2013/05/31 繁盛の黄金律

メニューは3種類。客数を増やすメニュー(後編)

メニューには客数を増やすメニュー、客単価を上げるメニュー、粗利益を取るメニュー、があります。経営者はこの3種のメニューを結合させ、原価率を目標の数字に収めて客数を伸ばし、繁盛店にします。

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Vol.21

主力メニューの品質が上がらなければ客数は増えない。

前回の続きです。メニューには、客数を増やすメニュー、客単価を上げるメニュー、粗利益を取るメニュー、この3種類のメニューがあるという話をしました。

プロの経営者は、この3種のメニューを巧みに結合させて、原価率を目標の数字に収め、客数を伸ばし、我が店を繁盛店に仕立て上げます。ダメな経営者は、このメニューのメリハリをまったく理解せず、全品同一原価率などという愚行をメニュー作りで行って、最後は廃業を余儀なくされます。店の売上は、客数が上がって、客単価も上がってくれば伸びます。利益は粗利益高が上がれば、増えます。言葉にすれば簡単明瞭なのですが、実践して成果を得るとなると、これは至難のワザです。

客数増の基本は、主力メニューの品質が上がって価格が下がることです。これまた困難な道ですが、チェーングループで強くなっているところは、これを実行しています。食材の仕入れ→セントラルキッチンの製造→店舗での調理→提供に至るまで、絶えず検証と改善を行い続けて、価格引き下げ、品質向上を繰り返しています。価格の引き下げは、昨今のご時勢ではなかなか難しいですが、少しでも品質を上げていく努力を怠ってはなりません。

主力商品については、「味は変えない。しかし質は上げる」を原則としなければなりません。質が同じところに留まっていると、コアの常連客は必ず「まずくなった」と言いはじめます。そして、店から離れていきます。コアのお客様が減っていって(あるいは来店頻度が下がって)、客数が増えるなどということはありえません。

値下げをしたほうが客単価は上がる

「客単価を上げる? そのためには値上げしかないなぁ」などと考えている人がいたら、飲食業の経営者として失格です。値上げくらいお客様の反発を買うやり方はありません。むしろ価格を下げたほうが客単価は上がることが多いのです。価格を下げると、1人のお客様の注文皿数が増えるからです。逆に言うと、注文皿数が増えないような値下げはやってはいけないということです。

前にも例に挙げましたが、ラーメン店の餃子がそうですね。一皿250円で売っていたものを190円にしたら、注文数が3倍になったという話があります。居酒屋の生ビールなんかもそうです。480円で売っていたものを、380円にしたら、従来1人1杯しか注文されていなかったものが1.5倍に上がったという例もあります。デザートもそうですね。高いから食後グッと我慢していたお客様が、「あっ、この値段なら注文しちゃおう」という気持ちになったら、注文数はハネ上がります。

ただし、原価は上がります。しかし客単価が上がりますから、粗利益高はむしろ上がるのです。ですから、注文数を高めて、客単価を上げるメニューをあらかじめ設定しておく必要があります。そしてその中でも、このメニューの出数を上げていこう、という重点メニューを決めておかなければなりません。そして、注文率がどれだけ上がると、客単価がどう上がり、原価率がどう変わり、粗利益高がどう変化するか、その青写真ができていなかければなりません。

牛丼業界は値下げ戦争が続いていて、「すき家」も「吉野家」も「松屋」も、牛丼(松屋は牛めし)が280円です。競争対策上、仕方がないのでしょうが、私に言わせればやってはいけない値下げです。主力メニューの値下げですから、原価は上がる、単価は下がるで、2割以上の客数増がなければ、売上すらキープできません。今、客数を2割上げることは、至難のワザですからね。

粗利益を取るメニューですが、主力メニューでしっかり儲けることを原則としなければなりません。が、主力メニューの改変版が高粗利益メニューになります。

例えば、基本のラーメンにトッピングを加えるだけで、100円、200円高の商品になります。こういう主力メニューの改変版が人気になりますと、粗利益がガラリと変わります。 調理の作業量を増やさず、ほんのひとつ材料を加えることで、単価・粗利益がグーンと伸びる主力メニューを磨く一方で、その「バリエーションメニュー」の開発には、常にエネルギーを注ぐ必要があります。

値上げをしないで客単価を上げ、粗利益を増やす方法はいくらでもあるのです。客数を増やそう、収益構造を変えよう、ということをいつもいつも考え続けていなければ、熾烈な外食戦争を勝ち抜くことはできません。でも繰り返しますが、主力メニューの質を絶えず上げていかなければ、客数は増えません!

株式会社エフビー 代表取締役 神山 泉 氏
早稲田大学卒業後、株式会社 柴田書店に入社。「月刊食堂」編集長、同社取締役編集部長を経て、2002年に株式会社エフビーを発足。翌年、食のオピニオン誌「フードビズ」を発刊。35年以上もの間、飲食業界を見続けてきた、業界ウオッチャーの第一人者として知られる。

※本記事の情報は記事作成時点のものであり、情報の正確性を保証するものではございません。最新の情報はご自身でご確認ください。

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