2013/04/04 繁盛の法則

洋食の流れをくむ、カレーに特化した専門店とは

独自の製法のキクヤ カリーに学ぶ‐もとは洋食メニューをそろえた店だったが、中でもカレーの人気が際立っていたため「キクヤ カリー」に変更。現在では個性的な3種のカレーを中心に提供する繁盛店だ。

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キクヤ カリー

JR桜木町駅から徒歩5分ほどのビルの1階にあるカフェ風の店舗。店舗規模は9坪16席

Key Point

  1. 洋食の技法で作ったスープを使用
  2. スパイス類を店内で挽いて独自に調合
  3. グラタン皿に盛り、熱々を提供

和風南蛮、スリランカ風、バター・マサラの3種の味を提供

中学生の頃から、自分でスパイスを調合してカレーを作るようになったという「キクヤ カリー」店主の吉井由昌(ゆいしょう)氏。同店は、もとはハンバーグやグラタンなど、多彩な洋食メニューをそろえた「キクヤ カフェ」として2003年8月にオープンした。中でもカレーの人気が際立っていたため、2008年に「キクヤ カリー」に店名を変更し、メニュー構成もカレー中心に絞り込んだ。同店の店頭を通りかかっただけでも、フレッシュなスパイスの香りが漂うが、これは約20種を駆使するスパイスのほとんどを、ホールのままで仕入れ、店内でミルを挽いて調合するためだ。

また、カレーショップというと、ご飯にカレーをかけてパッと出てくるイメージがあるが、同店ではグラタン皿に盛ったカレーの中央に生玉子を落とし、1人前ずつオーブントースターで熱々に焼き上げてから提供する。具材も大ぶりで、ほとんどのカレーは、スープカレーのスリランカ風、玉ネギの甘さを生かした和風南蛮、ホールトマトや生クリームを加えたバター・マサラの3種の味を選べるのも特徴だ。いずれもしっかりした辛さであるため、カレーのオーダーは小学生以上を推奨している。また、幼い子供連れや、辛さが苦手な人向けに、デミグラスソースベースのシチューや、ホワイトシチューは引き続き提供している。

カレーのベースは、洋食の技法を活かして仕込んでおり、鶏モモ肉や野菜類などを4~5時間煮込んで1日寝かせ、さらに炒めた玉ネギ、ショウガ、ニンニクなどを加えて作っている。チーズをのせてオーブンで焼けば、すぐにオニオングラタンスープになるようなベースである。そこにカレーパウダーを加えた和風南蛮が基本のカレーで、和風南蛮にスパイスを挽いて独自に調合したガラムマサラを加えたものがスリランカ風、スリランカ風にココナッツミルク、生クリーム、ホールトマト、トマトケチャップを入れたものがバター・マサラになる。

この3種の味は、ほぼ均等に出ているが、初めて来店した客には、バター・マサラを勧めることが多い。「バター・マサラは、生クリームの甘味やトマトの酸味があるので、最初の口当たりはマイルドなのです。後からスパイシーさや辛さがついてくるので、こんなカレーもあったんだと、感動される方が多いですね」と吉井氏は説明する。メインの「ザ・カリー」は8品目980~1,300円で、いずれもサラダ、ライスつき。サラダは、洋食店風のポテトサラダの上にキャベツの千切りをたっぷりのせ、ドレッシングをかけて提供する。カレーができあがるまで7~8分かかるので、ゆっくりとサラダを食べながら待ってちょうどよいくらいである。やや固めに炊いたライスは、300gまで追加料金なしで提供し、客に好みの量を聞いて盛り付ける。カレーの量が多いので、ライスは150~200gと、やや少なめに注文する客が多い。

手前がハンバーグ・カリー(1,100円)の和風南蛮、奥が豚バラカリーのバター・マサラ(980円)。ともにキャベツとポテトのサラダ、ライス付き

職住近接の利便性を優先し、自宅を兼ねたビルに出店

吉井氏は1952年横浜生まれで、子供の頃からの料理好きが高じ、数店舗の飲食店勤務を経て独立し、横浜・上大岡で洋食店を5年ほど経営していた。その後、父親が野毛の小さなホテルを購入し、5年ほどそのホテルの運営を任された。しかし、建物の老朽化に伴い、ホテルを閉鎖して建替えを決断。現在のビルは、1階が店舗、2~3階がワンルームマンション、4~5階が自宅というフロア構成になっている。

吉井氏は、1階の店舗スペースを使い、再び自分で小ぢんまりした飲食店をやりたいと考えた。同ビルは、JR桜木町駅から徒歩5分ほどかかり、繁華街の外れにあるが、以前経験した通勤の大変さから、職住近接の利便性を優先した。また、動物園のある野下山公園がすぐ近くにあり、図書館、教育会館、労働組合本部なども近隣に点在しているため、家族連れや公務員など、幅広い客層をつかんでいる。客単価は1,000円で、平日は1日平均50~60人、週末は100人以上が来店している。男女比はほぼ半々。

同店が個性的なカレーで目的客を誘引している要因は、以下のようになるだろう。

1洋食の経験、技法を活かして、ベースのスープをていねいに取っている。
2ホールのスパイス約20種をミルで挽いて調合し、フレッシュ感のあるスパイシーさで独自性を出している。
3グラタン皿に盛ってオーブントースターで焼き、熱々で提供してインパクトを強めている。

同店をオープンして10年の間に、メニュー構成や製法も少しずつ変えてきた吉井氏だが、「今後は、もうそれほど変わらないと思いますよ」と語る。現在のひとつの課題は、家庭用のオーブントースター5台を使っている焼き上げ工程のスピードアップで、最新の電気オーブンを導入すれば、今より数分早く提供できるのではと、検討を進めている。

住所
横浜市中区野毛4-173 天悦ビル101
TEL
045-231-0806
営業時間
11:00~19:00(L.O.)
定休日
月曜(祝日の場合は営業、翌火曜休)