2019/12/05 繁盛の法則

3段階で焼く独自の調理法で個性を出した焼きそば店とは

焼きそば専門店である「東京焼き麺スタンド」は、2018年7月に東京・下北沢、2019年8月に神保町にオープン。よく焼いた太めの中華麺が特徴の「スーパー焼きそば」を看板に、ひと味違うソース焼きそばを提供している。

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東京焼き麺スタンド 神保町店

Key Point

  1. 3度焼きで麺のおいしさを訴求
  2. シンプルな具材と独自のソースで差別化
  3. ナポリタンを加えて客層や利用動機を拡大

外食の中でも注目され始めた焼きそばで独立開業を実現

 「東京焼き麺スタンド」という店名が示すように、しっかりと焼いた麺のおいしさが際立つソース焼きそば専門店が、外食の新たなジャンルを拓こうとしている。2018年7月にオープンした10坪14席の東京・下北沢店に続き、2019年8月に13坪15席の神保町店がオープンした。

 看板商品の「スーパー焼きそば」(800円)は、よく焼いた太めの中華麺を渦巻状に器に盛り、目玉焼き、紅ショウガをトッピングする。麺と一緒に炒める具材は、豚バラ肉とキャベツのみ。麺の上には青ノリ、目玉焼きの上には塩・コショウを振っているが、素材としてはシンプルな構成である。3回行う麺の焼きに加え、炒め油に使うラードのコク、オリジナルソースの深みのある味わいなどで、ひと味違うソース焼きそばを創り出している。

 オーナーの黒田康介氏は、1992年、兵庫・姫路市生まれで、2011年の一橋大学商学部経営学科への進学を機に東京に移り、卒業後は大手証券会社に入社した。いずれは独立して経営者になりたいという想いと、もともと食べることが好きで食べ歩きをひたすらしていた経験や、親戚に飲食店経営者がいたことから、幼い頃から興味を持っていた飲食業で独立を決意した。

 商材として焼きそばを選んだのは、自身が好きな料理であることと、数年前から専門店ができ始め、焼きそばが改めて注目され始めた時期だったことに加え、各店を食べ歩いたなかでも、自分が作る焼きそばが一番おいしいと自負したからだという。

 「マーケットとしても焼きそばは非常におもしろいと思います。ラーメンは、それぞれの店主の知識や商品のレベルが相当上がってきているので、かなり高度化しないと難しい。また、ラーメンのなかでも様々なジャンルが増え、各店が個性の際立ったラーメンを出しているので、食べる人の嗜好も細分化しています。その点、ソース焼きそばは、ひとつの確固とした分野として存在しています」と黒田氏は分析する。また1号店の出店に際しては、若者が多く、新規参入も受け入れられやすい場所として下北沢を選び、オープンの約1年前に物件を契約した。勤務後に下北沢に通っては商品開発や開店準備を進め、2018年5月末に証券会社を退職すると、翌日からプレオープンし、約1カ月のオペレーションなどの再確認を経て、7月1日に正式オープンした。

看板商品の「スーパー焼きそば」(800円)。麺は茹でた後の状態で1人前に250gを使用。5割増しとなる「麺大盛」(100円)、「肉増量」(150円)、「キャベツ増量」(100円)などを追加できる。また卓上には、七味唐辛子、辛子マヨネーズ、土佐酢を用意しており、途中で味を変えながら楽しめるようにしている。将来的には、外国人の好きな日本の食べものランキングの上位に、焼きそばがランクインするようになればと、期待を膨らませている

都内での多店舗展開に加え将来的に海外進出も目指す

 麺は三河屋製麺製で、北海道産小麦100%の太めの生麺を使用している。まず50食分ずつスチーマーで茹で、サラダ油、ゴマ油、ラードなどを調合した油で和えて劣化を防ぐ。次に1食ずつ少量のラードと麺だけで下焼きする。麺の表面積の7~8割にきつね色の焼き色がつくように2~3分焼き、全体に魚粉をまぶす。豚バラ肉は、出汁しょうゆに1日漬け込んで下味を付け、やや低温で蒸し焼きにしておく。キャベツは国産で季節によって産地を変え、葉の厚みのある部分を使い、シャキッとした食感が残るように調整する。

 オーダーが入ると、仕上げ焼き用の強力ガスバーナーに中華鍋をかけ、ラードを入れ、下準備しておいた豚肉を入れて焼きめをつける。そこに麺を入れ、魚粉を加えてまぶし、キャベツを入れたらソースを加え、約1分あおって完成する。ソースは、無添加、無化学調味料の市販のウスターソースと中濃ソースが約4割で、残りの6割は出汁、しょうゆ、スパイスなどを調合したものだ。

 下北沢店をオープンした3カ月後にお客の要望に応えて「スーパーナポリタン」(880円)をメニューに加えた。あくまでも焼きそば店がつくるナポリタンという位置付けで、あえて太めの中華麺を使用し、具材はウインナーソーセージ、ベーコン、タマネギ、ピーマン。トマトソースは、市販の2種のトマトケチャップが約5割。残りの5割はカットトマト缶のジュースの部分で、くどくなく、塩味が強すぎないように調整し、隠し味としてしょうゆと焼きそば用のソースを加えている。ナポリタンは1日30食限定で、焼きそばも120食までの提供としている。客単価は900円強で、平均月商は下北沢店が200万円、神保町店が300万円となっている。

 同店がこだわり抜いた独自の商品で、焼きそばの新たな可能性を引き出している要因は、以下のようになるだろう。

  1. 3回の焼き工程で麺のおいしさを際立たせる調理方法を工夫している。
  2. シンプルな具材とオリジナルソースで独自性を打ち出している。
  3. ナポリタンもメニューに加え、客層や利用動機を広げている。

 「“焼きそばなのに、メッチャうまい”というのが、私の目指している理想なのです」と語る黒田氏。商品にこだわりながらも、あくまでも庶民的な麺料理である焼きそばとして、気軽に来店してほしいと考えている。今後も多店舗化を進め、まずは都内に10店、その過程で海外進出も狙う考えだ。

東京焼き麺スタンド 神保町店
住所
東京都千代田区神田神保町1-5-13
TEL 050-5597-6545
営業時間
11:00~21:00(LO.20:30)、土・日曜日・祝日11:00~17:00(LO.16:30)
定休日
無休(臨時休業あり)