更新日:2024.9.20
価格設定の「黄金パターン」
飲食店経営におけるメニューの価格は、売上や利益にダイレクトに影響する重要なポイントです。日替わりメニュー以外は度重なる価格変更は避けたほうがよいため、開業時にしっかりと決めておきたいところ。
まずはメニュー全体の原価率が30%前後になるように調整するほか、店のコンセプトやターゲット層、客単価などを踏まえた上で、来店客が納得感やお得感を得やすい価格にすることが大切です。以下、メニューの価格を決める時のポイントや注意点を見ていきましょう。
※本記事の情報は記事作成時点のものであり、情報の正確性を保証するものではございません。
目次
1.原価率を目安に考えよう
・メニュー全体で原価率30%前後を目指す
・FLR比率やFD比率のチェックも忘れずに
2.店のコンセプトや客単価、相場感を意識しよう
価格帯はターゲットや店の雰囲気に合っているか? 競合店の価格設定は?
3.中心価格を決めて、3パターン程度の価格帯に
予算感をつかみやすくなると、お客さんはメニュー選びがしやすい
4.お得感を打ち出そう
「10円引き」、そして目玉メニューをあえてリーズナブルな価格に
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1.原価率を目安に考えよう
メニュー全体で原価率30%前後を目指す
メニューの価格設定をする上で、まず念頭に置きたいのが原価率です。原価率とは、メニューの価格に対する原価の割合を示す数値で、
原価率=原価÷売値×100
で表します。例えば1,000円の海鮮丼の原価が300円とすると、原価率は「300÷1,000×100=30」で30%となります。
メニューの原価率が高すぎると利益が出にくくなり、たとえ売上が上がったとしても、それでは赤字になりかねません。飲食店における平均原価率は30%前後といわれているため、まずはここを基準にすることが大切です。
ただし、個々のメニューを等しく原価率30%にする必要はありません。原価が高いメニューをきっちり原価率30%にすると価格も高くせざるをえず、注文が入りにくくなります。逆に、ポテトフライや枝豆などの定番メニューなら、そもそも原価が低く売価も低く設定できるので、原価率30%を下回る価格設定でも問題なし。「原価率40%だが集客に貢献する特別限定メニュー」「原価率20%の定番人気メニュー」といったメリハリを付けて、トータルで原価率30%程度となるように調整していきたいところです。
FLR比率やFD比率のチェックも忘れずに
また、原価率だけでなく、ほかのコストを俯瞰して見ることも大切です。例えば「FLRコスト」は一つの大事な基準になります。FLRコストとはFood(食材原価)、Laber(人件費)、Rent(家賃)の3大コストを指し、
FLR比率=(食材原価+人件費+家賃)÷売上×100
で表されます。このFLR比率は70%以内に収めるとよいといわれているため、食材費だけでなく人件費や家賃との兼ね合いも見てメニュー価格を設定するようにしましょう。
そして、Food(料理)とDrink(ドリンク)の「FD比率」も検討すべき指標の1つです。
FD比率
・食事メインのレストランならFD比率は「フード8:ドリンク2」
・居酒屋なら「フード6:ドリンク4」
・ドリンクメインのバーやカフェなら「フード2:ドリンク8」が目安。
この比率を基準に、どの程度の価格設定が妥当なのかを考えていきます。ドリンク類は原価を低く抑えることができ、かつフードのような仕込みもほとんど必要ありません。フードで上がった原価率はドリンクでうまく調整しするとよいでしょう。
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2.店のコンセプトや客単価、相場感を意識しよう
ターゲットや店の雰囲気に合った価格帯かチェック。競合店の視察も忘れずに
3.中心価格を決めて、3パターン程度の価格帯に
メニューの価格が店のコンセプトやターゲットに合致するかを考えることも大切です。例えば20代前半がターゲットのカジュアルな居酒屋で、高めの価格設定にしてしまうと敬遠されてしまうでしょう。逆に、デートや記念日利用を意識した隠れ家的なレストランなら、行き届いたサービスや落ち着いた内装、雰囲気の良さが売りであれば、ある程度高めの価格でも十分満足してもらえます。また、味に自信がある新メニューをあえて高めに設定することで希少性を打ち出し、注文率の増加につなげたというケースもあります。自店のコンセプトやターゲットをよく考えた上で、最適な価格設定を目指したいところです。
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また、来店客の注文シミュレーションも事前にしておきましょう。1人あたりの会計が想定する客単価になるかをチェックします。例えばイタリアンなら、想定する客単価が4,000円なのにドリンク2杯、前菜1品、メイン2品で3,000円なら、1,000円のズレが生じて経営が厳しくなってしまいます。客単価から逆算して個々の価格の調整が必要でしょう。
加えて自店と競合となりうる周辺の店舗を事前に確認しておくとよいでしょう。コンセプトやターゲットが似ている店をピックアップし、価格帯をチェック。競合店と比べて、自店が想定する価格が高すぎたりするようなら、調整すべきです。
予算感をつかみやすくさせ、メニュー選びをしやすく
メニュー全体の統一感を考えて「中心価格」を決めることも大切です。「中心価格」とは、メニューの主となる価格のこと。例えば700円のメニューが全体の過半数を占めるなら、700円がその店の中心価格。中心価格が設定できていると、来店客は予算のイメージがつかみやすくなり、メニューが選びやすくなります。
また、価格設定は3パターン程度にするのもポイント。中心価格が700円なら、「500円、700円、1,000円」などのように、分かりやすい差をつけるといいでしょう。リーズナブルな500円、中心価格の700円、ちょっとリッチな1,000円とすると、初めて来店した人でも予算のイメージがつかみやすくなります。これが例えば「500円、600円、700円、800円…」と100円刻みでバラバラだと、来店客はなかなかイメージがつかめずにストレスを抱えてしまうでしょう。
そして「中心価格の700円」の次に「リーズナブルな500円」の価格帯のメニューを充実させることで、「お得だからこれも追加注文しよう」という注文行動につながりやすくなります。価格は、来店客にとって注文動機の一つと言えます。
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4.お得感を打ち出そう
「10円引き」や目玉メニューをリーズナブルな価格に設定するのも有効
価格でお得感の打ち出しも行いたいところです。定番なのが「10円引く」という演出。1,000円よりも990円、600円よりも590円にしたほうが来店客にお得感を与えやすくなります。また、集客の引きとなる目玉メニューを手ごろな価格に設定することも有効。例えばランチタイムのパスタを500円とリーズナブルな価格で提供し、セットメニューとしてデザートやドリンク、サラダなどを付けて単価をアップさせたり、原価率が40%以上の目玉メニューを1日10品の限定メニューとして提供することで集客し、そのほかのメニューで原価率を調整する方法もあります。
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ここまで見てきたように、メニューの価格設定は「メニュー全体の原価率30%」の基本を守るだけでなく、「中心価格」「3パターン価格」「お得感」など、売上だけでなく利益や集客といった戦略も盛り込んで決めることが重要です。ここで紹介した価格設定のポイントをおさえて、メニューの価格を見直してみましょう。