2022/02/28 特集

2022年の外食トレンドを読み解く(3)「月刊食堂」編集長・通山 茂之 氏

コロナに翻弄された2020年、コロナとの付き合い方が見えてきた2021年。そして、2022年は外食業界にとってどんな1年になるのか。専門誌の業界ウォッチャーに昨年から今年にかけてのトレンドを読み解いてもらった。

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目次
【2021年の外食トレンドを振り返る】好調な業態のカギは「ストレス排除」と「ごちそう感」
【2022年の外食トレンドを読み解く】「都市部から地方」「駅近から住宅街」への出店増加の兆し

【こちらもチェック】
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“時間と場所の制限からの解放”が、成功のキーワードに

 コロナ禍を生き抜くためにさまざまな試行錯誤、チャレンジを続ける外食業界。2021年も苦しい状況が続く一方で、ワクチン接種などによる感染者数の減少で一筋の光が見えた年でもあった。では、2022年は外食業界にとってどんな1年になるのだろうか。外食業界を見続けてきた専門誌の編集長らに話を聞き、業態、メニュー、食材など、さまざまなポイントについて、昨年のトレンドを振り返りつつ、今年のトレンドを読み解いてもらった。

 第2回は、飲食店専門誌「月刊食堂」で編集長を務める通山茂之氏が登場。テイクアウトやデリバリーにおける成功のポイントや、韓国・台湾酒場が好調な4つの理由を提示。また、2022年以降、都市部から地方へ、駅の近くから家の近くへと、小商圏への出店戦略が増えていきそうだと語ってくれた。

【2021年の外食トレンドを振り返る】好調な業態のカギは「ストレス排除」と「ごちそう感」

テイクアウト成功事例から見えてきた、「専用窓口」の重要性

 2021年の飲食業界を振り返ると、飲食店の最大の強みであり弱みでもある“時間と場所の制限”をあらためて感じる1年でした。飲食店は来店型ビジネスであり、決められた時間(営業時間や予約時間など)に決められた場所に行くことで、その店ならではの空間で作りたての料理を食べられます。しかしコロナ禍ではこれらが弱みに転じ、感染リスクも含めて、わざわざ店に行かなければいけないことが消費者にとって大きなストレスになってしまいました。

 そんな中、躍進したのがデリバリーです。フードデリバリーサービス大手のUber Eatsなどは若い単身者の利用が多く、「店舗に近い場所からも注文が入る」「麺やご飯など、炭水化物抜きのメニューは売れない」という特徴が見えてきました。外に出て少し歩くことすら面倒だという人、家でご飯を炊かない人の利用が多いことから、デリバリーは“家事代行業”に近づいているといえるでしょう。

 同様に、飲食店のテイクアウト販売も成功事例が増えた印象です。ただし、売上アップを図るには、視認性と認知度を上げる必要があります。テイクアウトだけで月間100万円超の売上を達成した店舗の多くに共通していえるのが、店頭にテイクアウト専用窓口を設けていること。これは、店のオペレーションの効率化やお客様の利便性向上のためではなく、周囲に「うちの店はテイクアウトをやっています!」と高らかに宣言するためのもの。むしろ店内のオペレーションは負荷が増える可能性すらありますが、それを差し引いても認知度を高めることが成功への近道だといえそうです。

 こうした取り組みの中で、2021年に最も面白いと感じた業態は、愛知県東海市などにある「無人ギョーザ販売所 50年餃子」(株式会社JBイレブン)です。自社が運営するラーメン店や中国料理店の駐車場内に設置したプレハブの無人販売所で、車で買いに行けば誰にも見られずに購入できるので、来店客は身支度を含めた移動のストレスをほとんど感じません。さらに餃子は小分け利用できるので、独り世帯からファミリーまで幅広いニーズを獲得できますし、無人販売なので営業の人件費がかかりません。この取り組みにより、同社のテイクアウトの売上は以前の3~5倍に増えたそうです。コロナ禍において、「何を売るか」以上に「どう売るか」が大事なんだと痛感した事例でした。

韓国・台湾酒場が好調。要因は、全時間帯&全方位販売、SNS集客、低原価

 また、2021年は焼肉・寿司など“外食で売れる王道のごちそう”の業態が好調でした。これらは来店型ビジネスの「わざわざ来店しなければいけない」という消費者のストレスを乗り越えるほど強いパワーを持ったメニューだったことが好調の要因。このほか、東京・馬喰町などに店を構える「豚大門市場」(株式会社バイタリティ)、京都の四条烏丸などに出店している「熱烈観光夜市」(イコン株式会社)といった韓国酒場や台湾酒場もブームに。

 韓国・台湾料理は、コロナ禍に強い4条件である、

  1. 全時間帯販売(朝・昼・夜の全時間帯で販売できる)
  2. 全方位販売(店内だけでなく、テイクアウト・デリバリーにも向いている)
  3. SNS集客
  4. 低原価

を満たしていたことが人気になった要因だと分析しています。食材が高騰している現在、特に低原価は重要。東京・新宿にある「スシンジュク」(株式会社スパイスワークス)をはじめとする寿司居酒屋も、全時間帯販売、全方位販売に向いています。

 そのほか、東京・町田で好調な「焼売のジョー」(株式会社INGS)も、焼売が全方位販売に向いているという特性を生かして好調でした。焼売は蒸すだけなのでクオリティーコントロール(品質管理)もしやすく、餃子と同様に小分け利用できる商材であることもメリットです。また、大手飲食企業が、一斉にチキンバーガー・フライドチキン業態を出店して話題になりました。こちらも全方位販売に向いている上に、チキンは原価が安く、フライドチキンのマーケットは競合する大手チェーンが少ないのも参入が増えた要因だと見ています。

豚大門市場(トンデムシジャン)(東京・馬喰町ほか)
https://r.gnavi.co.jp/gekct3yh0000/

東京・馬喰町で約10年前に創業した韓国酒場。サムギョプサルやスンドゥブ、チーズタッカルビなどの韓国グルメと現地の屋台を思わせる店内の雰囲気を売りに好調をキープ。昼夜の集客はもちろん、デリバリーに向いている商品も多く、全時間帯&全方位販売を象徴するような業態。

【2022年の外食トレンドを読み解く】「都市部から地方」「駅近から住宅街」への出店増加の兆し

韓国酒場やフライドチキン専門店の出店は継続して増加の可能性

 ブームは予測不能なものですが、経験則として「流行しやすいもの」の傾向はあります。例えば、韓国料理はマーケットが広く、すでにスンドゥブ専門店やサムギョプサル専門店など、単体で市場が成立しています。さらに食材原価が安く、韓国調味料である醤(ジャン)で味が安定するので調理技術に左右されず、オペレーションが楽な点も大きなメリット。2022年も引き続き店舗は増えていくのではないでしょうか。チキンバーガーを提供するフライドチキン店も、ランチやディナーを問わず提供でき、かつテイクアウトやデリバリーの対応がしやすいため、今後も継続しそうなトレンドです。

朝食など、新たな時間帯での来店ニーズも高まりそう

 また、2022年も「場所や時間の制約からの解放」はキーワードになるでしょう。コロナ禍によって、飲食店は21時以降の集客が難しくなっています。しかし、消費者の生活の変化によって、新たなニーズを獲得するチャンスも生まれています。福岡では、マグロを売りにした朝食メニューを打ち出したところ、人気が爆発した店もありました。リモートワークが定着したことで朝や昼の営業にもニーズが広がり、フレキシブルな営業形態をとる飲食店が今後増加するかもしれません。

駅の乗降客数2~3万人規模の商圏への出店も増加か

 もう1つ、今後の飲食店の出店が増えそうなエリアとして、“都市部から地方”および“駅の近くから自宅の近く”への流れが加速するかもしれません。コロナ禍が長引き、会社の同僚と過ごしていた時間を家族と過ごすようになり、駅の乗降客数2~3万人規模の商圏への出店戦略が成立する状況になってきたからです。また、多くの飲食店がコロナ禍で固定費に泣かされており、いかに家賃を下げて損益分岐点を下げ、利益を生み出していくかも重要。乗降客数5,000~1万人の規模の駅周辺にも積極的に出店している企業もあります。商圏が小さいとパイが少ない分、一人勝ちしなければなりませんが、逆に言えば周囲に競合が少ないため勝率は上がる、という戦略です。

居心地のよさや、地域における存在意義も生き抜くためのポイントに

 先ほど、焼肉・寿司などは来店型ビジネスならではのストレスを乗り越えられる王道の商材だと言いましたが、“わざわざ来店する理由”は食べ物以外にも作れます。例えば最近、居心地のいい郊外型の喫茶店チェーンが増えてきました。1店舗ごとにしっかり投資をして居心地の良さを追求し、来店客がゆっくり会話を楽しめる雰囲気が集客力を高める要因になっています。

 都市部に比べてローカルの飲食店の客層はリピーターが中心です。だからこそ、その地域にとって“なくてはならない存在”になれるかどうかも生き残りのためには重要だと思います。こうした社会的使命を持つことはCSR(企業の社会的責任)的にも重要な時代ですし、地域貢献はスタッフのモチベーションアップにもつながります。

 こうしたトレンドや時代の流れをキャッチすることも重要ですが、最後には経営者の方々の“勘”が、局面を打開するのではないかと考えています。大変な状況が続いていますが、経営者の皆様にはぜひご自身の経営判断を信じて、前に進んでいただきたいと思います。

株式会社柴田書店 雑誌編集部部長 兼 「月刊食堂」編集長
1974年生まれ。1998年株式会社柴田書店入社、広告部配属。2002年「月刊食堂」編集部に異動、2005年に同誌副編集長、2010年7月に「居酒屋」編集長、2011年7月に月刊食堂編集長就任。2017年2月より雑誌編集部部長も兼任する。柴田書店入社以降、日本全国はもちろんアジアなどの海外へも繁盛レストランの取材を数多く重ね、その豊富なデータと経験をもとにした情報発信・セミナーには定評がある。TV出演など、メディア露出多数。
月刊「月刊食堂」(柴田書店)
1961年創刊、日本初のフードビジネス専門誌。勢いのある外食企業や繁盛店の経営手法を、論理的に、徹底的に分析。個人・生業店から大手チェーンまで、経営に役立つ幅広い情報を分かりやすく網羅。