「ルーロー飯」
「MEILI(メイリー/美麗)」(東京・下高井戸)
豚肉を刻んで甘辛く煮込み、煮汁ごとご飯にかけた「魯肉飯(ルーローハン)」は、台湾の代表的な郷土料理。日本でも2015年前後からブームになり、その濃厚さとボリュームが人気です。一方、八角を中心とした個性の強いスパイスの風味や味の濃さ、油っぽさから、苦手に感じる人も…。でも、そんな人でも食べたくなる、ここにしかない「ルーロー飯」を目当てに通う常連が絶えないお店があるといいます。
今回は週末の酒場巡りが趣味というフードライター・桑原恵美子さんが、「MEILI(メイリー/美麗)」(以下、「MEILI」)の「ルーロー飯」を紹介。ルーロー飯があまり得意ではなかった筆者を感動させた理由を探ります。
訪れた飲食店を紹介している個人ブログ:
https://ameblo.jp/amaguri0111/theme-10066247104.html
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目次
・日本では珍しい、台湾産コーヒーの専門店
・「MEILI」の看板商品「ルーロー飯」
・シングルオリジンの台湾コーヒーに魅せられて
日本では珍しい、台湾産コーヒーの専門店
「MEILI」があるのは、京王線・世田谷線の下高井戸駅から徒歩2分ほどの商店街の一角。客層は圧倒的に女性が多く、百貨店などで行われる台湾フェア・イベント出店で「MEILI」を知り、ファンになった人が遠方からも訪れてくれるのだとか。
このお店を知ったのは、オープンして間もない2020年のこと。「日本ではほぼ知られていない台湾産のコーヒーが飲める店がある」という噂を聞きつけ、取材させてもらったのがきっかけです。その時、初めて味わう台湾産コーヒーとともに衝撃を受けたのが、フードのおいしさでした。
「MEILI」の看板商品「ルーロー飯」
特に私が驚いたのが、「ルーロー飯」です。どちらかというと男性が好む“野郎メシ”のイメージが強く、積極的に頼みたいメニューではありませんでした。ところがたまたま友人とこの店を訪れた時、友人が頼んだ「ルーロー飯」をひとくち分けてもらって、その味わいの奥深さと食べやすさに、びっくりしたのです。
一目見て驚いたのは、その華やかさ。色鮮やかな季節の野菜の台湾風漬物や、アグレッテイ(イタリアのオカヒジキ)、ゆで卵と、これでもかというほど乗っています。薬膳スープは複数の鶏の部位を時間をかけて煮出し、野菜や生薬に使われる当帰(セリ科)・草菓(ショウガ科)などとともに煮込んで凝縮していて、飲むだけで体調が整いそうな滋味深い味わいです。
そしてメインのルーローは、箸で持ち上げるのは難しいほどのやわらかさ。スプーンで口に入れると力強いうま味とともに、パンチのある多層的なスパイスの風味と異なる食感が重なり、「これは何だろう?」と確かめるために、さらにもう一口、もう一口。コクがあるのに不思議なほどしつこさがなく、するすると入っていきます。白いご飯に絶妙に合うのはもちろん、いくらでもお酒が進んでしまいそうな危険な味です。
それもそのはず、今回の取材で、店主の小山 立(りゅう)さんからお聞きして初めて知ったのですが、「そこまでするか!」とツッコミたくなるほど、手間と時間をかけた作り方だったのです。
ルーローは、開店以来、何度も作り方を見直して進化させているメニューのひとつ。最近の変化では、オーブンでの焼き時間を伸ばして表面がカリッとするまで焼き込んで、香ばしさをプラスしていますし、逆に煮込み時間は、口の中に入れた時にコラーゲンが溶けていく感覚や食感を楽しめるようにしたいと考え、少し短めにしているそうです。煮込む過程で出てくる脂は丁寧に取り除いてさっぱりと仕上げていますが、取り除いた油分にはルーローならではの風味とうま味が溶けだしているので、カレーや麻婆豆腐を作る際の香味油に使用しています。
小山さんは、「MEILIのルーロー飯は台湾の味そのままを追求しているわけではない」と言います。「正直、台湾でもルーローの味は店の数だけありますし、安くておいしいルーロー飯がたくさんあります。でも日本の食材や調味料を使い、日本で食べていただくからには、それに見合った味を目指したいと思いました」(小山さん)。でも不思議なことに、近所に住む台湾の方からは「自分の故郷のルーロー飯の味そのまま」と言われたことがあるとか。
前から「このおいしさとボリュームで1,000円は安い」と思っていましたが、これだけ手間と時間をかけ、多くの食材を使っていることを今回の取材で知り、なんだか申し訳ない気持ちになりました…。
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シングルオリジンの台湾コーヒーに魅せられて
店主の小山さんが2020年に「MEILI」をオープンさせたのは、29歳の時。そのきっかけは、台湾で農業体験ボランティアをした時に、台湾茶のようにまろやかで驚くほど澄んだ味わいの台湾産コーヒーに出合い、大きな衝撃を受けたことです。
2018年から日本で台湾コーヒーのPR活動を始めましたが、台湾コーヒーは他のコーヒー生産国と比べると作付面積が小さく価格が高いため、どこに持ち込んでも「この価格では商売にならない」と断られ続けたとか…。それでもあきらめず、少しでも売値を安くするために手網焙煎器を使って自分で焙煎をして、イベントなどで試飲してもらい手売りしながら、台湾コーヒーの魅力を伝え続けました。「イベントの時は連日、何キロも焙煎し続けて、手首が折れるかと思ったことも多々あります(笑)」(小山さん)。「MEILI」は、そんな小山さんの苦労と、台湾コーヒー愛が結実したお店なんですね。
スイーツで人気の「ガトーショコラ」に使用しているカカオは、台湾で最も古いカカオ農園「邱氏珈琲巧克力(キュウシコーヒーチョコレート)」から自家輸入し、お店で焙煎したもの。厨房でカカオの皮を剥いて粉砕し、3日間練り上げたチョコレートから作る、手の込んだスイーツです。台湾カカオはフルーティーでブランデーやワイン、ウイスキーのような風味があるのが特徴で、お酒を使ったような大人の味わいがします。
小山さんはお店を営む傍ら、頻繁に台湾を訪れ、信頼できるコーヒー農園やカカオ農家を探し歩いて日本の関係者に売買の仲介をするビジネスにも携わっています。それは、台湾で出合ったコーヒー・カカオ農園の高い発酵技術や丁寧な仕事を、少しでも日本人に知ってほしいという思いからです。
このお店の全てから、小山さんの台湾の人々への感謝とリスペクトが感じられます。そこから生まれる癒やしも、このお店のルーロー飯の特別なおいしさの理由のひとつのような気がしています。
MEILI(メイリー/美麗)
業態:台湾カフェレストラン(台湾料理とスイーツ・台湾コーヒー)
席数:テーブル16席、テラス席ベンチは犬同伴可
客単価平均:1,500円
客層:20~40代女性
テイクアウト、台湾茶・コーヒー・雑貨・小物販売あり
アクセス:京王線下高井戸駅西口 徒歩1分
営業時間:11:00〜19:00(L.O18:30)、定休日なし(不定休)
https://r.gnavi.co.jp/bgapxnpt0000/map/
https://www.instagram.com/meilicoffee/