2013/06/06 繁盛の法則

市場の活気と商品力を併せ持つ陽気なイタリア料理店とは

築地パラディーゾ!に学ぶ‐東京・築地場外市場にあるイタリア料理店「築地パラディーゾ!」は、市場内らしい活気と陽気さ、ボリューム感、お値打ち感を併せ持ち、ランチタイムには行列ができる繁盛店だ。

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築地パラディーゾ!

築地場外市場の一角で、南イタリア風の陽気さを醸し出す19坪31席の店舗

Key Point

  1. 場外市場では珍しいイタリアンに挑戦
  2. 陽気な南イタリア風の活気を演出
  3. 素材調達力を生かした味、量、価格を訴求

イタリアの市場にあるような安くておいしい店を目指す

東京・築地場外市場の一角にあるイタリア料理店「築地パラディーゾ!」は、市場内らしい活気と陽気さ、ボリューム感、お値打ち感を併せ持ち、ランチタイムには連日行列ができる繁盛店である。

「築地といえば、まずは新鮮なネタを使った寿司というイメージですが、寿司店ならたくさんありますし、当たり前のことをやってもおもしろくないでしょう。たまたまこの物件と出会い、大家さんに『築地にないものをやったほうがいいじゃないですか。ここでイタリアンレストランをやりたい』と話したら、最初は理解してもらえませんでした」と、オーナーシェフの久野貴之氏は苦笑する。恵比寿など、都心の有名イタリア料理店で修業を積んだ久野氏は、独立にあたり、当初は東京以外のほうがいいという思いもあった。しかし、同物件との出会いから、昭和の面影を残す、下町情緒のある場外市場の魅力を再認識し、予定されている築地市場の豊洲への移転というリスクも理解したうえで、出店を決意した。

久野氏は1973年東京・北区生まれで、実家が浅草で和食店を経営していたことから飲食業に興味を持ち、高校を卒業すると、まず老舗専門店「駒形どぜう」に入り、2年間修業した。その後、自身が目指すイタリア料理に転じ、東京・恵比寿の有名店「イル・ボッカローネ」などで勤務した。勤務中に5店もの新店舗の立ち上げを経験したため、いざ自らの独立開業となったときも、6店目の新規出店という感覚だった。また、何度となくイタリアを訪ねて見聞を広げてきた久野氏は、イタリアの市場の中によくあるような、安くてボリュームがあっておいしい店を、この築地に作りたいと考えた。

オープンは2011年9月で、波除稲荷神社に近い場外市場の外れ、小規模な商店が並ぶ中に、突如として陽気なイタリア料理店が出現する格好となった。1階が19坪で厨房と客席31席、地下が9坪でトイレと倉庫がある。築地のイタリア料理という珍しさから早々にラジオ番組で紹介されたり、芸能人のリピーターができたりした影響で、オープン後ほどなく軌道に乗った。

ランチタイムは、パスタ、リゾットを中心とするランチメニュー(980円~)を提供し、客単価は1,500円。サラダやキッシュなどを盛り合せた山盛りの前菜がつくため、男性客も比較的多い。現在はランチタイムもなかなか予約が取れない状態だが、カウンター5席はフリー客のために確保しており、1日平均約80人が来店している。

夜は、人通りがほとんどなくなる立地にもかかわらず、タクシーに乗って来店する客が多く、1カ月先まで予約で埋まっているという状況だ。夜はワインとともにゆっくりと食事を楽しんでいく客がほとんどで、客単価は6,000~7,000円、1日平均約30人が来店している。

手前が夜の人気メニュー、「パラディーゾ名物! 本日の貝類とチェリートマトのリングイネ」(2,100円)、奥は「本日仕入れた魚介のフリットをナポリスタイルで! 本日の全部のせ盛り合わせ!」(1,680円)

素材調達力を活かした魚介料理や自らがこだわる肉料理を提供

同店を代表する人気商品が、「パラディーゾ名物! 本日の貝類とチェリートマトのリングイネ」(2,100円)だ。季節によって異なる6~7種類の貝類が、皿からあふれんばかりに盛られる豪快なパスタ料理で、ナポリ産の太めのリングイネに、十分に具材の味が染み込み、しっかりとかみ応えのある麺のおいしさと、新鮮な貝類、チェリートマトの自然な甘さを堪能できる。一度食べると他店の魚介のパスタが物足りなくなってしまうほどだ。築地ならではの魚介料理もさることながら、自身はもともと“肉食”という久野氏は、自家製ソーセージや備長炭を使った肉類の炭焼きなど、クオリティの高い肉料理にもこだわっている。

同店が築地のイタリアンという異彩を放ちながら、客の期待に応えている要因は、以下のようになるだろう。

1場外市場では珍しいイタリア料理に挑戦している。
2陽気な南イタリアをイメージし、気さくで活気ある雰囲気を作り出している。
3市場内ならではの素材調達力を活かし、おいしさ、ボリューム、値ごろ感を訴求している。

「私はここで独立してよかったなと思っています。特に周辺で働いている方たち、あるいはお客様から、毎日本当に元気をもらっているからです。市場が豊洲に移転した後も、築地周辺は荷物の中継地点になるとのことなので、場外市場の整備が進めば、当店を皮切りに多彩な飲食店が増えていくと思いますし、私は結構プラスに考えています」と久野氏。同店としては、客が代替わりしたり、人生の転機を経て再来店しても、「変わらないね」と言われるように、商品やサービスの維持、向上に努めていく考えだ。さらにスタッフの独立を支援しつつ、久野氏自身は同店をしっかりと守り続けていきたいという。

住所
東京都中央区築地6-27-3
TEL
03-3545-5550
営業時間
11:00~14:00(L.O.)
18:00~21:30(L.O.)
定休日
日曜(月曜が祝日の場合は営業、翌月曜休)