常連客がリピートしまくる「ルーロー飯」!下高井戸「MEILI」ここにしかない特別な味

台湾カフェレストラン「MEILI」のメニューは、全て丁寧な手仕込み。2020年1月オープンから4年、看板料理「ルーロー飯」のファンは多く、リピーターが絶えない人気ぶり。聞くと、探求心の強い店主は「ルーロー飯」の調理法を開店以来、幾度も見直して進化させているのだとか。ここにしかない味と言わせる料理はどのように生み出されているのか、直接教えていただきました。

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「ルーロー飯」

「MEILI(メイリー/美麗)」(東京・下高井戸)

「ルーロー飯」(薬膳スープ付き)(1,000円)

豚肉を刻んで甘辛く煮込み、煮汁ごとご飯にかけた「魯肉飯(ルーローハン)」は、台湾の代表的な郷土料理。日本でも2015年前後からブームになり、その濃厚さとボリュームが人気です。一方、八角を中心とした個性の強いスパイスの風味や味の濃さ、油っぽさから、苦手に感じる人も…。でも、そんな人でも食べたくなる、ここにしかない「ルーロー飯」を目当てに通う常連が絶えないお店があるといいます。

今回は週末の酒場巡りが趣味というフードライター・桑原恵美子さんが、「MEILI(メイリー/美麗)」(以下、「MEILI」)の「ルーロー飯」を紹介。ルーロー飯があまり得意ではなかった筆者を感動させた理由を探ります。

桑原 恵美子
フードライター。十数年間にわたり、新聞社系の媒体で大手チェーン飲食店や新オープンの商業施設の飲食店、食品メーカーを中心に取材。ぐるなび媒体「dressing」でも100軒以上の飲食店を取材。「ラクなのに美味しい 驚異の弱火調理法」(三空出版)など料理レシピ本の構成にも携わる。
訪れた飲食店を紹介している個人ブログ:
https://ameblo.jp/amaguri0111/theme-10066247104.html

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目次
日本では珍しい、台湾産コーヒーの専門店
「MEILI」の看板商品「ルーロー飯」
シングルオリジンの台湾コーヒーに魅せられて

日本では珍しい、台湾産コーヒーの専門店

「MEILI」入り口は少し奥まっており、ひさしとなる部分の下にベンチシートを設置。テラス席としてペット同伴の客も利用できる
  • 素朴で温かな雰囲気の店内。床や壁、テーブル、椅子はすべて店主とスタッフの手作りで、スケルトンの状態から3カ月ほどで完成させた
  • お店に入ると出迎えてくれる、大人気の看板犬・豆花(ドウファ)ちゃん

「MEILI」があるのは、京王線・世田谷線の下高井戸駅から徒歩2分ほどの商店街の一角。客層は圧倒的に女性が多く、百貨店などで行われる台湾フェア・イベント出店で「MEILI」を知り、ファンになった人が遠方からも訪れてくれるのだとか。

  • 店奥の壁に書かれた店名「美麗/Meili」は、店主のおばあさまの揮毫(きごう)
  • 台湾関連の本は、店内で購読可。台湾好きにはうれしいサービス

このお店を知ったのは、オープンして間もない2020年のこと。「日本ではほぼ知られていない台湾産のコーヒーが飲める店がある」という噂を聞きつけ、取材させてもらったのがきっかけです。その時、初めて味わう台湾産コーヒーとともに衝撃を受けたのが、フードのおいしさでした。

ドリンクメニュー(左)とフードメニュー(右)。生産量、流通量の少ない希少な台湾コーヒーが、台南、南投、嘉義など産地別に楽しめるうえに、台湾料理、台湾スイーツもカフェとは思えない本格的なものばかり

「MEILI」の看板商品「ルーロー飯」

特に私が驚いたのが、「ルーロー飯」です。どちらかというと男性が好む“野郎メシ”のイメージが強く、積極的に頼みたいメニューではありませんでした。ところがたまたま友人とこの店を訪れた時、友人が頼んだ「ルーロー飯」をひとくち分けてもらって、その味わいの奥深さと食べやすさに、びっくりしたのです。

「MEILI」の看板商品で、開店以来進化し続けている「ルーロー飯」(薬膳スープ付き)。トッピングの台湾風漬物は、ルーローの口直しにぴったり

一目見て驚いたのは、その華やかさ。色鮮やかな季節の野菜の台湾風漬物や、アグレッテイ(イタリアのオカヒジキ)、ゆで卵と、これでもかというほど乗っています。薬膳スープは複数の鶏の部位を時間をかけて煮出し、野菜や生薬に使われる当帰(セリ科)・草菓(ショウガ科)などとともに煮込んで凝縮していて、飲むだけで体調が整いそうな滋味深い味わいです。

ルーローはつやつやで、トロトロ。豚肉のブロックが、どうしたらとろけるようにやわらかくなるんだ⁉ と驚く

そしてメインのルーローは、箸で持ち上げるのは難しいほどのやわらかさ。スプーンで口に入れると力強いうま味とともに、パンチのある多層的なスパイスの風味と異なる食感が重なり、「これは何だろう?」と確かめるために、さらにもう一口、もう一口。コクがあるのに不思議なほどしつこさがなく、するすると入っていきます。白いご飯に絶妙に合うのはもちろん、いくらでもお酒が進んでしまいそうな危険な味です。

それもそのはず、今回の取材で、店主の小山 立(りゅう)さんからお聞きして初めて知ったのですが、「そこまでするか!」とツッコミたくなるほど、手間と時間をかけた作り方だったのです。

  • 味のベースは、醤油に長時間漬け込んで抽出した干しシイタケのうま味成分
  • 自家製の五香粉には、シナモン、八角、黒胡椒、白胡椒、クローブ、カルダモン、千里香、青花椒、ローレル、カラトウキなど18種類のスパイスを使用。全て炒めて香りを出した後に挽いている
  • 高温のオーブンでカリッと表面だけ焼きつける
  • 焼いた肉をカット。豚肉は噛みごたえのあるうで肉の他に、複数の部位を使用することで、食感やうま味を複雑にしている
焦がしてカラメル化させた砂糖を混ぜ込んで煮込むことで苦味成分をプラスし、コクとうま味をより複雑に増幅。ショウガ、バラ、花梨、キンモクセイ、台湾茶などを加えて風味を付けながら、煮込む

ルーローは、開店以来、何度も作り方を見直して進化させているメニューのひとつ。最近の変化では、オーブンでの焼き時間を伸ばして表面がカリッとするまで焼き込んで、香ばしさをプラスしていますし、逆に煮込み時間は、口の中に入れた時にコラーゲンが溶けていく感覚や食感を楽しめるようにしたいと考え、少し短めにしているそうです。煮込む過程で出てくる脂は丁寧に取り除いてさっぱりと仕上げていますが、取り除いた油分にはルーローならではの風味とうま味が溶けだしているので、カレーや麻婆豆腐を作る際の香味油に使用しています。

小山さんは、「MEILIのルーロー飯は台湾の味そのままを追求しているわけではない」と言います。「正直、台湾でもルーローの味は店の数だけありますし、安くておいしいルーロー飯がたくさんあります。でも日本の食材や調味料を使い、日本で食べていただくからには、それに見合った味を目指したいと思いました」(小山さん)。でも不思議なことに、近所に住む台湾の方からは「自分の故郷のルーロー飯の味そのまま」と言われたことがあるとか。

前から「このおいしさとボリュームで1,000円は安い」と思っていましたが、これだけ手間と時間をかけ、多くの食材を使っていることを今回の取材で知り、なんだか申し訳ない気持ちになりました…。

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シングルオリジンの台湾コーヒーに魅せられて

店主の小山 立さん

店主の小山さんが2020年に「MEILI」をオープンさせたのは、29歳の時。そのきっかけは、台湾で農業体験ボランティアをした時に、台湾茶のようにまろやかで驚くほど澄んだ味わいの台湾産コーヒーに出合い、大きな衝撃を受けたことです。

店奥のカウンターに、台湾のコーヒー豆が並ぶ。写真は台南 東山産の「SINGLE ORIGIN COFFEE」
6種類から選べる「台湾コーヒー」(750円~)。器はガラスポット+台湾茶の茶碗、またはマグカップから選べる

2018年から日本で台湾コーヒーのPR活動を始めましたが、台湾コーヒーは他のコーヒー生産国と比べると作付面積が小さく価格が高いため、どこに持ち込んでも「この価格では商売にならない」と断られ続けたとか…。それでもあきらめず、少しでも売値を安くするために手網焙煎器を使って自分で焙煎をして、イベントなどで試飲してもらい手売りしながら、台湾コーヒーの魅力を伝え続けました。「イベントの時は連日、何キロも焙煎し続けて、手首が折れるかと思ったことも多々あります(笑)」(小山さん)。「MEILI」は、そんな小山さんの苦労と、台湾コーヒー愛が結実したお店なんですね。

小麦粉を一切使わず焼き上げた「台湾産カカオの贅沢生ガトーショコラ」(アイス付き)(650円)は、生チョコレートのようなリッチな食感と、お酒が入っているかのような台湾カカオ特有の風味。アイスクリームは日替わりで、取材当日は「洋梨とレモンカード」

スイーツで人気の「ガトーショコラ」に使用しているカカオは、台湾で最も古いカカオ農園「邱氏珈琲巧克力(キュウシコーヒーチョコレート)」から自家輸入し、お店で焙煎したもの。厨房でカカオの皮を剥いて粉砕し、3日間練り上げたチョコレートから作る、手の込んだスイーツです。台湾カカオはフルーティーでブランデーやワイン、ウイスキーのような風味があるのが特徴で、お酒を使ったような大人の味わいがします。

小山さんはお店を営む傍ら、頻繁に台湾を訪れ、信頼できるコーヒー農園やカカオ農家を探し歩いて日本の関係者に売買の仲介をするビジネスにも携わっています。それは、台湾で出合ったコーヒー・カカオ農園の高い発酵技術や丁寧な仕事を、少しでも日本人に知ってほしいという思いからです。

このお店の全てから、小山さんの台湾の人々への感謝とリスペクトが感じられます。そこから生まれる癒やしも、このお店のルーロー飯の特別なおいしさの理由のひとつのような気がしています。

ルーローを使用した「麻婆豆腐飯」(薬膳スープ付き・中辛)(1,200円)は、「ルーローも食べたいけど麻婆豆腐も」という時のおすすめ
アルコールの提供もある。写真は、台湾で最も飲まれている「台湾ビール 金牌」(写真左/650円)と、台湾のクラフトビール「ダークハニーエール」(同中央/800円)、「ハニーレモンラガー」(同右/800円)。他に「カバランウイスキー(ハイボールorお湯割り)」(800円)もラインナップ
【店舗Data】
MEILI(メイリー/美麗)
業態:台湾カフェレストラン(台湾料理とスイーツ・台湾コーヒー)
席数:テーブル16席、テラス席ベンチは犬同伴可
客単価平均:1,500円
客層:20~40代女性
テイクアウト、台湾茶・コーヒー・雑貨・小物販売あり
住  所:東京都世田谷区赤堤4-45-17 鈴木ビル1F
アクセス:京王線下高井戸駅西口 徒歩1分
営業時間:11:00〜19:00(L.O18:30)、定休日なし(不定休)
https://r.gnavi.co.jp/bgapxnpt0000/map/
https://www.instagram.com/meilicoffee/