2012/08/28 特集

“カジュアルロープレ”で「接客力」アップ!

業態や店舗の性格にマッチした接客は、繁盛店の屋台骨。練習でできないことは本番でできない──短時間で気軽にできる“カジュアルロープレ”で、忘年会シーズンまでに接客力をワンランクアップさせよう。

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業態や店舗の性格にマッチした接客は、繁盛店の屋台骨。より理想の接客を目指すために、日常的なロールプレイングの導入を検討しているお店も多いだろう。練習でできないことは本番でできない──短時間で気軽にできる“カジュアルロープレ”で、忘年会シーズンまでに接客力をワンランクアップさせよう。

基本編|“ロープレ”とは?その意義と有用性

来店客の表情や空気を読む、「真のサービス力」を育成!

「今の若者はネットや携帯メールの普及に伴い、文章で情報発信する能力が向上した一方で、対人コミュニケーション力が弱い傾向にあります。接客のロールプレイング(以下、ロープレ)は、“理想の接客”への近道のひとつです」と話すのは、数多くの飲食店でスタッフ教育を手がけてきた白岩大樹氏だ。

日々、現場で直接指導するなか、気づいた点があるという。「若い新人スタッフは最初からOJT(On TheJob Training/実務経験を積みながら知識や技術を習得する方法)を行うのが厳しい。失敗を恐れがちで、人間観察力も高くないため、現場に配属すると、お客様の気持ちに沿わない自分本位のサービスで満足してしまうか、萎縮してしまいます。かといって本格的なロープレでは、より身構えてしまいます」。

そこで白岩氏がおすすめするのが、OJT以前の実践的な対策である“カジュアルロープレ”だ。「カジュアルロープレは朝礼中や、お客様の少ない時間にゲーム感覚で実施できるので、導入しやすいのが特徴です。目的はマニュアルに沿った接客よりも、お客様の微妙な表情やその場の空気を読み取る洞察力を養うこと。下に示した『3つの落とし穴』に注意しながら、反復に重点を置き、各スタッフの意識を改革、店舗全体の接客力アップを目指しましょう」。

【ロープレ3つの落とし穴】

1 「できる」けれど「伝えられない」
ロープレが得意でも、コツをほかのスタッフに伝えるのが苦手な人もいる。「できる」スタッフが「伝えられる」スタッフになるためには、筆記試験も行なって「知識&理由」も理解してもらうことが大切。

2 お客様を見なくなり、自分本位になりがち
ロープレ中、自分がうまく演じられているかどうかに意識が集中し、お客様の表情や行動を読むことがおろそかにならないようにする。必ず動画で記録を残し、自分で自分を客観的に見る癖をつけてもらう。

3 キッチンスタッフに「関係ない」と思われる
対お客様のロープレだけでなく、お迎えの「いらっしゃいませ」など、キッチンスタッフも含めた「声出しロープレ」も重要。キッチンの接客意識は、店全体の雰囲気やチームの連携力に直結するからだ。

準備編|“ロープレ”行う前の注意点、事前準備は?

気軽なノリとゲーム感覚で“日々反復”がキーワード

カジュアルロープレでは、スタッフに対して研修のイメージを与えない、いい意味での“ついでの感覚”や“軽いノリ”が重要です。あらたまった研修のイメージがあると、参加者に構えや抵抗が生まれ、長続きしないからです。

まずは下のような簡単なチェックシートを作成します。これは感想を述べ合い、点数をつける際の指標になるもの。最初はシーンを細かく設定し、3項目程度のポイントに絞り込みます。また、チェックシートの言葉は、スタッフが頭の中で暗唱できるよう、簡単なものを選びます。例えば、「お出迎え」なら、「満面の笑顔」「気持ちの良いいらっしゃいませ」「しっかりとしたお辞儀」の3項目。店舗で必要だと思われる項目や基準を考え、必要なチェックシートを作成してください。実施は朝礼やアイドルタイムなどを利用し、5分程度の短時間で構いません。

ところで、アルバイトやパートスタッフは重要な戦力でありながら、嫌なことがあるとすぐに辞めてしまう可能性も否めません。そのため、実施の前には「ロープレをなぜ行うか」という、事前の明確な理由付けが欠かせません。例えば、「ロープレはお客様に満足していただくための練習です。満足度があがれば、リピーターの獲得など、集客・売上増につながり、働ける日数や時間が増えたり、時給のアップなど、スタッフにも還元できると思います」と、説明します。あくまで「力を貸してください」と「お願い」し、「共に考えましょう」という姿勢が重要です。

実施にあたっては、お菓子を食べながらでも構いません。リラックスした雰囲気作りとゲーム感覚的な要素をうまく作り、短くてしかも楽しい時間を心がけること。カジュアルロープレで重要なことは継続と反復です。数カ月に1度の集中した1時間より、5分を12回実施するほうが、実は有効なのです。

ワンポイントアドバイス白岩流「スリーチェックシート」シーンごとに3つのポイントを設けて判断

チェックシートはシーンごとに用意し、内容、採点基準を記載。身に付きやすいよう、3つ程度のポイントに絞り込むのがコツ。
共通の採点基準に従って点数化することで、スタッフは注意点を客観的に理解できる。

アップ・トレンド・クリエイツ 代表
白岩大樹氏大学卒業後、板前として「日本料理なだ万」に勤務。「牛角」のSVを経て、2004年より株式会社OGMコンサルティングにて集客コンサルタントとして活躍。約300社に独自の集客法を説く。2009年アップ・トレンド・クリエイツを設立。理論や改善策等を伝えるだけでなく、「汗を流すコンサルタント」として、実際に担当飲食店の現場に入るスタイルをとり、様々な収益向上支援を行なう。

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