2019/01/22 特集

コストを抑えて楽々オープン! 飲食店向け、居抜き物件のチェックポイント完全版

出店時にコストが抑えられることで、人気の「居抜き物件」。一方で中古物件であるがゆえに見極めが難しい面も。そこで、飲食店の居抜き物件を内見する際に、どんなところをチェックしたらよいかをプロに聞いた

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更新日:2023.12.5

 内装や厨房・空調設備などがそのまま使え、出店時にコストが抑えられることで人気の「居抜き物件」。一方で、中古物件であるがゆえに、不動産の知識の浅い人が物件を見ても、見極めが難しい面もあり、オープンしてからトラブルになることも。そこで、飲食店の居抜き物件を内見する際に、どんなところをチェックしたらよいかを、居抜き物件の転賃借を手がける株式会社テンポイノベーションの首藤雄大氏に聞いた。どんな飲食店にしたいのか明確にした上で居抜き物件をチェックすること、ガス・電気・水道などが考えている業態に合った容量か、希望する造作ができるかなどの確認が重要だという。

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お話を聞いたのは 株式会社テンポイノベーション 取締役 物件管理部長 首藤雄大(しゅとうゆうた)氏
株式会社テンポイノベーションは2005年4月に創業し、飲食店舗に特化した転貸借事業を展開。不動産仲介や不動産管理業とは違い、不動産オーナーより店舗物件を賃借し、飲食店テナントに転貸借している。取り扱う物件を東京周辺の居抜きに絞り込み、年間300件以上を成約する。首藤氏は2013年5月に入社。2017年11月に物件管理部長に就任し、2018年6月より現職。安心・安全に転貸借できるよう、契約に関わるトラブルの解決や更新業務などを行う部門を統括する。

目次
居抜き物件は費用と工期の圧縮が魅力。リスクがあることも念頭に
どんな飲食店をやりたいかを明確にして物件のスペックを確認
【CHECK POINT 1】ガス・電気・水道
【CHECK POINT 2】ファサード
【CHECK POINT 3】外の設備
【CHECK POINT 4】厨房
「知らなかった!」では済まされない。物件契約書、ここをチェック!

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居抜き物件は費用と工期の圧縮が魅力。リスクがあることも念頭に

 飲食店向けの賃貸物件で、近年、急速に増えているのが「居抜き物件」。首藤氏は「以前は、居抜き物件の流通はほとんどなく、形になってきたのはこの12、3年くらいです」と語る。「現在は、居抜き物件の認知が広がり、一般的な取引形態の1つになっています」と話す。

 「居抜き物件」とは、内装や厨房・空調設備など、主に営業用設備の全部、または一部が残っている不動産物件のこと。本来、事業用の賃貸物件はスケルトン(備品・内装が何もない空間)の貸借が基本で、営業に必要な設費用と工期の圧縮が魅力リスクがあることも念頭に備はすべて借主の資産とされる。したがって、退去時はそれらすべてを撤去し、原状回復することが原則とされる。そのため、借主が「原状回復費用(撤去費用)を節約し、作り込んだ設備などの資産を含めて、次の借主に譲りたい」と考えるのは、自然な流れ。設備を新しい借主に譲渡することで、投資の一部を回収できることも、取り扱い件数が増えている理由の1つだ。

 一方、新しい借主から見れば、一から店舗を作り込むよりも、開業時の初期投資を抑えられるのが魅力。「20坪の店舗の場合、スケルトンから店舗を作ると、一般的に1000万円前後かかりますが、居抜きなら費用をかなり抑えることができます。また、スケルトンでは、内装工事に1~2カ月かかりますが、居抜きなら工期を短縮でき、早期の開店が可能です」(首藤氏)。費用と時間の双方で、大きなメリットがあるといえるだろう。

 しかし、デメリットもある。その1つが「店舗空間のレイアウトが、ある程度、決まっていること」と首藤氏。スケルトンから自由に作り上げる場合と比べると、内装デザインに制約があることは否めない。同時に、首藤氏は「内装や機器は中古であるため、リスクがあることを覚えておいてほしい」と指摘する。メンテナンスが必要になるケースもあり、その際には時間と費用がかかる可能性がある。前使用者がどんな使い方をしてきたかわからないため、見えない部分で予想以上に劣化していることもあるという。

 もちろん、費用と時間をかければクリアできることも多い。だが、初期費用を抑えられるメリットが損なわれるようでは意味がない。メリットを活かせるよう、見極めが必要だ。

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どんな飲食店をやりたいかを明確にして物件のスペックを確認

 さらに、首藤氏は「自分がどんな店、業態にしたいのかを明確にし、それが実現できるスペック(仕様)があるかどうかという視点が大切です」と強調する。例えば、立地と内装は気に入ったが、中国料理を作るにはガスの容量が足りないこともある。そもそも飲食店は、美容室などの他業種に比べ、ガス・電気・水道などのインフラはより大きな容量が必要。加えて、同じ飲食でも、カフェとレストランでは必要なインフラが違うので、やりたい店を明確にすることは、最重要事項の1つといえる。

 また、「建築基準法や消防法などの法令も念頭に置くべき」と首藤氏。法令は現行法が適用されることが基本なので、前店がオープンしたときにクリアできていたことが、途中で法令が改定されたため、現在では許可が下りず、追加の工事や設備が求められることもある。例えば、2019年10月からすべての飲食店で消火器の設置が義務付けられるほか、30坪以上の物件で事業所から飲食店にする場合は、自治体へ用途変更の手続きが必要なことも。法令手続きにかかる費用と時間も見込んでおくことが大切だ。

 では、次から具体的に居抜き物件のチェックポイントを見ていこう。

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【CHECK POINT 1】ガス・電気・水道

インフラの容量確認が最重要! 店舗内部だけでは解決できないことも

 居抜き物件の中で最初にチェックしたいのが、ガス・電気・水道などのインフラ。これには、2段階の確認が必要だ。

 まず、当該物件のガス・電気・水道のそれぞれが、業態に見合う容量を備えているか。次に、それらの容量が不足した場合、店舗内部の工事で解決できるのか、それとも建物自体に工事が必要なのかという確認である。「店舗の中で完了することであれば、問題ありませんが、建物所有者の資産に対して何らかの工事が必要な場合は、所有者への許可が必要になります。許可が下りない場合もありますし、費用を借主が負担しなくてはならないこともあります」と、首藤氏は語る。

 ガスに関して言えば、スナックやカフェ、寿司店などと、イタリアンやフレンチ、中国料理では必要なガスの容量が大きく違う。自分がやりたいと思っている業態が、現在のガスの容量で十分かどうかを、まず確認しなければならない。前の店と同じような業態ならば、クリアできる可能性は大きいが、特別な厨房機器を入れたい場合などには、やはり念入りな調査が必要だ。

 問題は、容量不足が判明したとき。ガスは、道路に埋設されている本管から各建物に引き込まれ、それが各部屋(テナント)に振り分けられている。ガスの容量を増やすには、建物に引き込んでいるガス管を太い管に交換する必要があるケースも。店舗内部だけでは解決できないことも交換だけで容量を増やせるなら、借主の責任で行うことができるが、建物のガス管の交換が必要な場合には、建物所有者の資産に対する工事になる。所有者に対する許可はもちろん、時間と費用がかさむ可能性は大きい。

 こうした事情は、電気や水道でも同じ。とりわけ電気は、IH機器などの普及と、近年の酷暑によるエアコン稼働の増大によって、電力消費量はうなぎのぼりだ。また、客席の数やレイアウトによっても、必要な容量が変わってくる。客席を増やせば、人の熱量が増え、それだけエアコンの馬力が必要だ。電力量がどの程度必要で、物件がそれに対応できるのか、十分に確認したい。また、電線から建物への引き込みはガスと同様、所有者の管轄。築年数が古い建物などでは、そもそも電圧が低い場合もある。水道も店内の配水管を変えるだけで済むなら、床を開けて交換すればよいが、店の外は建物所有者の意向とともに、さらなる引き込みが可能なのかは、給水工事事業者の判断が必要だ。

 「こうしたインフラの状態についての判断は、素人では難しい。専門家に正確なチェックを依頼してください」と首藤氏。物件の内見の際には、信頼できる内装業者に同行してもらい、自分が作りたい業態や規模が、現在のインフラで実現するのか、追加の工事にはどの程度の費用と期間がかかるのかを正確に見積もり、総合的に検討することが肝心だ。

 実際、「理想的な立地でも断念せざるを得ないことはあります」(首藤氏)。出店後にトラブルが発生しては、損失も大きくなってしまうので、場合によっては、その物件を諦めることも必要。あるいは、運営方法を一考することで解決する場合もある。「すべてIH調理器にしたいという店舗がありましたが、電気の容量が足りなかったので一部をガスで代替してオープンしたケースもありました」と首藤氏。いずれにしても、納得できるまで、物件を精査してほしい。

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【CHECK POINT 2】ファサード

建物自体は所有者の資産。希望する造作ができるか確認を

 物件を見る際は店舗の内部だけでなく外部、特に店の顔となるファサード(正面部分)のチェックは意外に重要。少し見て、「問題なさそうだ!」と早合点しがちだが、そう簡単に運ばないこともある。

 「建物所有者の意向で、看板や照明などを前店と同様に設置できない可能性があります。建物自体は建物所有者の資産。無条件で以前と同様に使えるわけではないのです」(首藤氏)。前店が大きな看板を出していたからといって、同じ大きさの看板を掲示してよいとも限らず、建物所有者への確認が必要だ。そのほか、ファサードを立体的にしたい、テラスを作りたい、外壁を塗り替えたいなどの希望がある場合は、早めに建物所有者に確認したい。

 また、看板のデザインは、自治体によっては条例に抵触する場合もある。代表的なものが「景観条例」。景観を守るために、商業施設の看板の色や大きさを規制する条例が定められていることも珍しくない。これも現行法の適用が原則なので、前は看板が掲出できていても、これから設置する看板はNGとなることもある。自治体によって条例の内容に違いがあるので、同じ看板でもA市はOK、B市はNGとなることもあるので、注意したい。

 さらに、「自治体によっては、看板に対して『道路占用料』を徴収する場合もあります」と首藤氏。ファサードに立体的に取り付けた看板や、通行人が見やすいように、建物に対して直角に取り付けた「突き出し看板」(袖看板)やフラッグなどが、自治体が管理する道路やその上空に架かっている場合に、「道路占用許可」の申請を義務付けている自治体は少なくない。「占用料」がかかる場合もあり、料金も自治体によって、年間数千.数万円まで様々。「1号店の看板には、届け出も使用料も必要なかったのに、同じ看板を隣の市に出店した2号店にも取り付けようとしたら、届け出義務と占用料が発生して戸惑うということもあります」と首藤氏は語る。

 ファサードのデザインや看板は、視認性を左右する大切なアイテム。法令も含め、抜かりなくチェックしよう。

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【CHECK POINT 3】外の設備

隣とのトラブル回避のためにも機器の設置・稼動状況をチェック

 店の外ではあるが、店内の設備と一体のものとして点検したいのが、エアコンの室外機と排煙のダクト、屋外設置型給湯器などだ。

越境設置物の例。下側中央のブロック塀が隣接する建物との境界線だが、2階に設置されたエアコンの室外機の架台が越境して設置。本来、設置場所を変更しなくてはならない

 エアコンの室外機や給湯器は、きちんと作動するかどうかを確認するとともに、設置場所が妥当か、継続してこの場所が使用可能かどうかの確認をしておくと安心だ。「特に室外機は、明らかに隣家の敷地に越境して設置しているケースも見受けられます」(首藤氏)。越境設置は違法であるとともに、隣家とのトラブルになりかねないため、その物件に決めるならば、きちんとした対応が必要。合わせて、エアコンの結露水を排水するドレン管に問題がないかも確認したい。「ドレン管が傷んでいないか、排水が適切に流れているかなどを確認する必要があります」(首藤氏)。

 また、室外機は、建物の屋上などにまとめて置かれていることもある。屋上が施錠されていることも多いが、内見時にはできるだけ見せてもらい、状態を確かめよう。屋上が日常的に立ち入り不可の場合は、エアコンが故障したとき、すぐに対応できない可能性もある。開錠の方法や故障の際の対処方法を、所有者や管理会社に確かめておくことも大切だ。

排煙ダクトの油汚れが店舗に隣接する駐車場にも付着し、白線が真っ黒に。洗浄の必要があるとともに、対策を検討する必要がある

 排煙ダクトとその先、つまり煙がどこに排出されるのかも、要チェック。前の借主が設置した後に、周囲の事情が変化していることもある。自分が想定している業態によっては、排煙でトラブルとなる可能性もあるため、近隣との良好な関係を築くためにもしっかりと検討しよう。

【CHECK POINT 4】厨房

機器のほか、床の防水状況を点検。メンテナンス費用と工期の見積を

配管接続の不良で水漏れしている状態。厨房の立ち上がり部分から、漏水する可能性も。実際に水を流してわかることもあるため、しっかり確認したい

 店舗内部は、「厨房を重点的にチェックしましょう」と首藤氏。調理台、冷蔵庫、シンク、ガス台、給湯器、レンジフード、照明など、厨房の各機器の状態を念入りに確認したい。また、飲食店は大量の水を使用するので、水回りのチェックも重要。グリストラップがきちんと稼動しているか、漏水はしていないかも、慎重に点検しよう。内見の際、可能であれば、実際に水を流してみる、換気扇を回してみるといったことができると理想的だ。

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床の防水塗装がはがれている例。はがれたところから水が染み、においやカビ、害虫発生の危険がある。あらためて防水塗装が必要だ

 気をつけたいポイントの1つが、厨房の床。通常、厨房は基礎のコンクリートの上に深層防水塗装、表面となる床に表層防水塗装がされ、水漏れを防ぐ構造となっている。ところが、防水塗装は約10年で劣化することが多いため、前回の塗装はいつか、漏水の兆候はないかを確認する必要がある。特に厨房の立ち上がり部分は、ブロックで組まれているため、隙間ができやすい。「微細な水漏れでも放っておくと、においやカビ、害虫が発生する原因になります」と首藤氏。問題箇所があれば、メンテナンスの費用と工期などを確認しよう。

 さらに、「給排気のバランスが取れているかどうかもチェックするとよい」と首藤氏。給気量と排気量が同量に保たれていれば、室内は快適。だが、このバランスが崩れると様々な不具合が生じるという。「ドアが重くてなかなか開かない、トイレのにおいや下水臭が室内に漏れてくる、害虫が侵入しやすいなど、様々なトラブルの原因になる可能性があります」。小さな不具合を見過ごさず、違和感を覚えたら、妥協せずに要因を追求する姿勢を持つことが大切だ。

 そのほか、店内のエアコン周りの壁の水シミも要チェック。水シミがあれば、天井を通っている冷媒管の周囲が結露を起こしている可能性がある。また、トイレも忘れずに。「オープン時に節水型の新機種に変えたが、建物の構造上、水量が足りず汚物が流れないというケースもありました」。見極めが難しい面もあるが、念入りに確認したい。

「知らなかった!」では済まされない。物件契約書、ここをチェック!

 居抜き物件の賃貸契約で、特に気をつけたいのが、「何が譲渡されるのかを確認すること」と首藤氏。内見時の設備が、そのまますべて譲渡されるとは限らないからだ。なかにはリース契約の機器が含まれていたり、すでに譲渡先が別に決まっていたり、前借主が持っていくことも。「当社では、譲渡資産はすべてリスト化しています」と首藤氏。不動産会社がリスト化してくれる場合は安心だが、リストがない場合は、1つ1つの設備を確認することが求められる。

 そのほか、建物全体に関わる定期的なメンテナンスや清掃などの費用も確認が必要。また、物件によっては「土・日曜日の工事は不可」「工事の時間は10~17時」などのルールがある場合も。最初の工事でルール違反をすると、オープン前から近隣の評判を落とすことになってしまうので、気をつけたい。

 さらに、特約事項にも目を通しておこう。所属する商店街の会費や、行事への参加などが明記されていることもある。「地域とのお付き合いにつながる経費や規則は重要」と首藤氏は語る。「飲食店は周囲のすべてがお客様です。周辺のコミュニティに愛されてこそ、繁盛につながるはず」。長く愛される店になるべく、ルールの遵守と周囲への気遣いも大切な視点だ。

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