2022/02/24 特集

2022年の外食トレンドを読み解く(2)「飲食店経営」副編集長・三輪 大輔 氏

コロナに翻弄された2020年、コロナとの付き合い方が見えてきた2021年。そして、2022年は外食業界にとってどんな1年になるのか。専門誌の業界ウォッチャーに昨年から今年にかけてのトレンドを読み解いてもらった。

URLコピー

目次
【2021年の外食トレンドを振り返る】エンタメ要素をプラスしたことで、韓国業態や焼き肉業態がヒット
【2022年の外食トレンドを読み解く】DX化でいかに顧客体験価値を高めるかがポイント

【こちらもチェック】
2022年の外食トレンドを読み解く(1)「近代食堂」編集長・雨宮 響 氏
2022年の外食トレンドを読み解く(3)「月刊食堂」編集長・通山 茂之 氏

DX化が進んで、外食業界はフードテック業界とフードサービス業界に分かれていきそう

 コロナ禍を生き抜くためにさまざまな試行錯誤、チャレンジを続ける外食業界。2021年も苦しい状況が続く一方で、ワクチン接種などによる感染者数の減少で一筋の光が見えた年でもあった。では、2022年は外食業界にとってどんな1年になるのだろうか。外食業界を見続けてきた専門誌の編集長らに話を聞き、業態、メニュー、食材など、さまざまなポイントについて、昨年のトレンドを振り返りつつ、今年のトレンドを読み解いてもらった。

 第3回は、飲食店専門誌「飲食店経営」の副編集長・三輪大輔氏が登場。「+αのエンタメ性」「DX化」といった2021年に好調を維持した店の共通点を指摘。2022年に注目のアイテムとして、「カヌレ」「フォー」「モクテル」「代替肉」などをあげた。

【2021年の外食トレンドを振り返る】エンタメ要素をプラスしたことで、韓国業態や焼き肉業態がヒット

異国感のある店内空間やセルフサーバー、接客時の声掛けなどのエンタメ性が集客のポイントに

 新型コロナウイルスへどう対応すればいいのかが見えてきた2021年。飲食店によるテイクアウトやデリバリーも最初は手探りでしたが、そこから出てきた成功事例を横展開する流れが生まれました。例えば、株式会社Globridge(グロブリッジ)が手掛けるゴーストレストランのFCブランド「東京からあげ専門店あげたて」。初期費用が抑えられる上にオペレーション面での負担が少なく、効率的に利益を上げられることから、唐揚げブームが一段落した今も加盟店数を増やしています。

 また、韓国業態も好調でした。コロナ禍で海外に行けない中、旅行気分を味わえることと韓国ドラマの流行から人気が上昇。中でも屋台風などエンターテインメントの要素をプラスした店が増加しています。長年、韓国業態を手掛けてきた株式会社ゴリップは既存業態の「ベジテジや」をリニューアルし、東京・下北沢に韓国の路地裏にあるようなアンダーグラウンドな空間の店舗「サムギョプサルと韓国屋台ベジテジや」をオープンし、好調です。韓国業態は、コロナ禍でも消費行動が活発な20代女性がメインターゲットであることも強みといえます。

 GOSSO株式会社の「0秒レモンサワー 仙台ホルモン焼肉酒場 ときわ亭」も焼き肉業態にエンタメ要素を加えて成功した例です。卓上サーバーで来店客がセルフでレモンサワーをおかわりできる仕組みのほか、ホルモンを焼く際にスタッフ全員で「いってらっしゃい!」と声を掛けたり、エンタメ性を高めています。「ときわ亭」は卓上タッチパネルや配膳ロボット「サーヴィー」を導入したりしてDX化を進めているのもポイント。DX化で人件費を削るのではなく、浮いた時間をサービスに回し、顧客体験価値を向上させてファンを作っているのも特徴です。

 DXといえば、東京・原宿にオープンした「The Label Fruit」も注目店です。果肉がゴロゴロ入ったフルーツオレの専門店で、カップのラベルに好きな文字や色を指定して入れられることから、10~20代の女性を中心に“推し”の人の名前を入れた商品の写真がSNSで拡散されています。注文はモバイルオーダーで、提供もロッカーを使って非接触で完結するのが特徴。受け取る際に、自分の商品が入ったロッカーが光るなど完全にパーソナライズされた顧客体験がZ世代に受けています。この店は、モバイルオーダー事業を手掛ける株式会社Showcase Gigと、つり銭機の市場で高いシェアを誇るグローリー株式会社による共同出店。コロナ禍で他業界から飲食業界への参入が増えていますが、その流れを象徴する店舗の1つとしても注目しています。

「微アル」「マリトッツォ」「コラボ業態」も、2021年を象徴するトレンド

 このほか、2021年に広まったものとして「微アル」(アルコール度数1.0%未満の微アルコール飲料)も外せません。当初、飲料メーカーはビール離れが進む若者をターゲットにした商品として打ち出したように思いますが、実際は中高年層にヒット。自粛生活の長期化によって健康意識が高まった結果といえるでしょう。

 同じく印象的だったのが、「マリトッツォ」のブーム。テイクアウトの新たなアイテムとして、SNS映えする断面“萌え断”を売りにしたフルーツサンド専門店が2020年から増加しましたが、その流れの一貫で人気に火が付いたのがマリトッツォなのではないかと考えています。比較的作りやすい上に、消費者のプチ贅沢需要にも合致したことから人気が拡大しました。

 加えて、2021年はコラボレーションの動きも目立ちました。株式会社奴ダイニングの「肉バル BEEF KITCHEN STAND」は、コロナ禍で始めたランチ営業が当初は上手くいかず、株式会社凪スピリッツの「ラーメン凪」とコラボしたオリジナルラーメンを提供して集客に成功。双方のキラーコンテンツを取り入れて商品価値を高めるとともに、ノウハウを蓄積して自社の新たな武器とするなど、次の展開につなげられるところもコラボの利点だと感じました。

【2022年のトレンドを読み解く】DX化でいかに顧客体験価値を高めるかがポイント

「カヌレ」「フォー」「モクテル」などに注目

 2022年に流行しそうなアイテムとして、個人的に注目しているのは「カヌレ」「フォー」「モクテル」(ノンアルコールカクテル)です。カヌレは作りやすいですし、一口サイズでテレワーク向き。最近は色合いなどでバリエーションも出ているので、ブレークする下地ができていると感じます。

 フォーは、手軽でヘルシー、トッピングなどでパーソナライズできるといった、ヒットする要素も満載。バインミーの流行でベトナム料理の認知度がアップしたのも追い風になると思います。2021年11月には、東京・原宿に専門店「One Pho Bowl(ワンフォーボウル)」がオープンして注目を集めています。運営母体がタイ料理店を手掛ける株式会社ミールワークスで、エスニックのノウハウを持っていることも強みです。

 モクテルは、外食人口が減っている中で、隙間の時間帯の集客や、お酒を飲まない人を呼び込むツールとして有効だと思います。単価を上げやすく、利益アップにもつながります。見た目も工夫できるので、微アルの健康志向の流れではなく、SNS映えという側面から広がっていくのでは、と考えています。

 また、昨年から続く食材価格の高騰の影響は不可避。輸入肉や和牛価格の高騰が続き、「代替肉」や「培養肉」に活路を求める流れが強まりそうです。すでに「焼肉ライク」(株式会社ダイニングイノベーション)では、代替肉をメニューとして出していたり、「焼肉きんぐ」が好調な株式会社物語コーポレーションは代替肉のベンチャー企業と資本業務提携をしています。今後は開発が進み、味や価格の面でも消費者に広く受け入れられるようになるでしょう。

 販促では、Instagramに続いてTikTokの勢いを無視できなくなりそうです。テレビCMの効果は一過性になりがちですが、TikTokであれば一度バズった動画はおすすめ欄に表示されやすくなるため、息の長い販促が狙えます。今後は、いかにTikTokerに来店してもらい動画を拡散してもらうかも、集客における重要なポイントになるかもしれません。

ワンフォーボウル原宿表参道(東京・原宿)
東京都渋谷区神宮前6-6-6 穏田ビル1階
https://www.arclandservice.co.jp/onephobowl/

昼でも夜でも気軽に食べられるベトナムのライスヌードル“フォー”の専門店。じっくり炊いたこだわりのビーフスープとたっぷりのネギ、好きなトッピングに調味料を加え、仕上げにライムを絞るなど、カスタマイズして「自分だけの1杯」を楽しめる。

生産者とのつながりを生かした取り組みやコア人材の育成も重要に

 コロナ禍であらためて外食の価値が問われている今、生産者とつながった取り組みで存在価値を伝えることも重要になっています。そこで注目しているのが株式会社フードサプライの「肉野菜炒め ベジ郎」と株式会社MUGENの「炭火焼濃厚中華そば 海富道(しーふーどう)」。どちらも行き場をなくした食材を利用し、フードロス問題を解決しながら生産者とWin-Winの関係を築いています。こうした助け合いの取り組みといえば、複数の外食企業がコラボした東京・立川の「GALERA TACHIKAWA」も好例。株式会社MOTHERSの保村良豪さんが発起人となり、あえて人通りの少ないエリアに中央線沿線の人気店10店舗が集まる飲食スポットを作ったことで、街の人流が大きく変わりました。個店集合業態として横丁ではなくフードマーケットと称することで、ランチ需要も取り込んでいます。

 今後の外食業界はDX化が進み、徹底的に人件費を削って他の価値を高める「フードテック業界」と、人が行う仕事を絞り込んでその質を高める「フードサービス業界」に分かれていくのではないかと見ています。ただし、どちらも目指すところは“顧客体験価値の向上”であることに変わりありません。それをテクノロジーで創出するのか、人が行うのかの違い。DX化をすると無機質になると勘違いされる方もいらっしゃいますが、テクノロジーを活用して顧客体験価値を高めるのがDXです。これからはどこをテクノロジーに任せ、どこを人の手で担うのかを見極め、顧客体験価値をいかに上げるかということがポイントになりそうです。

 一方で、コア人材の育成も大切です。人がいなければ新しい挑戦もできません。コロナ禍で店を離れたスタッフも多いと思いますが、次に向けた企業・店づくりのために残った人材を戦力化していく必要があります。まずは理念やビジョンをしっかりと定めること。そこが徹底していれば同じ方向に向かって走ることができますし、アフターコロナの人材争奪戦の中でも選ばれる企業・店になれるのではないでしょうか。

「飲食店経営」副編集長 三輪大輔氏
1982年生まれ、福岡県出身。2007年法政大学卒業。2019年7月から「月刊飲食店経営」の副編集長を務める。2021年12月には「外食業DX」(秀和システム)を出版するなど、外食の最前線の取材に力を注ぐ。
月刊「飲食店経営」(株式会社アール・アイ・シー)
フードサービスのダイナミズムを追求する、マネジメント専門誌。外食マーケットの実態に切り込み、業界の展望をわかりやすく解説。「スタッフ力」「店舗力」アップのための実践的な情報を提供する。1975年創刊。