訪日外国人(インバウンド)の数は、昨年1,300万人を突破。その牽引役を担っているのが「日本の食」であり、飲食店だ。ぐるなびでは今年1月、「ぐるなび外国語版」を大幅にリニューアルし、外国人への日本文化の発信において第一線に立つ飲食店を強力にサポート。「2020年に2,000万人」の目標実現へ、拡大するインバウンドの現状と未来、そして飲食店への期待と展望を、観光庁長官・久保成人氏と株式会社ぐるなび代表取締役社長・久保征一郎が縦横に語り合った。
順調に増加する訪日外国人。日本の魅力の1つは「食」
久保征一郎(以下、社長) 本日は訪日外国人(インバウンド)と日本の食文化、そして飲食店との関係について、長官と縦横にお話ししたいと考えて参りました。さっそくですが、2014年は訪日外国人が1300万人に達したという、うれしいニュースを聞きました。
久保成人氏(以下、長官) はい、正確には1341万人です。一昨年、長い間の政府目標であった年間1000万人の大台を超え、昨年はさらに300万人を上乗せすることができました。今年は1500万人台に乗ると見込んでいます。政府が「2020年に2000万人」という目標を掲げたのが昨年ですから、まずは順調といえるでしょう。
社長 この間の増加ぶりは、私たちも強く実感しています。
長官 要因は大きく4つあります。第一に、経済成長が続いているアジア諸国で海外旅行が増え、円安にある日本が選ばれやすいこと。2つ目に、2020年のオリンピック・パラリンピックの開催地として、日本への注目度が世界的に高まっていること。3つ目に、ビザ緩和、免税品目の拡大、空港のCIQ(税関・出入国管理・検疫手続き)能力の拡充など、いくつかの障壁を撤廃したこと。そして4つ目として、観光庁所管の独立行政法人である日本政府観光局(JNTO)が海外でのプロモーションを確実に行ったことがあげられます。
社長 政府一丸となった施策が功を奏してきたのですね。
長官 でも、大前提としてあるのは、外国人にとって日本が魅力のある国だということです。そして日本の数ある魅力の中で、とりわけ大きな割合を占めているのが「食」なのです。
社長 たいへんうれしいご指摘です。日本食への関心が高まっている背景には、一昨年、和食がユネスコの無形文化遺産に登録されたこと、世界的に強まる健康・ヘルシー志向に日本食が合致していること、伝統的な日本食だけでなくラーメン文化や居酒屋文化など、新しい食文化が次々に生まれているなどということもあります。
長官 観光庁の調査でも、日本で食事をしたい、食文化に触れたいという想いが、訪日の理由の1つになっているのは明らかです。つまり、飲食店は訪日の動機づけの根幹にあるわけです。観光庁としても大いに期待していますし、ぐるなびの「インバウンド対策」もぜひ頑張ってほしいです。
社長 ぐるなびは単なる飲食店検索サイトではなく、日本の食文化を守り育て、世界に発信することを企業理念に掲げています。訪日外国人に飲食店でいい体験をしてもらって、帰国後には日本の食文化を大いに宣伝してもらい、訪日リピーターにもなってもらおうと取り組んでいます。ところが、なかなか一筋縄ではいかないのです。一番大きい壁は言葉です。飲食店の現場で言葉が通じないことから、「来てほしいのだけれど、来てもらうと困る」と、多くの飲食店が矛盾を抱えています。
長官 それは、小売業やホテルも同じです。
社長 特に食文化の難しさは、写真ではなかなか伝わらない点です。寿司や天ぷらは、言葉だけでも外国人に通じるようになりましたが、例えば「カツ丼」と聞いて、料理を想像できる外国人はほとんどいません。写真を見てもわかりません。
長官 確かに食材や味などは、わかりませんね。
社長 食文化とは、それぞれの家庭や地域で、親から子へと受け継がれていくものですから、地域による違いが大きい。見たこともない料理は、どうしても敬遠されがちになります。日本食に対しても「食べてみたいけど、何が入っているのだろう?」と、期待以上に不安のほうが大きいと思うのです。その不安を克服するためには、食材、調味料、調理法などの情報を外国語で適確に発信する必要があります。これに正面から取り組んだ成果が、今回リニューアルした「ぐるなび外国語版」なのです。