2015/03/10 特集

特別対談 観光庁 長官 久保成人氏×株式会社ぐるなび 久保征一郎(3ページ目)

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訪日動機の大きな1つに「食」。
多彩な郷土料理で、地方へも誘導を
――観光庁 長官 久保成人氏

外国語メニューの自動変換を実現。
今後、訪日外国人の飲食店に及ぼす経済効果は10倍に
――株式会社ぐるなび 代表取締役社長 久保征一郎

地方からの情報発信で、訪れるエリアと季節の幅を拡大

長官 先ほど、「ぐるなび外国語版」の自動変換は、90%以上のメニューに対応できるとお聞きしましたが、地方には説明が難しいメニューがたくさんあります。食材はもちろん、味付けや調理法にしろ、ある地方の限られた地域にしかないものもあります。それも表現できるのですか?

社長 辞書にないものについては、ニーズがあれば新たな語句を辞書変換テーブルに追加するだけで対応できます。実は私たちは、外国人にはぜひ、地方に行ってほしいと思っているのです。というのは、日本の地方には、そこでしか食べられないおいしいものがたくさんあるからです。

長官 それは、ぜひお願いしたい。訪日外国人は、どうしても東京、京都、大阪といった大都市圏に集中しがちですが、ほかにも魅力ある地方都市や地域がたくさんあります。それぞれの地には趣の異なる郷土料理がありますから、ぜひ、それらを堪能してもらい、訪日リピーターになってほしいものです。2020年には東海道の東西ルート以外の地域も、よりたくさんの外国人旅行者であふれるようにしたいですね。

社長 日本の郷土料理の多彩さには、江戸時代の藩政の名残りがあると思うのです。藩政によって藩の外との交流が制限されたために、藩内でそれぞれの食文化が育まれ、多彩で多様な状況が生まれました。弊社は近年、新潟、金沢、静岡、鹿児島の4都市に新たに営業所を設け、現在国内では17の拠点を持っています。今後もさらに増やして、地方の食文化をどんどん発信するつもりです。

長官 それは心強い。それと、訪れる場所と連動して、様々な季節に訪日してもらいたいとも考えています。例えば、冬は訪日外国人数が減少するのですが、日本の冬にはおいしいものがたくさんあります。「おいしい季節に、おいしい地域へ」というアピールも魅力的ではないでしょうか。

社長 それこそ地方の出番ですね。ぐるなびでは海外に向けて、食だけでなく、四季のイベントや名所、芸能などのおすすめ情報をランキング形式で発信するサイト「ジャパントレンドランキング」も開設しています。こうしたものも活用して、大いにアピールしていきたいと思います。

少子高齢化とインバウンド。課題に取り組み、飛躍を目指す

社長 将来的に日本は少子高齢化が進み、日本人による消費はどうしても減らざるをえません。そのとき、外国人はとても大きな存在になります。私は、訪日外国人が町の飲食店に落とすお金は、10年後に10倍になると見込んでいます。訪日外国人数そのものが増加し、さらには1人当たりの消費額も増え、加えて、個人旅行者が多くなるので、団体向きの大型店だけでなく、街の個人店にも外国人が訪れるようになると思うのです。

長官 おみやげは買わないという選択肢がありますが、「食べない」というのはないですよね。必ず3食とります。大事なことは満足度を上げることで、食事は必ずしますから、ここで満足度が上がれば「日本へまた行きたい」となり、訪日リピーターになる可能性が高まります。飲食店の方々は、国際観光の第一線にいるといっても過言ではありません。今回の「ぐるなび外国語版」が活用され、外国人の食事の満足度が上がるとよいですね。

社長 私たちも頑張って、その便利さをより多くの飲食店に伝えようと思います。

長官 同時にお願いしたいことがあります。飲食店に限らないのですが、訪日外国人に、よくアクセスがわからないと言われるのです。新幹線の駅や空港までは行けるが、その先の目的地までの交通手段がわからずにたどり着けないと。また、地方に行くほどクレジットカードでの決済ができにくくなります。

社長 それは今後の課題ですね。弊社は「ぐるなび大学」というセミナーを全国で開講し、「インバウンド対策」の講演も行っていますので、こうした場で提案していきたいと思います。

長官 今日はいいお話をお聞きしました。インバウンドにはまだまだいろいろな可能性があることを、あらためて実感しました。

社長 こちらこそ、飲食店に対して力強いメッセージをいただきました。訪日外国人2000万人時代に向かって、ぐるなびも飲食店とともに一層飛躍したいと思っています。

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