社取締役編集部長を経て、2002年に株式会社エフビーを発足。翌年、食のオピニオン誌「フードビズ」を発刊。35年以上もの間、飲食業界を見続けてきた、業界ウオッチャーの第一人者として知られる。