2013/03/29 繁盛の黄金律

一人三役! 生産性を上げるカウンター商売を見直そう

カウンター内で製造業・販売業・サービス業をこなす‐できたものをその場ですぐに提供するのは外食でしか提供できない価値。今回はその魅力を存分に発揮する、カウンタービジネスについて考えます。

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Vol.19

カウンター内で製造業・販売業・サービス業をこなす

できたものをその場ですぐに提供する。これは外食でしか提供できない価値です。その価値を締めくくるものは、店舗での調理ということになります。小規模店が生き残り、活躍できるのもこのためです。ですから、調理力を大事にしない店は、当然のことですが熾烈な競争を生き抜くことはできません。

今回は、カウンタービジネスについて話をします。とは言っても、対抗(カウンター)ビジネスのことではありませんよ。カウンターで提供するメリットについてです。

飲食業におけるカウンターの魅力について挙げると、まず客に調理工程を見る楽しみを与えられることがあります。最近はシェフズテーブルと言って、カウンターでなくとも、キッチンに隣接する位置に特等席を設けて、調理の一部始終を客に楽しんでもらう趣向がトレンドになっています。このトレンドの出発点がカウンターであったわけです。しかし、カウンターの本当の魅力はそんなところにはありません。経営する側にとって、もっと大きな魅力があります。それは、作る人と提供(サービス)する人が一緒というところです。

飲食業というのは不思議な商売で、製造業と販売業とサービス業の複合体なのです。そのミックス加減によって価値を生み出す複雑極まりない商売です。だからこそ、小規模店が活躍できるわけですが、労働集約型でなかなか労働生産性が上がらない、という欠点があります。この欠点が逆に、小が大に勝つ要因にもなるわけですが。

カウンターは、この欠点を克服するひとつのツールです。作る人が提供する人であり、サービスをする人でもあります。一人三役! 製造業も販売業もサービス業も、すべてカウンター内でやってしまうという画期的な仕組みです。これによって労働生産性が一気に高まります。ですから、独立開業する人が、まずカウンタースタイルから始めるというのは正しい選択です。他人の労働力を使わず、身内で何でもやってしまう。これに適した手法として、カウンターが最良と言ってもいいと思います。

カウンターは思い切り幅広く、そしてぶ厚く

このメリットをもっともよく活かしているのがお寿司屋さんですね。ぶ厚く幅広の白木のカウンター一本で商売をしている店をよく目にします。仕込みをしっかりしておけば、少人数で営業できます。しかも高い客単価をとりやすい業態です。商売というのは、「一人当たりどれだけの売上高を取れるか」が勝負ですから、お寿司屋さんはこの理にかなっているわけです。そして、売り上げに比して人件費がかからないならば、この分を原価に回すと非常に価値のある商品を提供できます。つまり、競争力の強い商売ができるということです。

もちろん先述したように、カウンター内の調理が“絵になる”ことが重要です。調理の技はもちろんのことですが、食材のレベル・鮮度もすべて客から丸見えです。調理場内のクレンリネスも、一点の曇りがあってはなりません。また、主人(料理長)が弟子にどのような接し方をしているかも、一部始終、客に観察されています。カウンター商売は、大変に神経を使います。食材、調理能力、清潔度のすべてにわたって十分な自信がなければ、できるものではありません。

また、カウンターは、客席はあまりとれません。客席数のことだけを考えると、カウンターはテーブルに負けます。カウンターとテーブル席(あるいは座敷席)の混合型の店もよくありますが、生産性は落ちます。飲食の業態によって、ベストの選択は変わるということです。

ところで、カウンター商売でしばしば見られる失敗は、カウンターの幅を狭くすることです。幅の狭いカウンターほどみすぼらしいものはありません。カウンターの幅は、これでもかうと言うくらいに広くしなければなりません。それから厚さ。薄くてしなりそうなカウンターがよくありますが、これもチープ感いっぱいです。ぶ厚い一枚板なんか使ったら、値段が高くついてしょうがない、とお叱りを受けそうですが、何も一枚板なんか使う必要なんてありません。客の腹がつくところだけに厚い板をくっつければいいのです。また、狭いカウンターは皿を並べられませんから、客単価を落とすことにもなります。カウンターでこそ、余裕のあるゆったりとした時間を味わってもらわなければなりません。席の感覚も広くとらなければならないかというと、これがそうでもないんですね。幅広でぶ厚いカウンターでさえあれば、客席間はそれほど広い必要はないものです。

業種業態、商売の中身に、またその規模によって、カウンターの理想形は変わります。導入する際は、繁盛しているカウンター店をこまめに訪店すべきです。もちろんメジャーは必携です。幅、厚さ、客席間隔を素早く、店主に見つからないようにして測定してみてください。

最後に、カウンター席は禁煙ですよ。バーは例外かもしれませんが、カウンター席で喫煙している客くらい不愉快な存在はありません。それを許すと店主の見識が疑われます。

株式会社エフビー 代表取締役 神山 泉 氏
早稲田大学卒業後、株式会社 柴田書店に入社。「月刊食堂」編集長、同社取締役編集部長を経て、2002年に株式会社エフビーを発足。翌年、食のオピニオン誌「フードビズ」を発刊。35年以上もの間、飲食業界を見続けてきた、業界ウオッチャーの第一人者として知られる。

※本記事の情報は記事作成時点のものであり、情報の正確性を保証するものではございません。最新の情報はご自身でご確認ください。

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