目次
・新人アルバイトスタッフへのアプローチで重要なことは?
・再び休業要請などが出た場合、どんなマネジメントが必要?
・これからの時代の人材育成でポイントになることは?
前編もチェック!
「【前編】コロナ禍を力に変える人材マネジメント~スタッフの意欲&店のQSCはこうして高める!~」
これからは人材の育成が他店との差別化になる時代。スタッフの成長段階や社会の状況に合わせたマネジメントを!
新人アルバイトスタッフへのアプローチで重要なことは?
ミスマッチを避ける面接と、勤務開始前のフォロー、新人向けの評価基準の設定が重要。
★新人アルバイトスタッフに対するマネジメントのポイント
・勤務開始後のミスマッチを防ぐための面接
・初日までのフォロー
・新人用の評価基準の設定
休業中に人員削減に踏み切り、通常営業が再開した今、新たに採用を行う店も少なくないはず。営業が忙しくなる中、新人スタッフには早く慣れてほしいが、一方ですぐに戦力にならずとも、まずは辞めずに働き続けてほしいと願う経営者も多いだろう。では、アルバイトスタッフを迎え入れるにあたって、注意すべき点はどこか。
「まず、採用時の時間をどう使うかがとても重要です」と株式会社ホスピタリティ&グローイング・ジャパン取締役で人材コンサルタントを務める奥野律子氏は語る。人手不足で即採用したいという気持ちから面接が形骸化してしまいがちだが、面接も育成の場と考え、勤務開始後のミスマッチをできる限り避けるための時間にすべきだという。「これから働く現場が、どれくらい忙しいのか、どんな仕事をするのか、フォローする体制は整っているのかなどを包み隠さず、できるだけ具体的に提示してあげることで、心の準備ができ、入店初日に新人が『思っていたより忙しそう(難しそう)』などと驚くことも少ないはず。お互いにせっかく時間を取っているわけですから、店や会社のことを理解してもらうために使いましょう」(奥野氏)。
ただし店の現状を正直に伝えるあまり、面接の場で後ろ向きな発言をしてしまうことは避けたい。ネガティブな情報を伝える時も、ポジティブな要素でカバーすることが大切だ。「飲食店にとって苦しい状況ですが、そんな中でも前を向いている職場には前向きな人が集まります。明るく迎え入れることを忘れないでください」と奥野氏は語りかける。
さらに、面接後、勤務開始日までのフォローも必要不可欠。不安なことはないか、メールやLINE、電話などで1回連絡を入れるだけでも、「あなたのことを気にかけている」というメッセージを伝えることができる。大切にしてもらっていると感じれば意欲も高まり、勤務開始日にドタキャンするといった事態も防げるはずだ。
勤務開始後のアプローチで重要なのが、新人スタッフ用に評価基準を別途定めること。最初は「卓番を覚える」などからスタートし、「メニューを覚える」「水が出せるようになる」「電話が取れるようになる」など、基本的なものから順番にオペレーションを細かく一覧にし、勤務開始から1~3カ月での達成を目指すのが理想。「新人が何をすればいいのか、イメージがつくように最初に覚えることを一覧にして渡してあげましょう。初日からできることを項目に含めれば、成長を感じられて意欲向上につながります。その際はほったらかしにするのではなく、トレーナー役の先輩スタッフを付けて伴走することも重要です」(奥野氏)。
また、「スタッフのモチベーションが一番高いのは入社時」と奥野氏。学習意欲がある時に自分から学べるよう、マニュアルを作成するのも効果的。わからないことがあっても遠慮して先輩に聞けないという新人でも、マニュアルを読むことで不安が解消され、自信を持って業務にあたることができるはずだ。
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再び休業要請などが出た場合、どんなマネジメントが必要?
オンラインでの1対1の面談が有効。スタッフ以上に、店長のマネジメントが重要!
★通常営業ができないときの人材マネジメント策
・評価制度やマニュアルの見直し
・店長とスタッフの1対1の面談
・店長のメンタルコントロール
・会社の歩み・歴史を共有する
現状は感染者数が多くないが、今後、第6波が来る懸念も捨てきれない。再び休業要請が出てしまった際は、どのような対応を取ればスタッフの離職を防ぎ、その後の通常営業再開に向けてモチベーションを維持させ、意識をアップさせるのか。
それには「意識を切り替え、まとまった時間ができたと肯定的にとらえることが必要」と奥野氏は話す。人材マネジメントの側面でいうと、評価制度の構築やマニュアルの整備に腰を据えて取り組むチャンスだという。「評価制度の構築・見直しは、将来的な人材の問題に必ずプラスに働きます。外部に委託するのも手ですが、自分たちでパワーをかけて作ったものは、うまく活用するためのオリジナルのアイデアが詰まっていますから、現場で必ず生きるはずです」(奥野氏)。
また、雇用を維持するための取り組みとしては、店長とスタッフの1対1での面談が有効だ。内容は評価に関係するような堅苦しいものではなく、近況を尋ねるところから始め、お互いの話を聞く場を定期的に設けるのが好ましい。オーナーが参加できる場合は、複数人でよりよい店づくりのアイデアなどをオンラインでディスカッションする場を作るのも、スタッフのモチベーション維持につながる。
一方で、見逃されがちなのが店長のマネジメント。「アルバイトスタッフは、会社よりも店舗に属しているという意識が強いもの。そのため、店舗のトップである店長の良し悪しによって、スタッフのモチベーションや離職率が変わってくるため、店長のフォローも大切です」と奥野氏は指摘する。店長が不安を抱えた状態では、ネガティブなマインドがスタッフにも伝染してしまうだろう。複数店舗を抱える企業にとっては、アルバイトスタッフ以上に店長のメンタルコントロールが重要になってくる。
また、会社への帰属意識を高める取り組みとして、創業ストーリーをまとめた動画を作成した事例もある。「当社がコンサルタントを担当した飲食企業の一つでは、創業者がどんな思いで会社を設立したのか、どんな困難を乗り越えて今があるのかなどをまとめた動画をスタッフ全員に共有しました。会社の理念や歴史がアルバイトスタッフにも伝わり、モチベーションアップにつながるのでおすすめです」と奥野氏は話す。
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これからの時代の人材育成でポイントになることは?
DX化を進めながら、人にしかできない部分を強化し他店と差別化
今後、飲食業界において人材獲得競争がますます熾烈化することが予想される。一方でDX(デジタルトランスフォーメーション)化が進み、現場の省人化も加速するだろう。労働生産性を高めることは生き残るための必須条件だが、効率化してむやみに人を減らせばいいわけではなく、人にしかできない部分を強化して新たな価値を生み出すことが必要だ。「もはや、価格の安さや料理のおいしさだけで勝負するのは厳しい時代。来店客にとって居心地のいい空間・雰囲気であったり、働いている人の印象の良さや魅力が他店との差別化となり、集客につながると言えるでしょう」と奥野氏は分析する。
では、そうした魅力ある人材をどう育成していくのか。ここでも、先述したグローイング・サイクル®が要となる。基準を示す、教える、要求する、評価するという4つの項目のサイクルを上手く回し続けることでスタッフを成長させることができ、なおかつ店のQSCレベルも上がる。その際、アルバイトスタッフ、チーフ、副店長、店長と、階層ごとにグローイング・サイクル®を回すことがポイントだ。
「グローイング・サイクル®の中で頑張りを認められ成長を実感すれば、モチベーションがアップし、離職を防ぐこともできます」と奥野氏は話す。自身が満足している職場であれば、積極的に友人や後輩を紹介したくなるだろう。結果、リファラル採用(社員から知人や友人を紹介してもらう採用手法)を含め、採用に困らない店づくりにもつながる。
コロナ禍において飲食店をめぐる状況は日々変化している。スタッフの満足度やモチベーションを向上させる取り組みを継続することが、不安定な時代を生き抜く店をつくるための最重要ポイントといえるだろう。
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