学芸大学「有縁(うえん)」きんぴらとおからに大感動!ど定番に新しさを吹き込む技とは

2024年11月、居酒屋の激戦区・学芸大学に誕生した「有縁(うえん)」。オープンから間もなく、日本酒好きの間で“知る人ぞ知る店”として話題を呼んでいます。全国の酒蔵を訪ね歩く店主の深い日本酒愛が生み出す珠玉の酒肴。その魅力に迫ります。

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季節の「きんぴら」と「おから」

「牛ごぼうきんぴら 山椒」(写真左/700円)、「黒舞茸 ベーコン おから」(同右/550円)

多くの人にとって、「料理に合わせてお酒を選ぶ」のが一般的かもしれません。けれど、日本各地の酒蔵を訪ね、造り手と語り合って選び抜いた日本酒に合わせて料理を考え、定番の一皿に季節感を添える――そんな逆転の発想で人気を集めている店があります。

今回は、週末の酒場巡りが趣味のフードライター・桑原 恵美子さんが、純米酒と小料理の酒場「有縁」を訪問。日本酒に寄り添わせ、ど定番の「おから」と「きんぴら」に季節の息吹を吹き込んだ、この店ならではの逸品を紹介します。

桑原 恵美子
フードライター。十数年間にわたり、新聞社系の媒体で大手チェーン飲食店や新オープンの商業施設の飲食店、食品メーカーを中心に取材。ぐるなび媒体「dressing」でも100軒以上の飲食店を取材。「ラクなのに美味しい 驚異の弱火調理法」(三空出版)など料理レシピ本の構成にも携わる。
訪れた飲食店を紹介している個人ブログ:
https://ameblo.jp/amaguri0111/theme-10066247104.html

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有縁(東京・学芸大学)

【店舗Data】
有縁(うえん)
業態: 小料理店
席数: 9席(カウンター席)
客単価:8,000~1万円
客層:30代以上 男女比4:6
女性の一人客も多い
住  所:東京都目黒区碑文谷6-6-6 GAKUDAI COLLECTIV C-2
アクセス:東急東横線学芸大学駅西口徒歩5分
営業時間:火~金曜日17:00~23:00、土・日曜日・祝日13:00~23:00
定休日:月曜日、第2・第4火曜日
https://www.instagram.com/uengakudai/

目次
純米酒と小料理を愉しむ、小さな酒場
酒呑みのための特別な「きんぴら」「おから」
酒蔵巡りから店づくりまで――二人が描く“有縁”の世界

純米酒と小料理を愉しむ、小さな酒場

「有縁」があるのは、学芸大学の高架下にできた話題のスポット「GAKUDAI KOUKASHITA」の一角。その中でも、焼き物のアトリエなどのアートスペースや、小さくてユニークな飲食店が集まる、個性豊かな新エリア「GAKUDAI COLLECTIV」内に、2024年11月30日オープンしました。

「GAKUDAI COLLECTIV」内でも碑文谷(ひもんや)寄りの一角で、学芸大学駅西口から徒歩5分のところ。力強いロゴが描かれた白いのれんが目印
店内は茶室をイメージした静謐(せいひつ)な雰囲気。壁には、内装を手がけたヒラマツグミ一級建築事務所の拠点・淡路島の土と、酒米の稲を連想させる稲藁(わら)を組み合わせている。カウンターは、日本酒の「米を磨く」という発想から生まれた研ぎ出し仕上げ。店名の通り、“縁”を大切にする思いが随所に感じられる(Photo by 有縁・石川氏)
神無月(10月)のお品書き。一番人気は、8品程度の肴を少量ずつ味わえる「お食事おまかせ」(5,800円)。予約客のほとんどが、このコースを選ぶ

「有縁」の料理は、奇をてらわない定番ながら、家庭料理とは一線を画す冴えたアレンジが特徴です。店名のとおり、この店が生まれるまでに縁があったさまざまな食材や調理法を取り入れることで、味わいに深みを与えています。

日本酒のメニューも用意されていますが、日本酒にこだわる店ならではの楽しみとして、好みの日本酒の傾向を伝えると店主の蝶野 慶一さんがそれに合う料理とのペアリングを考え、お酒を選んでくれます。明確なルールがあるわけではありませんが、このスタイルが一番お酒も料理もおいしく味わえる方法として、自然にお客様の間に定着しているようです。

酒呑みのための特別な「きんぴら」「おから」

品書きは季節により変わりますが、おまかせコースの序盤に出されるのが、季節の「きんぴら」と「おから」です。

料理は小皿で1人前ずつ供される

「牛ごぼうきんぴら 山椒」

「牛ごぼうきんぴら 山椒」

「『根菜と浅利のきんぴら』や『桜海老の塩きんぴら』など、季節に合わせて食材を変えていますが、『牛ごぼうきんぴら 山椒』が登場してからはあまりに人気で、なかなか変えられないんです…」と蝶野さんは苦笑します。それもそのはず、その味わいは居酒屋や家庭のきんぴらとは似て非なる、まさに”酒呑みのための特別なきんぴら”なのです。

運ばれてきてまず驚くのは、ゴボウの繊細な細さ。口に含むと、まるで山椒そのものを食べているような香りと風味が広がります。塩漬けの山椒を使用しているので、舌を刺すような刺激はなく、一粒噛むたびに口の中を爽やかな風が吹き抜けるよう。ゴボウや牛肉のうま味と穏やかに調和しつつ、やさしく食欲をかきたて、お酒がすすむ最高の酒肴です。

食べ終わっても、小皿の底にはゴボウと牛肉の香りをまとった山椒がたっぷり。それを一粒ずつつまみながら、周囲の日本酒談義に耳を傾け、また一献…。このひとときがたまりません。

「黒舞茸 ベーコン おから」

「黒舞茸 ベーコン おから」

もう一つの定番が「おから」。

こちらも季節によって具が変わり、秋から冬はうま味の強い黒舞茸を使用。野菜のだしで炊いたおからにベーコンを加え、洋風に仕上げています。「和食が続いた時に、こういうものが入ると楽しいから」と蝶野さん。

どこまでもなめらかな口当たりのおからにベーコンのスモーキーな香りと黒舞茸のうま味が加わり、まさに洋の味わい。だけどこれもまた、不思議と日本酒に合うのです。

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酒蔵巡りから店づくりまで――二人が描く“有縁”の世界

店主の蝶野 慶一さん(写真右)と、接客やSNS運用、写真撮影などを担当している石川 健太さん(同左)。大学時代からの友人だけあって、息がぴったり

店主の蝶野さんは北海道出身。もともと日本酒好きで、学生時代からさまざまな日本酒を飲み比べて楽しんでいました。その研究心に火がついたのは、留学中の経験がきっかけです。留学生仲間に手料理とともに日本酒をふるまった際、「自分の国のお酒なのに、深く知らない」と気づかされたのだそうです。

「日本酒をもっと深く知りたい」と考えた蝶野さんは、大学卒業後に日本酒専門店で店長を務めながら全国の酒蔵を巡るようになります。やがて「自分の店を持ちたい」と思うようになりますが、「私の性格上、石橋を叩きまくりながら渡るところがありまして(笑)」と語る通り、独立をゴールに逆算し、自分に足りないスキルを磨くためさまざまな飲食運営会社で研鑽を積みました。

まず経営や新店立ち上げを学ぶために株式会社WATに入社し、いくつかのカフェの運営に携わります。続いて、日本酒を中心とした和食店の開業イメージが固まったタイミングで、食べ歩きの中で魅力を感じた店を多く運営していた株式会社フェアグランドに入社。代表の中村 悌二さんのもと「蕎麦前 山都」(現在は株式会社山都が運営)で料理と酒を学び、37歳で独立を果たしました。

  • 日本酒は、料理に合わせて店主がおすすめを注ぐスタイル(Photo by 有縁・石川氏)
  • 「蛸 柔らか煮 瀬戸内」(1,000円)は、ほうじ茶で長時間煮込んでからさらに蒸して、弾力を保ちつつ歯切れのいい柔らかさに仕上げている。上品な甘辛さが蛸のうま味みを引き立て、噛むほどに海の滋味が滲み出す(Photo by 有縁・石川氏)
  • 蝶野さんの故郷北海道のジンギスカンを焼売にアレンジした羊焼売 大 成吉思汗仕立」(600円)。北海道民に愛されているジンギスカンのタレ、ベルたれをお好みで(Photo by 有縁・石川氏)
  • こちらも蝶野さんの故郷の特産物・鮭を使った名物料理「鮭クリームコロッケ」(1個550円)。箸を入れると濃厚なクリームとともに、大き目にほぐした香ばしい焼き鮭があふれる(Photo by 有縁・石川氏)
最後のお客様をお見送りをした後の蝶野さんの小さな楽しみは純米酒を温め、その日の会話を思い返しながら静かに味わうひとときだそう。石川さんが担当しているインスタグラムのこの写真からは、そんな蝶野さんを撮影している石川さんの温かいまなざしも伝わってくる(Photo by 有縁・石川氏)

蝶野さんのパートナーとして接客やSNS運営、写真撮影などでタッグを組んでいるのが、学生時代からの友人でもある石川 健太さん。クリエーティブ系の仕事を経て小豆島に移住し、伝統産業である醤油の製造会社で働いた後、商品開発やデザイン業務に携わっていた際、蝶野さんに誘われて東京へUターンしました。

オープン前には、2人で福島から鳥取まで約3,000kmを車で巡り、日本酒蔵を見学しながら25もの生産者と触れ合う旅を敢行。その旅で親交を深めた生産者の方々からの日本酒が、現在も店に定期的に届けられています。

日本酒(半合650円~)は、純米酒を中心に常時29品ほどをそろえている。酒販店から届くお酒のほか、蝶野さんが訪ねた酒蔵から届くお酒、蝶野さんが直接買い付けに行ったお酒もあり、同じ蔵で年度の違いや酒米の違いを楽しめることも(Photo by 有縁・石川氏)

蝶野さんは今も時間を見つけては、全国の酒蔵を訪ね続けています。店では「この酒の杜氏は女性で」「若いご夫婦が2人で酒蔵を継いでいらっしゃるんです」といったように、お酒の味わいに造り手のストーリーを重ねて伝えてくれます。日本酒の味を言葉で説明するのはなかなか難しいものですが、自身が感動した体験に基づいているからでしょうか、蝶野さんの言葉は自然にすっと沁み入ってきます。

そして、そんな特別なお酒を最高においしく味わってもらうために考え抜かれた酒肴だからこそ、一皿一皿が格別に感じるのでしょう。この店でお酒をいただくと、蝶野さんと造り手の方々が愉しそうに語り合っている光景がふっと浮かんできて、その豊かな時間を分けてもらっているような気持ちになるのです。

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