2020/01/10 繁盛の法則

多彩な利用動機に対応するカジュアルイタリアンとは

東京・代々木にあるイタリア料理店「ラブォナヴィータ」は、繁華街から外れた立地にありながら、カジュアルな雰囲気で口コミやSNSで幅広い客層を獲得。隣接するビルにピッツェリアも出店し、連携して営業している。

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ラブォナヴィータ

Key Point

  1. 鮮やかな料理により口コミで顧客を増やす
  2. カジュアルな雰囲気で幅広い客層に対応
  3. 隣接のピッツェリアと連携して営業

馴染み深い飲食業に進み、ホテルや都内の有名店で修業

 旬の食材を使い、カラフルで見た目にもインパクトのある料理が特徴の「ラブォナヴィータ」は、東京・代々木の繁華街から少し外れた立地にありながら、口コミやSNSで顧客を増やしているイタリア料理店である。オープンは2014年9月で、2年後の2016年11月に隣のビルにピッツェリアを出店した。30坪のレストランは、オープンキッチンの臨場感を重視し、キッチンを囲むカウンター15席と、テーブル席30席の計45席を配している。16坪20席のピッツェリアの商品構成はレストランとほぼ共通だが、こぢんまりした空間を活かし、個室として、あるいは貸切の利用にも対応している。オーナーシェフの石井資万(いしいもとかず)氏は、「年齢を問わず来てもらえるような、カジュアルでフランクな店にしたかった」と、コンセプトを語る。実際に、ベビーカーで来店する子ども連れから、イタリア料理にあまりなじみのないシニアまで幅広く来店しており、地元での支持の高さがうかがえる。

 石井氏は1980年に千葉・市原市で生まれ、実家は寿司店を、伯父も隣の袖ケ浦市でカフェを経営しており、飲食業とはなじみ深い環境で育った。伯父が国道沿いの大型カフェを改装オープンした際に声をかけられ、高校卒業と同時にカフェに入店し、パスタを担当することになった。3年半ほど働き、パスタ以外の料理にも関心を持つようになった石井氏は、「もっとスキルを上げたい」と、千葉・海浜幕張の「ホテルニューオータニ幕張」のダイニングに移った。3年ほど経ったときに、同ホテルで東京・銀座のイタリアンの名店「ラ・ベットラ・ダ・オチアイ」のフェアが企画され、石井氏が同フェアの担当者となった。そのため、銀座の本店で研修を受け、オーナーシェフの落合務氏とも面識ができた。これを機に、誘いを受けてラ・ベットラに移り、半年後に副料理長に、その1年後には料理長に抜擢され、約8年半勤務した。

手前がコース用の「特製前菜盛り合わせ」で、ジャガイモの冷製スープ、アジのサオール(イタリア風南蛮漬け)、イタリア産水牛のモッツァレラチーズを使ったカプレーゼなどを盛り合わせている。奥が石井氏のスペシャリテで、自家製手打ちパスタとたっぷりの海の幸を使った「うにとずわい蟹、いくらをのせた いかすみを練り込んだタリオリーニ」(2,400円)。思わず写真を撮ってSNSにアップしたり、口コミで広めたくなる鮮やかさと豪華さだ

隣接地にピッツェリアを出店し、相乗効果を上げる

 「東京での勤務を2年ほど経験したら独立しようと思っていたのですが、料理長を任されると責任も重くなります。その間に東日本大震災が起こり、今は動くときではないと考えたこともあり、自分に甘える部分が出てきていたのです。そんななか、たまたま、ある集まりに参加したときに、同い歳ですでに起業している人と知り合いになりました。異業種ですが、その人は経営者、自分は料理長とはいえ雇われている身。自分を見つめ直す機会になり、小さい頃からの夢であった独立したいという野心にもう一度火がついたのです」と石井氏は振り返る。独立する意志を固めて物件を探し始め、半年ほどかけて見つけたのが現物件だった。2014年5月に契約し、開業準備を進めながらラ・ベットラには同年8月まで勤務し、9月に独立開業を果たした。

 開店直後から、今まで地域になかった本格的なイタリア料理店として歓迎され、オープン景気、その後の年末年始の繁忙期と続き、順調なスタートを切った。2年ほどは来客数に多少の波もあったが、次第に軌道に乗り、現在ではコンスタントに集客できるようになっている。

 2店目を構想し始めた頃、別件で立ち寄った不動産業者から、隣のビルの1階のテナントが空くという情報を得た。石井氏は「借りたい」と即答し、それまで要望があっても提供できなかったピッツァをメインにすることにした。ガスを熱源とする石窯を使ったピッツェリアとし、2店を連携させながら営業する独自のスタイルを取るようになった。ピッツァは厚手の生地のナポリ風ではなく、薄めのクリスピーな生地のローマ風とし、酒肴としても楽しめるようにした。

 平日のランチは、写真映えするサラダと前菜の盛り合わせが付くパスタセット、ピッツァセット(各999円)のお値打ち感が際立つ。2019年10月の消費税増税時に、税込1000円から1円の値下げを敢行した。昼の客単価は平日1500円、土・日曜日・祝日2500円で、レストランで1日60~100名、ピッツェリアで20~30名を集客する。夜は、料理1品とドリンクでさっと立ち寄るバール的な利用から、会食やパーティまで幅広い需要に応えている。2時間制、1人1000円の飲み放題も好評で、客単価は5500円、レストランで60~80名、ピッツェリアで20~30名を誘引している。

 同店が使い勝手のいいイタリア料理店として支持されている要因は、以下のようになるだろう。

  1. 旬の食材を使った鮮やかな料理で口コミやSNSで顧客を増やしている。
  2. カジュアルな雰囲気で幅広い客層、利用動機に対応している。
  3. 隣接地にピッツェリアを出店し、連携して営業している。

 「まずは今の2店をより充実させていきたい」と語る石井氏。毎年イタリア各地に出向き、刺激やヒントを得て、さらなるレベルアップに努めている。

ラブォナヴィータ
住所
東京都渋谷区代々木1-45-4 代々木山陽ビル 1F
TEL 03-6276-3212
営業時間
12:00~15:30(L.O.14:30、土・日曜日・祝日11:30~)、18:00~23:00(L.O.22:00、金・土曜日・祝前日~23:30)
定休日
不定休
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