2024/12/11 コラボ企画

大東企業株式会社 北尾 拓也 氏が語る、人材不足問題解決の新手法

料理人として一人前になるには、厳しい修業に耐えなければならない、というイメージを払拭することで、人材不足を解決した企業がある。「個室会席 北大路」「個室居酒屋 番屋」など、日本料理の飲食店を国内外に29店舗展開する大東企業株式会社は、2022年「板前オープンスクール」を開講し、大東企業を支える人材、そして和食の未来を担う人材の育成に取り組んでいる。代表取締役社長の北尾 拓也 氏に話を伺った。

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※スマイラー105号(2024年10月)より転載

給料をもらいながら学べる学校

「寿司コースと和食コースの2コースあり、寿司は3カ月、和食は6カ月のカリキュラムです。実際の店舗の営業にも参加してもらって、現場での経験も積みながら、料理人としての基礎を学びます。昔の料理人の修業は、下働きからはじめて、見て覚えろ、というスタイルでしたが、ここではしっかりとカリキュラムを作って、料理長が直接教えます」。

古い職人は、料理長から直接学べるなんて夢のようだと思うかもしれない。修業中に料理長に接することさえ、昔は難しかった。「今と昔では、価値観が違います。変化が激しく、何ごとにもスピードが要求される現代は、昔のように時間をかけてしっかり学ぶという考え方をする人はあまりいません。早く学んで、早く一人前になりたい、そう思っている人が多いのではないでしょうか」。

板前オープンスクールの「寿司コース」指導の様子。現場での経験も積みながら3カ月のカリキュラムで料理人としての基礎を学ぶ

一時話題になった、短期間で寿司職人を養成する学校は、年々増えており、人気も高いという。修業をするのでなく、学んで一人前になるという考えの方が、今の人たちにはしっくり来るのだろう。

大東企業の板前オープンスクールがほかの寿司職人養成学校と違うのは、働きながら学ぶというところ。給料をもらいながら教えてもらえるのだ。スクール生は、いったん大東企業に入社する形になる。

しかし、カリキュラム終了後、他に就職したり、独立したりという選択肢は自由に選べる。普通の学校と同様に卒業後の進路は自分で決められる。しかし、約6割の生徒が大東企業に残るそうだ。「おかげで、今は新規採用などを考えなくても済んでいます」と北尾氏。

「とはいえ、まだスクールを作ってから2年ですから、結果が出るのはこれからと思っています。彼らが、大東企業を支える人材に、さらには和食の未来を創る人材に成長していくことを期待しています」。

板前オープンスクールの評判は良く、問い合わせも非常に多いという。しかし、先生の方が足らず、生徒数を急に増やすことはできないとも。昔気質の職人は、教えるのが苦手という人が多い。未経験者に教えることを面倒くさがってしまうようなところがある。しかし、スクールの先生を経験した職人は、教える楽しさがわかったのだろうか、積極的に取り組むように変化したという。自分が教えた若手が育っていくのを見るのは、それは大きな喜びだろう。面倒くさいと思っていたことが、実はとてもやりがいのある面白い仕事だったわけだ。先生をしたいという職人も、今後は増えていくのではないだろうか。

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生徒に現場経験をさせるための店舗

「GINZA SUSHI BANYA KAI」 の店内の様子。板前オープンスクールの生徒が現場経験を積むために準備された店舗であるため、お客様からは本格的な江戸前寿司のコースをリーズナブルに食べられると評判の人気店に

2023年1月に銀座にオープンした「GINZA SUSHI BANYA KAI」は、本格的な江戸前寿司のコースをリーズナブルに食べられると評判の人気店だ。実はこの店、板前オープンスクールの生徒が現場を経験できるようにと準備された店舗。だから価格が、通常よりも安い。生徒は仕込みなどを手伝うだけでなく、成長が早くスキルが身に付いた生徒は、カウンターに立って握ることもある。

「自分の握った寿司や、作った料理をお客様に提供して、おいしいなどと言われる体験は、料理人にとっては何よりうれしい。もっと学ぼうというモチベーションにもなる。向上心を高めるためにも、若手に出番を用意し、経験を積ませることはとても大切だと考えています」。

たとえば夜の営業だけしている、大東企業の店舗でランチ限定企画を開催し、その営業を若手に任せる。若手に、活躍の場を与え、やりがいを感じられる仕事をまかせる。そしてそれは、職人としての成長につながる。

2023年9月には、「SUSHI BANYA KAI 品川店」を出店し、スクール生や卒業生が経験できる場を増やした。寿司番屋グループの寿司居酒屋番屋も含めて、現在は3店舗を活用している。今後はさらに増やしていく予定だという。

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板前は世界で稼げる、夢のある職業

2015年にバンコクのトンローに海外1号店としてオープンした「バンコク 会席 北大路」。まるで日本にいるような庭園を臨むダイニングと9部屋の個室を備えた2階建ての一軒家で、本格会席料理を提供する

「和食ブームに乗って寿司や和食の職人は、いまや世界中で引く手あまたです。円安の現在は、むしろ海外の方が稼げます。うちで修業していた私の後輩は、ニューヨークで大成功して、高級車を乗り回しているそうです。だから、今は最初から海外を目指して板前修業している人も多いですよ。寿司や和食の職人は、海外で活躍でき、高所得も得られる夢のある職業だという認識が高まれば、目指してくれる人も増えるかもしれません。うちも、現在バンコクに出店していますが、さらに海外店舗を増やして、夢を膨らませられる企業になっていけたらなと思います」。

板前オープンスクールのカリキュラムや教育ノウハウは、海外出店でも外国人従業員も含めた現場教育に活かせると北尾氏は言う。「未経験者でもわかるように、技術を動画で見せたり、教材作りも工夫して試行錯誤しています。バンコクに出店したときに、これらの教材があれば、どんなに楽だったかと今は思いますね。食材管理の仕方から業務全般についてなど、教えることも多かったので、いろいろ苦労しました」。

コロナ禍では、老舗が閉店したり、ベテランの職人が飲食業から離れたり、という話は私たちもよく聞いた。北尾氏もそうしたニュースを聞き、蓄積した経験や技術が、失われていくのは問題だと考えた。和食文化の未来に関わる問題だからだ。

「だからベテラン職人の経験や知識、技術をいかに若い世代に伝えていくかを真剣に考えるようになりました。板前オープンスクールは、その答えの一つでもあります。料理の仕方だけでなく、和食店、寿司店を営業していく上でのさまざまな知識も含めて、次世代に伝えていく仕組みを作る必要があるんじゃないかと」。

飲食業は、人材が特に大切だ。他の職業と比べても経験が、モノをいうことが多い。しかし、その経験値を、若手に伝えていく方法は確立されていない。大手飲食チェーン以外では、マニュアルなどを準備するのは難しく、結局、いまだに自分で学んで体験して、経験値を増やしていくスタイルにとどまっている。だからなかなか人材が育たない。

「飲食業の、とくに和食店の人材不足は深刻です。その問題を解決することと、和食の未来はつながっています。人材を育てることは、まさに未来を創ることなんです」。

取材協力:大東企業株式会社
代表取締役 北尾 拓也 氏

住所:東京都千代田区鍛冶町1-5-6
https://www.daitohkigyo.com/
GINZA SUSHI BANYA KAI
SUSHI BANYA KAI 品川店


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