2020/02/06 繁盛の法則

店内でていねいに仕込む料理で常連客をつかむ“お米カフェ”とは

20品目以上のランチメニューをそろえる東京・田町にある「お米カフェ マキバスタイル」。店内で手間暇かけて作った角煮やローストビーフ、海鮮などをプチ丼として多種類組み合わせたメニューで、人気となっている。

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お米カフェ マキバスタイル

Key Point

  1. 毎日精米する白米とふっくらした玄米で差別化
  2. 25種そろえたプチ丼で多様なニーズに対応
  3. 時間をかけて仕込むお値打ち商品が好評

様々な業態で修業後、小容量の丼の店を創業

 20品目以上の多彩なランチメニューをそろえる「お米カフェ マキバスタイル」は、東京・田町のビジネス街で、週に数回利用するリピーターを多くつかんでいる。「お米カフェ」と銘打つように、米にこだわり、玄米を仕入れて毎日店内で精米し、4台の炊飯器でこまめに炊き上げる。ほとんどの定食で玄米か白米かを選ぶことができるが、玄米でもふっくらと柔らかく炊き上がっていることを知るお客が多く、7対3で玄米のほうがよく出ている。定食類は835~1110円とリーズナブルで、昼の客単価は950円。昼夜通しで営業しており、ランチメニューは17時までオーダーできることも魅力だ。

 オーナーである株式会社馬木場の代表取締役・高野秀則氏は、1963年生まれ。静岡出身で、17歳でラーメン店のアルバイトを始めて以来、飲食業一筋に和・洋・中、酒類主体の店まで、多彩な経験を積んだ。独立するにあたり、気軽に食べられる丼ものをメインにしながら、「ステーキ丼も食べたいけれど、海鮮丼も食べたい」というニーズに応えられるよう、1杯分の米が約130gの“プチ丼”を約40種そろえる店を考えた。そのタイミングで、JR田町駅の三田口からほど近い場所に、厚生労働省所管の財団法人が運営する「女性と仕事の未来館」が開設されることになり、高野氏は館内の飲食テナントを募集していることを知った。そこで温めてきたコンセプトで応募したところ、約20社の中から選ばれ、同館の2階で2008年9月に独立開業。店舗規模は30坪47席で、リピーターが多く、施設の特性もあり、少しずついろいろなものを食べたいという女性から支持され、女性が約95%を占めていた。

 ところが2010年11月に、当時の民主党政権下で行われた事業仕分けにより、同館は「閉鎖」という判定が下り、翌2011年3月末に閉館。その後、別の施設にリニューアルされ、同店はしばらく営業を継続していたが、2014年3月に使用許諾が打ち切られることに。高野氏は勧告を受けてからの1年間、移転先を必死で探し、同じ田町駅で、反対側の芝浦口から徒歩5分ほどの現物件を契約し、同年6月に移転オープンした。現店舗の規模は30坪60席で、男性ビジネス層が多い立地であることから、現在の男女比はほぼ半々となっている。

ランチタイムのベストセラー「角煮&ローストビーフの王様丼ランチ」(980円)、サラダ、味噌汁、香の物付き。手間暇かけて店内で仕込む2つの人気商品を盛り合わせており、1日に20食近く出ることもある。米は千葉と茨城産の玄米を仕入れ、その時々の水分量や固さに応じて精米度合いを変えており、冬季であれば栄養分の多い胚芽部分などを4割残す六分づきにしている。玄米のまま炊く場合は前日から水に浸け、加水量を多めにし、冷たい状態から圧力のかかる炊飯釡で炊くことで、ふっくらと柔らかい食感に仕上げている

プチ丼2種セットの導入でランチの売上記録を更新

 プチ丼は変わらぬ人気商品だが、選びやすさやロスなどを考えてアイテムを絞り、現在はランチで16種の組み合せ(900~1040円)、ディナーはプチ丼25種から2種を選べ、サラダ、サイドディッシュ、スイーツまたはドリンクが付く「プチ丼プリフィクスset」(1518円)を提供している。夜はアルコールも豊富にそろえ、客単価は2200円。1日平均で昼は60人、夜は30~40人を集客している。

 同店は、米のほかにも1つひとつの素材にこだわり、店内で手間暇かけて仕込むことで、クオリティの高い料理を手ごろな価格で提供したいという方針を貫いている。例えば、マグロは本マグロを骨付きの状態で割安価格で仕入れ、毎日1時間ほどかけて店内でさばくことで、お値打ち感の高い人気メニューとなっている。また、トロトロに煮込んだ「コラーゲンポーク」も好評。コラーゲンが多い豚の軟骨部分を仕入れ、圧力鍋で80分かけて柔らかく煮込んだものだ。圧力鍋を導入する前は、普通の鍋で8時間かけて仕込んでいたという。味付けは、砂糖、みりん、しょうゆだけとシンプルだが、大量に出るアクをていねいに除き、ネギ、ショウガを加えて臭みを取っている。このコラーゲンポークを目当てに来店する中国人客もいるという。

 同店が手間暇かけた料理で常連客を引き付けている要因は、以下のようになるだろう。

  1. 店内で毎日精米する白米と、ふっくら炊き上げる玄米で、「お米カフェ」として差別化している。
  2. 25種そろえたプチ丼で、少しずついろいろなものを食べたいというニーズに応えている。
  3. 本マグロやコラーゲンポークなど、店内で時間をかけて仕込んだお値打ち商品で評価を高めている。

 現在地に移転してきた当時は、半径100m圏内の飲食店は4店舗ほどだったが、現在は10店舗以上に増え、競争が厳しくなってきた。そこで2019年4月からランチタイムに導入したのが、プチ丼2品を組み合わせた16種類のセットで、じわじわと販売数を伸ばすのと同時に客単価アップにつながっている。2019年12月には移転後の1日のランチの売上が新記録を達成し、さらに2020年1月にはその記録を2回更新した。また、周辺のオフィス街の少し先には大型マンションができ、居住人口も急増している。「もっと告知して、この地域に住む方々にも来ていただけるような店にしたいと強く思っています」と、高野氏は近隣住民の取り込みを直近の課題に掲げている。

お米カフェ マキバスタイル
住所
東京都港区芝浦2-16-7 中野第三ビル2F
TEL 03-3457-2303
営業時間
11:30~23:00(L.O. 22:00、土曜日18:00~)
定休日
日曜日(祝日は不定休)