おかゆ寿司
日本人にとって「おかゆ」は、消化が良く胃腸に負担をかけない優しい食べ物という療養のイメージがあると思います。ところが、そのおかゆをイタリアン出身のシェフが進化させ、「おかゆ寿司」まで組み込んだ”おかゆのフルコース”を提供。「どこにもなかった、新しいおかゆ料理の世界」を提案するおかゆ専門店が、東京・阿佐ヶ谷に誕生したといいます。
今回は、週末の酒場巡りが趣味のフードライター・桑原 恵美子さんが、「おかゆテラス 阿佐ヶ谷本店」を紹介。和でも中華でもない、第三のおかゆ料理の魅力を深堀りします。
訪れた飲食店を紹介している個人ブログ:
https://ameblo.jp/amaguri0111/theme-10066247104.html
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おかゆテラス 阿佐ヶ谷本店(東京・阿佐ヶ谷)
おかゆテラス 阿佐ヶ谷本店
業態: おかゆ専門店
席数: 全14席(カウンター6席・テーブル8席)
客単価:昼1,500~2,000円、夜8,000~10,000円
客層:20~70代 男女比5:5 昼は女性やビジネス層。夜はやや年齢層高めで、地元客が多い
アクセス:JR阿佐ヶ谷駅から徒歩7分、東京メトロ丸の内線南阿佐ヶ谷駅から徒歩5分
営業時間:平日・土曜日11:30~15:00(LO14:00)、17:30~21:30(コースLO20:00)、日曜11:30~16:00(LO15:00)
4月より、営業時間・定休日が変更(詳しくは公式HP、Instagramにて)
定休日 :火・水曜日(不定休あり)
https://www.okayuterrace.jp/
https://www.instagram.com/okayuterrace/
https://r.gnavi.co.jp/hy0zt51r0000/
目次
・前菜からデザートまで全9品すべておかゆ!
・お米と魚の一体感が衝撃的な「おかゆ寿司」
・香ばしさとやわらかさを同時に味わう「おかゆ玉」
・「新しいおかゆ料理」を広めていきたい
前菜からデザートまで全9品すべておかゆ!
「おかゆテラス 阿佐ヶ谷本店」がオープンしたのは、2025年12⽉20⽇。「前菜からデザートまで全9品がおかゆ料理という『おかゆのフルコース』を提供する店ができた」と最初に聞いた時は、驚きました。さらに、料理の監修がイタリアンの名店「リストランテ カノビアーノ」で料理⻑を務めた経歴を持つ⿅糠(かぬか)秀明 ⽒と聞いて、またびっくり。
いったいどんなフルコースなのか気になり、オープン後すぐ確かめに行きました。最初は「おかゆの連続で食べ飽きるのでは」と危惧していましたが、見たことのない新・おかゆ料理の連続で、食べ進むほど逆に食欲がわいてくる“おかゆマジック”ともいうべき体験をしました。「おかゆってこんなに深くて広かったのか…」と、新たなおかゆワールドの扉が開いた思いです。
「おかゆテラス 阿佐ヶ⾕本店」があるのは、JR阿佐ヶ谷駅と東京メトロ南阿佐ヶ谷駅のほぼ中間地点の路地。お⽶をイメージさせる白い⾊と柔らかな曲線の外観が目印です。
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入り口を入ってすぐに、一人でも利用しやすい広めのカウンター席 -
席の奥にはソファ―席。壁にはお米をイメージしたアート作品が描かれている
お米と魚の一体感が衝撃的な「おかゆ寿司」
中でも、ぜひ食べていただきたいのが「おかゆ寿司」。初めてその料理名を聞いた時は「おかゆを? お寿司に? どうやって?」と?がいくつも頭に浮かびましたが、出てきたのは、ブーケのように華やかな一皿。色鮮やかなダイコンを何種類も薄くスライスして、細巻き寿司のようにおかゆを巻き込んでいるのです。
寿司ネタは時季によって違い、最初に伺った日はキハダマグロ、取材当日は北海道産特大サイズの伝助(でんすけ)アナゴでした。口に入れると極薄ダイコンのシャリシャリしたさわやかな食感と甘みを感じ、その後にとろりとほどけるおかゆのやさしい甘みが口いっぱいに広がります。お米と具の一体感は、やわらかさがほぼ同じせいでしょうか。「もしかしたら、お寿司は、おかゆで作ったほうがおいしいのでは?」とすら思えるほど。
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伝助アナゴは骨切りをした後に煮て、皮目を香ばしく炙る。おかゆを巻いている美しいダイコンは、青首・黒長・紅心・紅くるりなどを極薄にスライスし、組み合わせたもの -
醤油だけではなく、アナゴの煮汁を煮詰めてオリーブオイルを加えたソースと、季節の柑橘ソース(この日は黄柚子。時季によって変更あり)の2種を添える
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香ばしさとやわらかさを同時に味わう「おかゆ玉」
もう一つ、「おかゆ玉」という看板メニューがあります。たこ焼き器を使っておかゆを球状に焼き上げており、外はおこげのように香ばしく、カリッとクリスピー。その香りと食感を楽しんでいると、中からとろりとした熱々のおかゆがあふれ出します。まさにこのお店でしか味わえない、唯一無二のおかゆメニューでしょう。
ランチタイムには焼きたての熱々に塩を振った、ごくシンプルな「おかゆ玉」がすべての料理に添えてられていますが、性別・年齢を問わず大好評。中にはおかわりをおねだりするお子さんもいるそうです。
ディナータイムではこのおかゆ玉をさらにグレードアップして「おかゆ玉と一番出汁」として提供。昆布とかつお節を合わせただしを注ぎ、季節の野菜が添えられます。
水分量の多いおかゆはたこ焼き器で焼いても丸くならず、試作にはかなりの時間を要したそう。あらゆる方法を試してたどりついたのが、お粥を球形で素早く冷凍し、オーダーが入ってからたこ焼き機でじっくり焼き上げる方法。
このおかゆに使用しているお米は、お米らしい甘みをしっかり感じられる長野県産「幻の米 コシヒカリ」と、心地よいとろみのある山形県産「つや姫」をブレンドし、料理によって細かく調整して使い分けています。中華がゆのようなドロドロ感ではなく、日本米らしい粒感を残しながら、とろみと甘みを感じられる仕立てを重視しているそうです。
「新しいおかゆ料理」を広めていきたい
「おかゆテラス 阿佐ヶ谷本店」の運営はなんと、「東京ばな奈」や「ねんりん家」、「シュガーバターの⽊」などスイーツの⾏列店を多数展開している株式会社グレープストーン。食品事業プロジェクトのシニアマネージャーで「おかゆテラス」店長の高木 あいさんによると、グレープストーンは菓子事業を中心に展開してきましたが、コロナ禍を経て「お菓子とは別の“日常の食”の大切さ」を改めて実感し、一般食・食事事業に目を向けるようになったとのこと。そこで着目されたのが「おかゆ料理」でした。
「お米は日本人にとって特別な存在。中でもおかゆは、人生で最初に口にする食事でもあり、年をとった時に最後まで食べられるものでもあります。日本人の原点ともいえる食べ物だからこそ、そこに新しい価値を見出したい――そんな思いから、この店の構想が始まりました」(高木さん)。
「どうすれば新しいおかゆの形を打ち出せるのか」という点で、試行錯誤を重ね、立ち上げからオープンまでにかかった期間は約3年。その過程で生まれたのが、名物メニューの「おかゆ玉」でした。さらに、「おかゆを素材として使う」という発想からメニューの幅が一気に広がっていき、決定打となったのは、イタリアン出身の⿅糠シェフの参加。これまで培ってきたイタリアンの技術と発想を掛け合わせることで、和食でも中華がゆでもない、“まったく新しいおかゆ料理”が生まれたのです。
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「おかゆフルコース」(7,000円・ワンドリンクオーダー制)の⼀例(写真提供:おかゆテラス) -
メインディッシュ「銘柄豚の鉄板焼き」は、鮮やかな6⾊のおかゆソースを敷いた色鮮やかな一品(緑:ルッコラ、⻩:カボチャ、紫:⾚ワイン、⽩:根セロリ、ピンク:ビーツ、⿊:⿊麹)(ソースの内容は時季によって変更あり)
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アルコールは、ビール、ワイン、日本酒、焼酎を用意。ランクや認証などにこだわらず、おかゆとの相性と作り手の姿勢を重視。フルコースには、その料理に合ったお酒のペアリングも -
ボトルワインは、イタリアン出身のシェフがイタリア産を中心にセレクト
オープンしてまだ2カ月足らずなのに、ランチもディナーも大にぎわい。「カウンター席があるので1人で来店されるお客様も多く、先日は90歳近いお客様が1人で見えられてフルコースを召し上がりました。『ここならフルコースをペロッと食べられる』と話してくださることも多くて、それもおかゆならではの魅力かなと思います」と話すのは、「おかゆテラス」の立ち上げから携わってきた島田 美乃里さん。
「療養食としての従来の魅力は大切に残しながら、おかゆを楽しむ新しいシーンを増やしていきたい。この店に来ていただきたいのはもちろんですが、それ以上に、この店をきっかけにおかゆが業態として盛り上がってほしいと思っています」(高木さん)。
取材中も通りがかりに足を止めてメニューに見入る人が多く、年配の女性がウインドウを見て「きれいね、彩りがいいわ」と感心する姿も。ユニークなおかゆレストランの挑戦を歓迎する、地元の方々の温かなまなざしも伝わってきました。
誰もが一度は、体調をくずした時に助けられた思い出があるおかゆだからこそ、斬新なスタイルでも、どこか安心して受け止められるのでしょう。これもまた“おかゆマジック”なのかもしれません。
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