ビジネス街のニーズを敏感に掴むイタリア食堂とは

イルキャンティ日本橋店

Key Point

1. 店内調理による手作り感のある料理を提供
2. お値打ち感のあるランチメニューで支持を獲得
3. 特別な日のパーティ利用も誘引

1972年の創業から約40年でグループ44店舗に拡大

1972年に東京・笹塚で創業したイタリア料理店「イルキャンティ」は、現在までに直営店14店舗、フランチャイズ店21店舗、コンサルティング店9店舗というグループに発展している。経営元は1993年設立の株式会社IKDで、創業者である笹間章社長は、今も新商品開発時には自ら調理場に立って味を決めるほか、年に数回イタリアを訪ね、食材やワインの仕入れを行なっている。グループ店が増えた今も、セントラルキッチン等は持たずに、創業時から変わらずに手作り感を重視し、ソース類やドレッシングなども各店の厨房で作っている。

地下鉄三越前駅からほど近い「イルキャンティ日本橋店」は、2004年6月にオープンした直営店である。同社では、住宅街や地方都市の店舗が比較的多いが、日本橋周辺には洋風の店が少なかったことから、ビジネスチャンスがあるのではないかと見て出店を決めた。地上1～2階と地下1階の3フロアがあり、店舗規模は計41.9坪61席。

笹塚の本店をはじめ、住宅立地の店舗では、ディナータイムや週末が多忙なのと対照的に、都心のビジネス街にある日本橋店は、ランチタイムと週の後半の木曜、金曜にフル稼働する。特にランチタイムは、990円～1,660円のランチメニューを20種近く揃え、ほとんどにサラダ、スープ、食後のドリンクがつく。中でも、「日替りスペシャルランチ」、「日替りパスタランチ」、「あつあつ! 本日のグラタンランチ」、「サラダランチ」各990円が主力商品で、毎日通っても飽きないように配慮している。加えて、お得なランチ回数券9,900円を販売しており、10回分の料金で11回利用できるため、リピーターに好評を得ている。また、パスタは通常の1人前も乾麺160gを使用し、ボリュームがあるが、さらに1.5倍になるパスタやカレーの大盛りを200円増しで用意しているほか、パンまたはライスのお替りは無料でサービスしている。そのため、オープン当初は女性客が圧倒的に多かったが、現在の男女比はほぼ半々となっている。また、限られた昼休みの時間に来店するお客がほとんどであり、食後のドリンクを飲む余裕がなくなってしまうことが多々あったため、ドリンクはテイクアウトもできるようにした。このような工夫により、ランチタイムは1日平均120～130人、多い日は150～160人が来店するようになっている。

顧客の反応や動きを敏感に察知し
ニーズの変化に素早く対応

夜は、前菜、サラダ、パスタ、ピッツァ、肉料理、魚料理、デザートまで幅広く揃えており、木曜、金曜は予約で満席という日も多い。

中でも好評なのが、自家製ドレッシングをかけて食べるサラダで、お客のほとんどがオーダーする。作り方は企業秘密というこのドレッシングは、野菜嫌いの子供でもサラダ好きにしてしまうことも。また、6種類あるサラダは、それぞれM、L、LLサイズを用意し、人数に合わせて選べるようにしている。

イタリアンをベースとしながらも、前菜の「洋風ネギトロ」924円、「枝豆キャンティスタイル」630円、パスタの「明太子」1,134円～、「のりといか」1,029円～など、和の素材を取り入れた人気メニューも多い。夜の客単価は3,500～4,000円で推移し、1日平均約60人が訪れている。さらに、誕生日や歓送迎会などのパーティ利用も増えている。

同社が44店のグループに拡大し、グループ年商38億円（2009年）を上げている要因は、以下のようになるだろう。

1店内での調理にこだわり、手作り感を活かした料理を提供している。
2ボリューム感、お値打ち感のあるランチメニューで、周辺のOL、ビジネスマンの支持を集めている。
3誕生日や歓送迎会など、特別な日のパーティ利用も誘引している。

「当店では、夜のご予約は時間制限を設けていないので、ゆっくりと利用されるグループも多いのですが、席を工夫するなどでもう少し回転を上げることもできるかなと考えています」と、高橋和子店長は語る。

今夏は電力不足への懸念から、サマータイムを導入する企業が多く、ランチタイムも前倒しになっている様子を察知すると、同店でも7月21日から8月末まで、ランチの営業時間を30分早めることにした。常に顧客の動きやニーズを敏感に捉え、柔軟に対応する姿勢も、地元のリピーターを獲得している要因といえよう。