※スマイラー101号(2024年6月)より転載
横浜・関内の立ち飲み食堂「ウルトラスズキ」
「もしかして鈴木さんではありませんか?」
「え? いえ、違いますが」
「うちは店名のウルトラスズキにちなんで、鈴木さんは、お好きなレモンサワー1杯が無料になるんです」
「そうなんですか。同僚に鈴木さんいますから、今度連れてきますよ」
「ぜひ、お願いします」
初来店のお客様との定番の会話だ。
初めての店に入るときは、誰でも少し緊張する。どんな店なんだろう、楽しく過ごせるだろうかと、どうしても不安になるからだ。「最初は表情の硬いお客様が多いんです。笑顔じゃない。だから最初は肝心なんです。ちょっと意外な声掛けで、何?となったところで、種明かしするというコミュニケーションなんですが、意外性のおかげか、この会話はキャッチボールになりやすい。心がほどけて、笑顔になってくれる。ちょっと面白いお店かもという期待につながってくれたらいいなとも思っています」と語るのは、接客担当の鈴木 賢さん。
「ウルトラスズキ」は、料理担当の瀬戸 貴志さんと、ドリンク担当の真島 卓郎さんと鈴木さんの3人で共同経営している。元々は同じ飲食関連の会社で一緒に働いていた同僚だったという。
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「ウルトラスズキ」の4つの接客術
1.遊び心が感動を呼ぶ
2.お客様を不快にさせない番人
3.お客様の横で一緒に楽しむ接客
4.3人のエンターテイナー
1.遊び心が感動を呼ぶ
「ウルトラスズキ」のオープンは2020年6月。本当は4月オープンの予定だったが、コロナ禍での緊急事態宣言を受けて6月に延期した。前途多難な船出だった。
「時短営業やアルコール販売も自粛要請などが出されてましたから、どうしようと思ったのですが、朝カレー屋さんをやりました。スパイスは免疫力を向上させるということで、みんなに元気になって欲しいという想いを込めたスパイスカレーです。一杯1,200円で提供したのですが、医療関係者は100円にしました。もう儲けることはあきらめて、社会に少しでも貢献して、できればお店を覚えてほしいと思ってのアイデアです」(鈴木さん)。
鈴木さんをはじめとする、3人の共同経営者は、みなアイデアマンなのだろう。ウルトラスズキという店名、鈴木さん一杯無料、30種のレモンサワー、話題になりやすい仕掛けがたくさんある。聞いてみたら、案の定クチコミを狙ってのアイデアだという。記憶に残りやすく、人に話したくなるという意味では、どのアイデアも秀逸だ。
なかでも、これは面白いと感心したのは「まるごとセロリレモンサワー」。30種のレモンサワーのうちの一つ。レモンサワーのグラスに葉っぱ付きの太いセロリが一本刺さって出てくる。見た目のインパクトだけでなく、自家製バーニャカウダのディップが付いてくるので、セロリがおいしいつまみになるのもいい。そしてもちろん、おいしい。ユニークで遊び心たっぷりのアイデアは、そこで終わらず、口にしたときの感動もしっかりとある。それがウルトラスズキのおもてなしであり、エンターテインメントなのだ。
2.お客様を不快にさせない番人
実は、今回の特集で筆者が取材をしたいと申し入れたとき、鈴木さんから「私の接客は、全然エンターテインメントじゃないですよ」と断られかけた。確かに、派手なパフォーマンスなどで盛り上げるようなことはなく、こう言っては失礼だが、むしろ普通。しかし、常連客の多くが鈴木さんの接客を絶賛し、鈴木さんに会いたいと来店する。その秘密はどこにあるのだろうか、と営業中のお店を訪問し、観察していると、鈴木さんとの会話を楽しんでいる様子が見て取れるお客様が多いことに気づく。
鈴木さんは、そのお客様の前回の訪問時のことや、SNS等に投稿した内容などを覚えていて、そんな話で盛り上げている。お客様のことをよく見ているのだろう。好みも把握しているのか、お客様が注文したメニューを、「これはおすすめしません。お客様にはこっちのメニューの方がいいと思いますよ」などと話している会話も聞こえてきた。このお客様視点での気配りこそが、ウルトラスズキの接客の秘密なのかもしれないと思い、鈴木さんに一番大切にしていることは何かと聞いてみた。
「この空間にいる全員に不満や不快を感じさせないことです。私の役割はそのための番人だと思っています」という返事。「特に、お客様と目が合う回数は意識しています。お客様が顔をこちらに向けたときに、その店員となかなか目が合わないような店は、お客様は不安になるし、不快になります。だからすぐに目を合わせるように気をつけています。注文したいのか、話をしたいのか、お客様に声をかけられる前に気づくことが大切なんです」。
3.お客様の横で一緒に楽しむ接客
先ほども述べたが、ウルトラスズキは、ユニークで遊び心たっぷりのメニューが、すでにエンターテインメントだといえる。壁には、レモンサワーの人気ランキングが貼ってあったり、選ぶワクワクを高めるように工夫されている。
そして、それはレモンサワーだけではない。「ウイスキーも30種以上を揃えていますし、生ビールにもこだわっています。鮮度を損なわないように毎日洗浄し、清涼感を感じやすい銅のマグで提供しています。ひと味違うおいしい生ビールが飲めます。料理も、『ふわふわオムレツ 黒トリュフソース』『鴨もも肉のコンフィ』『こぼれトロロのマグロタルタル』など、普通の立ち飲みとは一線を画す本格的なメニューが並んでいます。だから、次は何を食べようか、何を飲もうかとテンションがどんどん上がって、楽しくなるというのが、うちのエンターテインメントなのかもしれません」。
鈴木さんは、このエンターテインメントをお客様により深く楽しんでもらうためのアテンド役といえるかもしれない。お客様をその気にさせる接客とでも言おうか、お客様の横に立って一緒に楽しむ接客。たとえば、お客様が「おいしいですね」と言ってきた時には「ねえ、おいしいですよね」と返す。まさにお客様目線。瀬戸シェフはすごい、自分も食べて感動したと、お客様と同じ立ち位置から会話する。
4.3人のエンターテイナー
一流のエンターテイナーは、観客の空気を読みながらパフォーマンスをするという。どんなに素晴らしいパフォーマンスでも一方通行の押し付けになってしまっては、感動には至らない。そして、しっかりとした基礎があるからこそ、積み重ねた技術と経験があるからこそ、そのパフォーマンスはエンターテインメントに昇華する。
ウルトラスズキのスタッフは、共同経営者の3人だけだという。いつ行ってもこの3人が店にいる。「これがうちの一番の強みだと思います。お客様は、いつ来ても前に来た時と同じクォリティーで楽しめますから」。
ウルトラスズキのエンターテインメント接客は、鈴木さんだけでなく、3人それぞれの高いパフォーマンスがあるからこそだ。役割の違う基礎と経験がある高度なエンターテイナーが3人集まったこと、それがウルトラスズキを多くのお客様が愛している秘密なのかもしれない。
神奈川県横浜市中区太田町4丁目45 第一 国際ビル1階
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スマイラー101号(2024年6月)より転載
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