飲食店にとっての年間最大の繁忙期、忘年会シーズン。宴会が増えるこの時期に、重要なカギになるのがコース料理だ。予約獲得、集客アップのため、名物メニューを打ち出したり、コストパフォーマンを追求するなど、“すごい”コースを提供する店を紹介!
ここでしか食べられないインパクトある焼鍋コース
【東京・麻布十番】焼鍋 まつ岡
肉を焼きながら鍋を食べる。独自の味でファンを増やす
老舗と流行りの店が混在し、下町情緒と国際的な雰囲気が融合する東京・麻布十番。飲食店の激戦区でもあるこのエリアに立地する「焼鍋まつ岡」は、大阪で出合った焼鍋に惚れ込んだオーナーが、これを看板に据えて2009年にオープン。台湾生まれの焼鍋と、お得なコースで着実にファンを増やしている。焼鍋とは、銅鍋の真ん中の盛り上がった部分で焼いた肉と、周りの“堀”で作る野菜などが入った鍋を楽しむ料理で、スープに肉汁と野菜の旨みが溶け込むのが大きな特徴だ。
鍋のスープは、自家製豚骨スープとカツオ出汁をブレンドし、肉には、ゴマ油、塩、コショウ、ニンニク、ラー油で下味を付けている。焼き上がったら、生卵にしょうゆ、酢を混ぜ、好みで小ネギとおろしニンニク、さらに、魚介ベースの沙茶醤(サーチャージャン)を加えた特製の付けダレで味わう。「エスニックな味わいですが、意外とさっぱりしていて、肉や野菜をおかわりする方も多いです」と、店長の黒部一希氏。シメはラーメンか雑炊を選べ、8割がラーメンを選ぶ。
焼鍋は、「特選和牛」「米沢豚」「海鮮激辛」などの定番に、夏はトマト焼鍋、秋冬はキノコ焼鍋など、期間限定商品が加わり、それぞれの焼鍋を組み込んだコースも用意。忘年会シーズンを含む年間の一番人気は、「特選米沢豚焼鍋コース」(2時間飲み放題付き6,480円)だ。先付け、サラダ、人気のイカ団子、小籠包などに続いてメインの焼鍋を提供する構成で、肉は柔らかい山形県産米沢豚の肩ロース、鍋には野菜やキノコのほか、フカヒレ餃子、エビ団子なども加わる。「焼鍋はボリュームがあるので、それ以外は軽めの料理をチョイスしています」(黒部氏)と、看板メニューを存分に楽しんでもらう工夫をしている。また、焼鍋はスタッフが客席で調理。コンロに火を点けて、“堀”の部分にスープを注ぎ、鍋の中央が熱くなったら肉を豪快に乗せる。薄切りを何層にも重ねた肉は焼くのが難しく、「焦がさないように返しながら、すべての肉にほどよく火を通すことがポイント」と、黒部氏。初めて来店する人は、見たことがない鍋料理に興味津々で、肉を焼くスタッフの動きを動画で撮影する人もいる。
忘年会の販促は、周年記念月の11月に送付するDMや、来店客への口頭での案内が中心。落ち着いた雰囲気の内装や、カーテンで仕切れば半個室になる空間も好評で、接待のほか、少人数での宴会が多い。今年も忘年会をきっかけに店を知り、焼鍋のファンになってもらうことを期待しているという。
東京都港区麻布十番2-5-1 マニヴィア麻布十番5F
https://r.gnavi.co.jp/gae3800/
野菜の割合が異なるコースでヘルシー志向の女性をつかむ
【新潟・長岡】越後の台所すずきち
初来店客が多い忘年会は男性ファン獲得の機会にも
地元・新潟の食材を活かす飲食店を新潟県内に5店舗展開する「SUZUグループ」。そのなかで、野菜ソムリエ認定レストランとして、女性を中心に支持を集めているのが「越後の台所すずきち」だ。JR長岡駅から車で約10分の郊外にありながら、長岡市や新潟県内はもとより、県外から訪れる人も多く、女性が7~8割を占める。
こだわりの野菜は、契約農家4~5軒を中心に直接仕入れている。「料理長自ら毎週農園を訪れ、ときには収穫を手伝うことも。新潟の食文化を後世に残していくことを意識して、伝統的な食材や調理法に現代的なアレンジを加え、見た目もおしゃれで、若い人に響くメニュー作りを実践しています」と、店長の田辺光輝氏は話す。
そんな同店が用意しているコースは5種類。なかでも、野菜の割合が選べる3つの独創的なコースが特徴的だ。野菜・肉・魚のバランスがいい「台所コース」は、上司や男性も参加するビジネス層の宴会向きコースとして人気。野菜が多めの「大地コース」は女性中心のグループに、そして、野菜のみで構成される「農家コース」は、少人数の女子会でのオーダーが多い。3コース(すべて2時間飲み放題付き5400円)とも1年をとおして用意するコースで、季節によって内容を変更している。
宴会用コースというと肉や揚げ物などが多くなりがちだが、一緒に行く人や利用シーンによって野菜多めのコースを選べたり、一つひとつの料理に使われる野菜の量も多いため、“罪悪感”が少ない点が女性の支持を集める要因の1つだ。「味付けなどにアクセントをつけて、野菜でも満足感が得られるよう工夫しています」(田辺氏)。
さらに、「新潟の野菜はおいしいので無理に手を加える必要がありません。農家の方がおすすめする食材を信頼して仕入れ、最高の状態で出す。そうすればお客様も含め、ハッピーな三角関係ができますよね」と、田辺氏。旬の野菜が味わえる名物の「農園バーニャカウダ」は、3コースすべてに組み込み、忘年会シーズンの「大地コース」で提供する「旬野菜と妻有(つまり)ポークのせいろ蒸し」や、「雪下美人サムゲタン鍋」でも、たっぷりの野菜を使用している。
忘年会の販促としては、下見を兼ねてランチに来る人も多いため、会計時に声をかけてアピールするようにしている。また、宴会がきっかけで店を知り、その後、家族を連れてくる男性もいるという。10月の段階ですでに12月の週末は埋まり始めており、今年の忘年会は前年比110%の売上を狙う。
新潟県長岡市古正寺2-78
https://r.gnavi.co.jp/2m1grxaj0000/
当日予約が可能。柔軟な対応も売りの名物満載コース!
【福岡・天神】うまかもん酒場 月の花
コースごとの特色を明確に打ち出して宴会予約を促進
もつ鍋や水炊きなど、福岡の郷土料理が味わえる居酒屋として、繁華街・天神で15年にわたり親しまれる「うまかもん酒場月の花」。近隣のオフィスに勤めるビジネス層を中心に、普段使いから宴会、接待まで、幅広い用途で利用されている。オーナーの大平進氏は「このあたりでは、『安くておいしい』のは当たり前。他店と差別化を図るため、独自の名物料理を打ち出す必要がありました」と、当初からメニュー開発に力を入れてきた理由を語る。ラインナップは年々充実し、現在では、マグロのカマを天然塩で包んで焼く「特大まぐろのかま岩塩焼き」や、薄切りの牛肉と味噌を朴葉にのせて七輪で焼く「牛のほうば焼き」、甘辛い味付けが特徴の「秘伝手羽先唐揚げ」などが名物として定着。なかでも「まぐろのかま岩塩焼き」は、来店客が自ら金づちで塩を割る演出が受け、これを目当てに足を運ぶ人も多い人気メニューだ。
これらの名物をより強く印象付けるため、「月の花名物コース」(3時間飲み放題付き4500円)を通年で提供。「普段から提供する名物料理を組み合わせてコースに仕立てているので、食材の融通が利き、急な人数の変更にも対応しやすい。『名物をすべて味わいたい』というお客様のニーズに応えると同時に、店のオペレーションの面でもメリットは大きいですね」と、大平氏は説明する。来店2時間前までなら、当日の予約や人数変更も可能で、参加人数が直前まで確定できない宴会や、同窓会などに重宝されている。
そのほか、グランドメニューにはない料理を中心にした3時間飲み放題付きの「月コース」(4500円)や、「花コース」(5000円)もあり、旬の食材を使った月替わりの内容で人気が高い。この2コースの当日予約はできないが、前々日までに予約をすれば500円引きにな“早割サービス”も行っている。また、九州の郷土料理を盛り込んだ、3時間飲み放題付きの「博多とくとくプラン」(4500円)もあり、県外からのゲストを交えた宴会や接待などでの利用が多い。コースごとに「当日予約可」「早割」「郷土料理」と、特色やメリットを明確に打ち出すことで、シーンに合わせて選びやすく、今年の忘年会予約も好調だという。
忘年会をさらに盛り上げるサービスとして、希望者には大杯の貸し出しや、文字を書き込めるたすきのプレゼントなどを実施。リクエストに応じて、コースのシメをパスタに変えるなど、要望に対する柔軟な対応力も、リピーターの獲得につながっている。
福岡県福岡市中央区天神1-15-14 高木ビル1F
https://r.gnavi.co.jp/f041700/
ステーキ&クラフトビール31種が忘年会限定で食べ放題&飲み放題!
【東京・立川】County Clare ~カウンティクレア~
コースで売りを打ち出し店の魅力を印象付ける
JR立川駅から徒歩3分。ビル2階にあるのが、樽生クラフトビール31種をそろえる「カウンティクレア」だ。店長の赤羽昇太氏は、「2012年のオープン当初、料理はパブメニュー中心でしたが、食事のニーズも高かったため、徐々に増やしていきました」と話す。結果、今では食事をメインに来店する人も多いという。そして昨年、リニューアルでビールのタップ数をそれまでの約3倍の31にしたのと同時に、ピザ窯を導入するなど、さらに料理を強化した。
メニュー拡大の一環で2015年に開発した「US産アンガス牛ステーキ」は、今年から1ポンド(約450g3200円)での提供も開始。そして、忘年会に向け、よりインパクトのあるものを打ち出したいと考え、初めて「US産アンガス牛ステーキ」の食べ放題をコースに組み込んだ。3時間でステーキ食べ放題を含む料理に、クラフトビール全種などの飲み放題が付いて6000円。「クラフトビールと相性のよいステーキを、思いっきり楽しんでいただきたい」と、赤羽氏。ステーキ以外にも「フィッシュ&チップス」など人気メニューをそろえ、ボリューム満点だ。ステーキがどれだけ出るか未知数だが、レアの肉を熱々の鉄板で提供し、来店客が自分の好みの状態に仕上げるスタイルなので、オーダーから要する時間は10分程度。忙しいときのオペレーションにも大きな問題はないという。
このコースをぐるなびやSNSなどで告知し、評判は上々だという。ほかにも4種類の忘年会限定コースを用意。「忘年会で売りが並んだコースを利用して、店の魅力を知ってもらいたい。新規のお客様にどんどん来てほしいですね」(赤羽氏)と、期待は大きい。
東京都立川市曙町2-15-21 尾崎ビル2F
https://r.gnavi.co.jp/gahr700/
47都道府県の厳選日本酒が飲み放題。当日決まる料理も期待感を高める
【東京・荏原中延】日本酒専門居酒屋 かもすや酒店
希少酒も含め100種以上。好みの酒を好きなだけ!
オフィス街と繁華街が広がる東京・五反田から、私鉄で3駅の荏原中延(えばらなかのぶ)駅至近に立地。「五反田にいる人たちに、運賃を払っても来てもらう店になるために始めたのが、47都道府県の日本酒が飲み放題になるコース」と、店長代理の林泰州氏は語る。以来、唎酒師やスタッフが蔵元を回るなどして徐々に仕入れ先を拡大。今では希少酒も含め100~120銘柄を常備する。それを店内の冷蔵庫に並べて来店客が自由に選べるシステムで、客同士がお気に入りをおすすめし合う光景も珍しくない。
コース料理の基本は「おまかせ」。日本酒約100種の3時間飲み放題が付く、一番人気の「店長おまかせコース」(5400円)は、前菜・刺身・焼き物・揚げ物・煮物・シメの6品を、その日に入荷した食材を使って構成する。「料理の内容を決めないことで、その日のおすすめ食材を効率よく仕入れることができますし、当日使い切ることで、食材ロスも最小限に抑えられます」と林氏。常連には同じ料理を出さないように気を配り、「今日の料理は何?」と期待感を高めて、リピートを促進している。一方、事前のリクエストと苦手な食材・アレルギーにも対応。肉をメインにした構成も可能で、30代を中心としたビジネス層の集客に成功。週に数回通う、日本酒好きの常連もいる。
忘年会シーズンには、コースの中に鍋料理が入る。日によってアンコウ鍋だったりモツ鍋だったり、隣のテーブルで具材が違うこともあるという。10月末の時点で、すでに貸切宴会を中心に予約が好調。さらに、毎年の年末には常連を対象に、1年の感謝を込めた「謝恩会」を開き、集客とともに、絆を深める機会を作っている。
東京都品川区中延2-8-2 国見ビル2F