見て驚き、食べて楽しむ!「お通し」で印象深い店になる
【東京・亀有】比内地鶏 本格焼酎 海舟
喜ばせることに価値がある。手間と原価をかけた逸品
「海舟」の売りは、山形・庄内産比内地鶏を、店内でていねいにさばいた焼鳥。なかでも「もも肉の一枚焼き」は、うまみを閉じ込めた数量限定の一押しメニュー。そうした看板料理でしっかりと客の心をつかみながら、プラスアルファの要素で楽しませ、強い印象を焼き付けているのが、お通しの「車海老の紹興酒踊り食い」だ。オーナーシェフの木滝喜博氏は、「今はお通しを出さなかったり、無料にしたりという居酒屋もあり、お通しの存在感が薄れています。だからこそなおさら、当店では少しでも興味深いメニューをお通しにすることで、お客様に楽しんでもらおうと考えたのです」と語る。
「車海老の紹興酒踊り食い」には身がやわらかく、甘みのある小ぶりのサイマキエビを使う。まず、エビを入れた容器に、客の目の前で紹興酒を注ぎ入れる。すると、すぐにエビが容器の中で活発に踊り跳ね、客席からは歓声が上がることも多い。「特に家族連れのお子さんは喜んでくれますね。生きたエビを見る機会など、めったにありませんから」と木滝氏。
5分ほど経ったころに、刺身にするか焼き物にするかのオーダーを聞く。客の多くは刺身を希望。その場合は殻をむき、お頭付きの刺身として提供する。しかも頭は食べずに残してもらい、後ほど頭だけ炭火で焼いて再度提供するという手間のかけようだ。刺身は甘みが強く、弾けるような食感が絶品。焼き物にした頭は、ほんのりとした塩味と殻の香ばしさ、そして濃厚なエビのミソが口の中に広がる。焼き物を希望する場合(子供の場合は必ず焼き物で提供)は、殻ごと串に刺して焼き上げる。頭から尻尾まで、そのまま食べられ、香ばしさと身のプリプリ感が絶妙の一品となる。つまり、1つのお通しで、見て驚き、刺身・焼き物で2度味わえることになるのだ。
「手間も時間もかかり、原価率もお通しとしては高めですが、お客様が喜んでくれるので、それだけの価値はある」と木滝氏。
もともとは、中華料理からヒントを得たこの料理は、紹興酒を注ぐところがポイントのひとつ。香りがよく、日本酒では出せない食味になるという。比内地鶏という売りが明確で、お通しも自店の特徴とした「海舟」。おいしさのほかにも、驚きと楽しみを盛り込んでファンを獲得し、地元に愛される店を目指す。
木滝 喜博氏ホテル・レストランのウエイターから料理の世界へ転身。焼鳥料理店を中心に、銀座などで修業を積み、独立開業を果たす。
東京都葛飾区亀有5-41-4
http://r.gnavi.co.jp/gc2x300/東京・亀有の住宅地に今年2月にオープン。新鮮で濃厚なうまみと歯ごたえのある比内地鶏が売りの焼鳥居酒屋。近隣に住む幅広い年代の客が訪れ、ファミリーでの普段使いも多い。