2019/02/12 特集

飲食店×生産者 食のプロ クロスインタビュー 前編(2ページ目)

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インパクトの強い野菜で主役級のヒットメニューに

米澤 露地ならではの特徴は、野菜の味わいの濃さや、甘みの強さで感じます。卸売業者からも並行して仕入れますが、久松さんの野菜は味のインパクトが強いので、メニューの主役に位置付けることが多いですね。ただ、僕は産地などを固定せず、いろいろな食材を使いたいタイプの料理人で、店として、メニュー全体のバランスをとっていくことも重要。基本的には作りたい料理のイメージに合わせて、その時々であらゆる食材の中から選ばせてもらっています。

食材の味に想いをプラスして、感動を生むのが僕たちの役目(米澤氏)

久松 使い手にとっては、食材の選択肢の幅があるほうがよいと思います。使う目的によって、よいものは違いますからね。もしトマトで、ジューシーさや柔らかさ、あっさり感を前面に出す料理が作りたいのであれば、うちのように関東の露地で育ったものは向かないでしょうね。

米澤 久松さんの野菜は旨みが濃くて力強いですからね。だからこそ、作りたい料理のイメージと、久松さんの野菜がぴったり合ったときには、ほかでは食べられないと、自信を持って言えるメニューができます。

 例えば、秋~冬にオンメニューしていた「カリフラワーのステーキ」。久松農園の大ぶりのカリフラワーを強火でグリルして旨みを閉じ込め、数種のスパイスを合わせた料理ですが、これが予想以上に大好評で、ヒットメニューになりました。ステーキの付け合せに欠かせない「マッシュポテト」も、久松さんのジャガイモで作ると、何ともいえない滑らかさが出るんです。いずれも、牛肉に引けをとらない料理です。

久松 あのジャガイモは、6月の収穫後、半年間貯蔵して出荷したものです。貯蔵によって水分が抜けると、より甘みが増して、食感も変わってくるんです。

米澤 そうですね。新ジャガとはまったく別物でした。それから最近では、ホウレンソウのソテーもヒットでしたね。葉と茎のソテーに、同じ時間だけ茹でた根を加えてみたのですが、根の甘さに感動して、「今日食べた料理の中で一番おいしかった」と言ってくれた方もいたくらいです。このホウレンソウのように、根や皮などを使うメニューの場合は、必ずサーブする際に説明しています。何も言わなければ、根が入っていることが付加価値にはならないですからね。

「キャベツというのはおもしろい生き物で、芯の上の中心部分から成長に伴って葉が展開し、大きくなります。つまり発芽して5カ月のキャベツなら、外葉と内葉には5カ月の年齢差があるわけです」(久松氏)。「内側の柔らかく甘い葉と、外側の食べ応えのある葉、それぞれのよさを活かす調理法がいいですよね」(米澤氏)
「久松農園のキャベツのロースト」。大ぶりにカットしたキャベツをフライパンとオーブンで加熱し、塩、砂糖で漬けたレモン、フェンネルシード、チポトレ(燻製唐辛子の香辛料)風味のポップコーンなどを合わせた。「久松さんのキャベツ特有の甘み、外葉の味の濃さに、ハーブやポップコーンの食感も加わり、様々な味が楽しめる一皿です」(米澤氏)

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