「年商2億円のガーリックトースト」
大衆酒場レインカラー(東京・学芸大学)
メニュー表を作るとき、飲食店が名づける”メニュー名”。ぜひとも注文してほしい自慢の料理にひとひねりしたメニュー名を付けたことで、初めて訪れる客にも確実に注文され、狙いどおり、愛され続ける看板メニューにした店があるという。
東京・学芸大学にある繁盛店「大衆酒場レインカラー」の人気メニュー「年商2億円のガーリックトースト」を、週末の酒場巡りが趣味というフードライター・桑原恵美子氏が紹介。その名前だけでなく見た目に驚き、食べ方にも戸惑う、インパクト抜群なメニュー開発のヒントを探る。
訪れた飲食店を紹介している個人ブログ:
https://ameblo.jp/amaguri0111/theme-10066247104.html
・グルメ激戦区の学芸大学で、大繁盛している“大衆酒場”
・出てきた瞬間パニックに!?「年商2億円のガーリックトースト」
・由来は、飛ぶように売れた巨大ガーリックトースト
・“学大ツアー”を楽しむ客のニーズに応えたい
グルメ激戦区の学芸大学で、大繁盛している“大衆酒場”
「飲食店の最新トレンドを知りたければ、学芸大学へ」――外食産業関係者の間でそうささやかれるほど、個性豊かな飲食店が次々にオープンし、にぎわっている学芸大学。そんなグルメ激戦区・学芸大学を代表する繁盛店として知られるのが、2019年9月20日にオープンした「大衆酒場レインカラー」だ。
「大衆酒場レインカラー」があるのは、学芸大学駅西口からのびる商店街の裏路地で、人気の飲食店が集まるエリア。入り口の間口ぎりぎりまで大きなコの字型カウンターが設けられていて、さらに立ち飲みカウンターを手前両サイドに配置しているため、通りからも店内のにぎわいと熱気が感じられる仕掛けになっている。筆者も初めて訪れた時は、すでにすき間なく客が入っていて、入り口がどこかわからず右往左往した記憶がある。
出てきた瞬間パニックに!?「年商2億円のガーリックトースト」
入店して真っ先に頼んだのが、ネットでその名を知り、気になっていた「年商2億円のガーリックトースト」(590円)だった。実際はどんなものかと思ったら、出てきて驚いた。
フランスパン1/4本分に、こぼれるほどの大量のニンニクペーストが盛られている。手で支えていないと倒れてしまう高さで、いったいどうやって食べればいいのか途方にくれていると、スタッフが「割り箸でニンニクを中に押し込んでください。食べにくいようでしたらカットしますので、おっしゃってください」と教えてくれた。
中心から外側に向かって押すのがコツとのことで、そのとおりにすると、大量のニンニクペーストをパンの中になんとか押し込めることができた。ワイルドにかぶりついて食べたい気持ちはやまやまだったが(絶対にそのほうがおいしく感じると思うので)、食べやすさをとって、やはりカットしてもらうことにした。
ビジュアルや食べ方にも驚いたが、食べてみてさらに驚いた。ニンニクのあの匂いや辛みが皆無で、とろける食感と濃厚な甘みは、まるで飴色に炒めたタマネギのよう。聞けばニンニクを低温でゆっくり揚げた後、バターと塩でじっくり煮ているのだとか。低温で揚げることでニンニクの持つ辛みが消えて、大量でも食べやすくなるのだそう。
フランスパンのほどよい塩気、バターのコク、火が通ったニンニクの甘みが一つになって、食べ始めると止まらない。猛烈にワインが欲しくなる味で、この一皿で、ワインを1本軽く空けられそう。ある意味、恐ろしいガーリックトーストだ。
さて、このガーリックトーストはどのように誕生したのか。なぜ「年商2億円」なのか。
由来は、飛ぶように売れた巨大ガーリックトースト
店主の手島義朋氏によると、この料理は以前働いていた“年商2億円の店”で一番人気だったガーリックトーストをアレンジしたものだそうで、そんなところからメニュー名を付けてみたという。「外国人客がほとんどの店でしたので、1人に1本分のフランスパンを使っていました。飛ぶように売れて、1日に130本のフランスパンを仕入れていましたね」(手島氏)。
手島氏は1976年生まれで茨城県出身。学生時代はデザインを専攻し画家を志していたが、当時、日本では知られていなかったセカンドウェーブコーヒーに魅せられ、バリスタの草分けとして知られる野崎晴弘氏が学芸大学に開いたイタリアンバール「Lo SPAZIO」に入店する。そこでバリスタとして腕を磨いた後、学芸大学の古着&バー「レインカラー」を任されることになり、独立して自然派ワインの店「ワイン食堂レインカラー」を2005年にスタートさせる。
まだその存在が広く知られていない分野の魅力を感じ取るセンスと嗅覚は、やがて料理にも反映された。評判の店を食べ歩いては帰ってすぐにその料理を再現するという修練を積み重ね、やがてジビエを中心とした繊細かつダイナミックな “手島流” 料理が生まれて、熱心なファンがつくようになる。
順風満帆に見えた手島氏に衝撃を与えたのは、ある客からの「普段使いとしてはちょっと値段が高い」という言葉だった。「自分がやりたいことを単に足していった結果、価格が高くなって、お客様のニーズと乖離(かいり)してしまっていたことに気付いたんです」と当時を振り返る。
“学大ツアー”を楽しむ客のニーズに応えたい
そこで目指したのは「大衆酒場」。学芸大学では、居酒屋を何軒もはしごする「学大ツアー」なる飲み方が流行しており、軽くつまめる低価格の料理が求められる傾向が強くなっている。かつて自分が、新しい食カルチャーに魅せられたように、食体験が豊富な今の若い世代にも新しい食体験を提供できるような店、“新しい大衆食堂”を作りたいと考え、ハイクオリティーで斬新なメニューを千円以下の手ごろな価格で食べられるようにしたという。
例えば「2年熟成ジャガイモ アンチョビじゃがバター」(490円)。一般的なじゃがバターと違い、ジャガイモを覆い隠すほどのサイズのバターが厚切りで置かれ、さらにそのバターが見えなくなるほど大きなフィレのアンチョビをトッピングしている。「バターを大きくしているのは、溶ける前の冷たい状態でアンチョビ、ジャガイモと一緒に味わってほしいからです」(手島氏)。
確かに、冷たいバターを「かじる」ように食べると、口の中で溶けて他のものと一体化するダイナミックな味の変化に感動する。しかもジャガイモは熟成されているので、ねっとりと濃密な食感で、サツマイモのような甘さ。このぜいたく極まりない料理がたった490円とは…!
アンテナを高くして時代が求める食の楽しさを感じ取りながら、そこに”おいしさ”と“自分がやりたいこと”を投影させていく…。グルメの超激戦区の学芸大学で不動の人気を維持しているのは、手島氏のそんな時代を読むセンスと柔軟さの賜物なのだろう。
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