2013/04/30 繁盛の黄金律

メニューは3種類。客数を増やすメニュー(前編)

「売れ筋」は「儲け筋」でなければならない‐メニューには、3つの種類があります。「客数を増やすメニュー」、「客単価を上げるメニュー」、「利益を取るメニュー」。この3つです。

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Vol.20

「売れ筋」は「儲け筋」でなければならない

メニューには、3つの種類があります。「客数を増やすメニュー」、「客単価を上げるメニュー」、「利益を取るメニュー」。この3つです。もちろん、ひとつのメニューがふたつの役割を果たすこともありますが、重点をどこに置くかでこの3つに分類されます。この分類を頭の中でできていないと、戦略を持った経営者にはなれません。

料理修業を積んだ人が独立開業して、結構失敗する例が多いのは、まず物件選択の重要性の認識が甘いこと(以前にも述べましたが、物件選択のミスは取り返しがつきません)が理由のひとつ。もうひとつは、このメニュー分類が苦手なことです。自分の作ったメニューに対する思い入れが強すぎて、どのメニューに対しても等分の原価率をかけてしまうのです。例えば、すべて原価の3倍を定価にするような方法です。この傾向が高じますと、ランチもディナーも原価率が同じ、食事メニューもデザートも同じ、というマヌケな手を打ってしまったりします。要するに経営者としては素人ということです。

これも前に述べましたが、原価率はデコボコでなければなりません。粗利を取りにいくメニューは5倍付けであってもいいし、逆に原価率を6割に設定しなければいけないようなメニューも存在します。原価には、メリハリをつけなければなりません。

客数を増やすメニューは、基本的に原価率が高いメニューです。「高原価」というものが、いちばんわかりやすいバリュー訴求だからです。ただし、これはどこの店にも存在するポピュラーなメニューについて言えることであって、「わが家のオリジナル看板メニュー」は、その限りではありません。オリジナルメニューというものは、わが家独自のメニューですから、他店のメニューと比較のしようがないのです。原価がよくわからない商品に仕立て上がっていなければなりません。珍奇なメニューということではないのですよ。ジャンルとしてはポピュラーだけど、「これってこの店でしか味わえないよなぁ」といったメニューです。こういう看板メニューは、しっかりと粗利を取るべきです。「売れ筋」は「儲け筋」でなければならないのです。

ポピュラーなメニューは、価格を低く設定する

他店との比較の話をしましたが、比較されやすいメニューは価格を下げて、お値打ちを訴求しなければなりません。居酒屋で言えば、お通し、生ビール、焼鳥、煮込み、刺身盛り合わせ、といったメニューがそれにあたります。こういうどの店にもあるメニューの価格が高いと、「高い店」という印象を与えてしまいます。逆に、こういうメニューが安いと、これがマグネットの役割になります。つまり、安いポピュラーメニューは、「客数を増やすメニュー」になるということです。

ちなみにお通しが法外に高い店って、本当に腹が立ちますよね。500円も取って、ゴマ油をかけただけのザク切りキャベツなんかが出てきますと、それだけで店を出たくなります。それから、高級日本料理店のお酒の高さ、あれは何とかしたいですね。日本酒1合1,500円よりとか。いったい何を考えているのでしょう。こういう店でちょっと酒を飲みすぎると、料理よりも酒代のほうが高くなったりしてしまいます。こういう非常識がまかり通っている古い世界がまだまだあります。

客数を増やすメニューは、サブメニューの中にも存在していなければなりません。例えば、中華料理やラーメン店のぎょうざ、喫茶店のモーニングセット、イタリアンのピザなどがこれにあたります。ぎょうざですと100円台、モーニングセットはタダか100円台、ピザですと500円台。この価格を付けると、「おおっ!」ということになり、注文率が一気に上がります。これが客数増の要因にもなるのです。

そんな価格で出したら、原価率が上がってしまうと恐れるのは、まさに素人です。はっきり言って原価率は100%でもいいのです。繁盛店の店主というのは、注文率の高いこういう超お値打ちサブメニューを仕込むことが本当に上手なものです。いくら原価率が高いメニューであっても、主力メニューをちゃんと注文していただき、客単価があがって、結果的に所定の原価率にキチッと落とし込んでいく。その技術が巧みなのです。強い店というのは、必ずすばらしいサブベーシックメニューを持っているものです。 (後編に続く)

株式会社エフビー 代表取締役 神山 泉 氏
早稲田大学卒業後、株式会社 柴田書店に入社。「月刊食堂」編集長、同社取締役編集部長を経て、2002年に株式会社エフビーを発足。翌年、食のオピニオン誌「フードビズ」を発刊。35年以上もの間、飲食業界を見続けてきた、業界ウオッチャーの第一人者として知られる。

※本記事の情報は記事作成時点のものであり、情報の正確性を保証するものではございません。最新の情報はご自身でご確認ください。

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