2013/05/08 繁盛の法則

商品力と低価格で週数回の来店を促す串揚げ店とは

大阪スタイルの串かつえいちゃんに学ぶ‐明るく、奇をてらわず、気さくな雰囲気の「串かつ えいちゃん」には、連日幅広い層の客が訪れている。低価格であると同時に、商品力の高さも同店の特徴だ。

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串かつ えいちゃん

明るく活気のある店内で30~50代の幅広い客層をつかむ。カウンター内で串揚げを揚げているのが店主の稲葉豪志氏

Key Point

  1. カラッと軽い独特の串揚げで差別化
  2. サービスデーなどで来店動機を刺激
  3. 低価格を訴求し、薄利多売に徹する

衣や揚げ方を工夫した串揚げで特徴を出し、サービスデーの設定で来店頻度を高める

明るく、奇をてらわず、気さくな雰囲気の「串かつ えいちゃん」には、連日幅広い層の客が訪れている。ファーストドリンクの生ビール(またはソフトドリンク)と、9種の中から好みのおつまみ1品を選べる500円セットを中心に、1,000円前後でさっと楽しんでいく客もいれば、じっくりと腰を据え、1人5,000~6,000円ほど飲食していくグループもいる。平均すると客単価は2,600円だが、串揚げは1本100円~、おでん16品目は全品130円、その他の一品料理約60品目も100円~500円という低価格に設定している。ドリンクも、角ハイボールは200円、1杯目の生ビールのザ・プレミアムモルツは290円と、ストレートにお値打ち感を感じさせる。さらに今年1月からは、毎週月曜は「MondayMANday」として男性のみのグループを、毎週水曜は「レディースデイ」として女性のみのグループを対象に、それぞれ何杯飲んでもドリンク全品半額とするサービスデーを打ち出している。

低価格であると同時に、商品力の高さも同店の特徴である。大阪スタイルの串揚げは、ラード100%の揚げ油を使いながらも、小麦粉を高ガス圧の炭酸水で溶いた衣をつけて油の吸収を抑え、さらにキメ細かいパン粉をつけて高温、低温、高温という油温で3度揚げして提供する。そのため、ラードのコクがありながらサクッと軽く、油っぽさのない揚げ上がりとなり、野菜などの甘味がしっかりと引き出されている。味の決め手となるソースも、大阪のメーカーから仕入れる3種を独自にブレンドし、サラッとした辛口タイプを卓上に用意している。大阪では、串揚げを卓上のソースに浸けるのは、食べる前の1回のみと客も周知している。しかし東京では、当初、食べかけの串揚げをもう1度ソースに浸ける2度浸けをしてしまう客が多かったため、直接声をかけたり、「ソース2度漬はお断り致します」と明記した同店のロゴを商標登録し、店頭の看板や店内ポスターで注意喚起することで、2度浸け禁止を浸透させていった。

同店の創業は2009年11月で、高田馬場駅からすぐのビルの地下、14坪32席の店舗でスタートした。飲食フロア内の一番奥という立地ながら、次第にリピーターをつかんでいき、隣接の物件が空いたため2012年7月に移転拡大し、現在は25坪58席で営業している。なお、当初の店舗は「ホルモン・手羽先えいちゃん」にリニューアルし、現在は2店舗で緊密に連携しながらも、独立採算体制をとっている。

手前が串揚げで、左から豚170円、なす130円、しいたけ130円、紅生姜100円、右2本が串かつ1本120円、串かつの間がししとう130円、奥がアスパラ1本揚げ250円。中列左がどて焼120円(写真は2人前)、右が本まぐろとエンガワのミニ刺身盛で、1杯目の生ビールとのセットで500円。奥左が生まぐろ刺380円、右がお通しのキャベツ200円

低価格でアピールして「連日満席になるお店」を実現

経営元は株式会社FCRで、代表取締役の稲葉豪志氏は1977年大阪生まれ。大学時代は体育会の野球部に所属しながら、飲食店でのアルバイトを経験した。その後、別の業種の企業に就職したが、食材メーカーや卸業者との縁を保っていた。2008年に東京に転勤になると、東京というマーケットの大きさを実感するとともに、自身の将来を模索する中で、いつまでもサラリーマンでいるより、独立して自分で事業をやりたい、その際は客の顔を見ながら営業でき、リアルに反応を感じられる飲食店をやりたいと考えた。そこで、2009年初めに会社を辞めると、飲食店に勤めながら準備を進め、特に串揚げ用ソースメーカーとのつながりが強く、また限られた厨房機器で営業可能で、その分客席数を多く取ることができることなどから、串揚げ店での独立開業を志した。物件探しも退職後に本格的に開始し、2009年9月に同社を設立。11月に最初の店舗を出店した。

「私が店づくりにおいて最優先したのは、『毎日満席になるお店』をつくることでした。串かつ店は1本100円~の商品がほとんどで、1本で数十円の利益しか上がらない薄利多売の業態であり、他の業態と比べても来店客数が重要になります。自信よりも不安のほうが大きかった中で、毎日満席にするにはどうすればいいかを考え抜いた結果、価格が一番わかりやすいのではと結論を出しました。多くのお客様に来店していただくために、先に価格を安くして提供する。これは覚悟以外の何ものでもないです」と稲葉氏。食材や酒類メーカーと交渉して協力関係を築き、今では月商800~850万円を上げる中でも、食材原価率は38%弱、役員報酬を含めた人件費率は35%に達している。まさに薄利多売を実践しながら、営業利益率9.3%を確保しているのは、日々の努力の賜物といえよう。

同店が多くのリピーターで連日満席になる要因は、以下のようになるだろう。

1カラッと軽い独特の串揚げで差別化している。
2500円セットやサービスデーを設定し、来店動機を刺激している。
3低価格をアピールして集客力を高め、薄利多売に徹している。

今後は店舗拡大を視野に入れ、まず社員独立制度の確立を目指している。またFC展開も進めていく予定で、すでに話のあった加盟希望者には個別に対応し、検討していく考えだ。

住所
東京都新宿区高田馬場1-26-5 F・Iビル B1F
TEL
03-3200-9727
営業時間
17:00~23:30(日祝15:00~22:30)
定休日
不定休