Vol.23
from office,from schoolのお客はどんどん減る
飲食業の特徴のひとつは「寿命」が短いことです。新しい飲食店は次々に生まれますが、5年もつ店は3割と言われています。チェーン店も盛衰が激しく、成長期は3年です。その後の安定(成長)期はありますが、ハジけるような隆盛期は、わずか3年程度なのです。
他の業界と違って、いつも新トレンド店や新チェーンが参入してきます。その反面、「退場」する個店やチェーン店も後を絶ちません。常に追い立てられているような状況で、安泰ということがありません。よい見方をすれば、anytime chanceful(いつもチャンスがある)で、not too late(遅すぎるということがない)な希望に満ちたビジネスフィールドなのです。つまり、時代を読む、時流を見極める、時流に乗る、ということが非常に大事なビジネスです。少しでも目を離していると、足元をすくわれることになります。
今の時流の底にあるものは、高齢化社会です。団塊の世代という最大の消費層が65歳のラインを越え始めました。全人口の4分の1が、65歳以上になってしまったのです。あと2年ほどで労働人口としての団塊世代は消滅します。すでに、ほぼ消滅しかかっていますが、この変化は大きいです。
また、いわゆる居酒屋市場は縮小しています。若者が昔のようにお酒を飲まなくなったことが、その原因のひとつとして挙げられますが、最大の原因は、from office,from school(職場から、学校から)飲食店に向かう人口が減っていることにあります。そのかわり、from home(家から)の飲食市場は堅調です。
要するに「売れる立地」の激変が起こっているのです。簡単に言いますと、土曜・日曜に商売できない土地(例えば、オフィス街や学生街)は、これからますます厳しくなるということですね。居酒屋チェーンでは、この変化をいち早く察知して、from homeの市場を取れる立地(例えば、JRや私鉄沿線の駅前や駅近)に店を移動させています。自宅から来店する三世代ファミリーを呼び込もうという作戦です。つまり、ファミリーに支持される店に変身するということです。しかし、ただ場所を変えればよいというものではありません。ファミリーのニーズに適合するように、メニューはもちろん、店づくりなども変えなければなりません。
もちろん業態などによって狙う客層は千差万別ですが、「売れる立地」に移ってお店を変身させる際のポイントは…
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客単価の発想を、組単価に変える。
ファミリーでいくら支払えるか。その支払い可能単価を探らなければなりません。財布はひとつなのです。ファミリーに割カンはありません。 -
客層構成を考える
地域によりますが、「一家族6人」という構成が増える傾向にあります。個室ニーズも高まるでしょう。 -
深夜よりもランチを重視
from homeのランチ市場がぶ厚く存在します。一方、21時過ぎの来店客は減るでしょう。 -
アルコール依存度を下げる
売上の40%がアルコールで占めるようなことは、なくなります。上限が20%前後でしょう。ハードリカー(ウイスキー、ウオッカ、ジンなどの蒸留酒)はあまり出ません。アルコール比率の減少により、当然メニュー内容の変更が求められます。 -
家族がシェアして楽しめるメニューが、より求められる
三世代がシェアできて、それぞれが満足できるメニューが店の目玉にならなければなりません。和でも洋でも中華でも、シェア可能なメニューは無尽蔵にあります。 -
子供にうけるメニュー
子供(孫)客が来店するというのが、これまでと根本的に違うところです。子供が「また行こう」と言い出すマグネットを内蔵させることです。そのメニューは食べ物とは限りません。ワッと喜ばせるイベントや仕かけ「メニュー」になることもあります。
このような改造がうまくいくと、from homeの家族客を自店へ引き込むことが可能になります。立地が変わるということは、商売の中身が全部変わるということですから、よほどの覚悟を持って「変身」に取り組まないと、成功はおぼつきません。
とにかく、基本は家族に支持されるということですね。そして繰り返しますが、平日と土日・祝日の客層はガラリと変わります。その変化についていける受け入れ態勢ができているかどうか。ここが成否の分かれ目です。