Vol.122
ロサンゼルスを中心に「カリフォルニア・ポケ」がトレンドとなっている。本来、「ポケ」はマグロなどの生魚をぶつ切りにして、醤油やゴマ油などで漬け込んでおくハワイ料理だが、カリフォルニアでは生魚をあらかじめタレに漬け込むのではなく、その場で好きなソースをドレッシングのようにかけ、ごはんばかりでなく春雨やサラダに乗せるスタイルが人気。前編では、様々なトッピングが楽しめるポケを提供する店をリポートした。
後編では、ポケを乗せるベースがごはんやサラダではない「変わり種ベース」のポケと、アボカドクリームやココナッツクリームなど「変わり種ソース」のポケを紹介する。
トルティーヤチップスやブリトーで食べる新しいポケ
ロサンゼルス中心部から少し南。ディズニーランドがあるアナハイム市で、人気寿司店の息子が2014年3月に開いたのがポケ専門店「ポキノメトリー(PokiNometry)」(※注 ポケは「ポキ」と発音されたり、「Poke」ではなく「Poki」と表記されることもある)。オープンからすぐに大評判となり、さらに人通りが多いハリウッドのチャイニーズシアター内に2号店をオープンさせたのが、2015年の7月のことだ。
ロサンゼルスのポケ店に多いカスタマイズスタイルだが、同店でユニークなのはポケのベースとなる部分。他店で一般的な白米や玄米、サラダだけでなく、トウモロコシ粉から作った「トルティーヤチップス」が選べる。ナチョス風に食べるポケなのだ。
さらにこの店には、魚や野菜などの具材をすべて、大豆の粉から作った大きめのトルティーヤ風の皮に巻いて食べる「ブリトー」スタイルのポケも登場。メキシコに近いロサンゼルスならではの発想から生まれた新しいポケが大評判となっている。
ソースはスパイシーマヨかスパイシー味噌の2種類で、それぞれ辛さをゼロから激辛までの5段階から選べる。また、具材のラインナップも、生魚はキハダマグロ、ビンナガマグロ、サーモン、ハマチ、エビ、タコ、ホタテとスパイシーツナの8種類で、他店と比べても多め。魚と 一緒に混ぜ合わせる具は、カニカマ、アボカド、きゅうり、スライスした生たまねぎの4種類、そしてトッピングはまさご、ネギ、ガリ、わさび、ごま、海苔の6種類で、好きなだけ入れることができる。
2種類の生魚が選べるスモールが7ドル(約714円)、3種類選べるミディアムが8ドル75セント(約893円)、5種類選べるラージが10ドル75セント(約1,096円) と、ハリウッドのど真ん中という一等地の店としては価格も手ごろ。このリーズナブルさが話題となり、流行に敏感な若い層や大勢の観光客が押し寄せて1日中行列の絶えない人気店となっている。ほかではあまり見られないアイデアがいっぱいの同店は、これからも新メニューを考案していきそうだ。
6801 Hollywood Boulevard Suite 316 Los Angeles, CA 90028
http://www.pokinometry.com/
シェフこだわりの変わり種ソースで楽しむポケ
ハリウッドから車で5分ほど南下した場所にある繁華街・ビバリーグローブ。そのなかでも、特におしゃれなカフェやレストランが並ぶ大通りに「メインランドポケショップ(Mainland Poke Shop)」がある。大手高級ステーキハウスなどの有名店で働いていたベテランシェフ2人が、2015年4月にオープンさせたこだわりのポケ専門店だ。
ステーキハウス出身というシェフの経歴が見事に表れているのが、ソースへのこだわりだ。他店のソースはせいぜい2~3種類が一般的だが、ここでは7種類。醤油とごまを使った定番の「醤油ソース」のほかに、醤油にチリソースを加えた「スパイシー醤油」、通常はサラダに使われるフレンチドレッシングにライムの風味と辛さを加えた「チリライムスパイシーヴィネグレット」、もともと地中海料理の人気調味料でフライドポテトをおしゃれに楽しむときに用いられるアイオリ(ガーリック風味のマヨネーズソース)にわさびを加えて多国籍風に仕上げた「わさびアイオリ」、バーベキューにホットドッグ、ハンバーガーやサンドイッチに使うのが定番のシラチャーという唐辛子ソースを使った「シラチャーアイオリ」、アジア料理の調味料として定番の「ココナツクリーム」、柚子をふんだんに使用し、本格的な和食を意識した自家製「柚子ポン酢」。「刺身には醤油」という固定観念を頭から外して試してみると、どれも意外にいける。
通常料金で選べる魚はキハダマグロ、ビンナガマグロ、サーモン、タコ、シェフが選んだ日替わりおすすめ。魚の代わりに木綿豆腐を選ぶこともできる。また、2ドル追加すればトロやトロサーモンなども選べる。ベースは白米、玄米、ケールのサラダから選べて、トッピングはアボカド、とびこ、ネギなどの定番のほかに、マンゴーや枝豆、ハラペーニョなどの変わり種もあり全部で13種類。スパイシーツナやハラペーニョなどの辛い素材と、クリーム系のソースの相性が抜群だ。
サイズは3種類あり、スモールが8ドル95セント(約913円)、ラージが11ドル95セント(約1,219円)、エクストララージが15ドル95セント(約1,627円)と他店に比べて価格はかなり高め。それでもひっきりなしに人が訪れるのは、「ここでしか食べられないもの」があるからだ。特に多く見られる客層は、近所に住む舌の肥えた若い年代の人。そのほかに、中国人や韓国人など流行りのグルメに敏感なアジア人も少なくない。
特別な調理技術は必要なく、狭いスペースでも開店できるのがポケ専門店。今後も、合わせる食材やトッピングなどのアイデア次第で、様々なバリエーションが生まれていくに違いない。
8318 1/2 W 3rd Street Los Angeles, CA 90048
http://www.mainlandpoke.com/
取材・文/押見由香(海外書き人クラブ)
※通貨レート 1ドル=約102円
※価格、営業時間は取材時のものです。予告なく変更される場合がありますのでご注意ください。