2015/11/27 繁盛の黄金律

売上も利益も上がる、「社員のれん分け」に取り組もう

赤字店を譲り渡してはいけない-日本には「のれん分け」という制度があります。経営者が見込みありと評価した従業員を独立させるのです。その際は、利益が出ている店を譲ることが成功の大原則です。

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Vol.51

来店客数がみるみる上がってコストが急降下する

成功者は創業期に死にもの狂いで働きます。どの世界でも同じです。8時間労働、8時間睡眠を守って成功した創業者なんていません。

外食業はもともと仕込みには時間がかかるし、営業時間も長いしで、創業期には死にもの狂いで働かなければ成功はおぼつきません。外食の大手で、第二・第三の成功コンセプトが生まれづらいのも、死にもの狂いで働く「社内起業家」がいないからです。本人は寝る間を惜しんで働きたいというガッツがあっても、社員である以上、労働基準法の範囲内で仕事をさせなければなりません。成功者が出る環境ではないのです。これも、外食に限ったことではありませんね。

日本には「のれん分け」というすばらしい制度があります。外食業は、この制度をもっと活用すべきです。経営者が見込みありと評価した従業員を、どんどん独立させるのです。複数店舗を経営していて、フランチャイズを考えている経営者ならば、社員フランチャイズという形で独立させるのがよいでしょう。調理や店舗運営を熟知していることが独立の条件ですが、そのほかに一定の貯金があること、人を使うのがうまいこと、将来複数店の運営ができる(潜在)能力を持っていることも、合格の条件になります。

もう1つ、同一店名で経営をするのですから、店のコンセプトから離れるような勝手な行動をとられてはかないません。約束を守ること、契約を遵守できること、も条件になるでしょう。いくばくかの貯金はあっても、自己資金で新しい店を出させることは困難ですから、既存の複数店の1つを譲る形になります。営業店ですから一定の実績があります。そのため独立した社員は、その実績をスタートラインとして出発することができます。

経営者が絶対にやってはならないことは、赤字店を社員に譲ることです。利益が出ている店を譲ること。これは「社員のれん分け」成功の大原則です。

来店客数がみるみる上がってコストが急降下する

社員が1店を任されて経営者になったとたん、目の色が変わります。死にもの狂いで働きはじめます。働いた分が自分の収入アップにつながるのですから、必死さが違います。いくら長時間働こうとも、経営者なのですから、労働基準法も何もありません。お客の声にも耳を傾けます。商品のチェックも厳しくなって品質が上がります。提供時間も早くなります。誰に言われなくても店舗のクレンリネスにも最大の関心が払われます。基本は社員時代と同じことをやっているのですが、店主になったとたん、やる気、情熱、気配りが一気に増大するのです。店には活気がみなぎり、日一日とお客の数が増大していきます。売上増ですね。

ところがそれだけではありません。無駄な経費を使わないようになります。まずは人件費が減ります。人手の手薄な時間は、店主自らががんばります。身体はきつくてもその分、自分の身入りが増えるのですから我慢できます。

そればかりではありません。ロス退治に熱心になり、食材費が下がります。店の修理・メンテナンスを今までは外注していたものが、内注、つまり自分でやるようになります。よほどの厨房機器の故障が起きない限り、すべてDo it yourself!です。家賃ばかりはどうしようもありませんが、それ以外の経費は劇的に下がります。利益の劇的な増大が実現されるのです。

そうなると店主の収入が増えるばかりではありません。会社ものれん分けの店からロイヤリティをもらうわけですから、その収入も増大します。一般に、チェーンでも直営店とフランチャイズ(FC)店とでは、利益率がFC店のほうが高いのはこのためです。店主のコスト意識が全然違うのです。のれん分けで店をやらせてみると、経営者の資質が見えてきます。「できる人」と「できない人」が鮮明になるのです。

「できる人」にはもっと店をやらせて、さらに経営者の器を大きくさせます。その中で傑出した人物がいれば、自分で店舗運営をやってもらいながら会社の役員として迎え入れればいいのです。ダブル・インカムになりますね。アメリカの外食チェーンでは、最終的にそうやって本部の社長の地位に就く人がたくさんいます。軒先を貸した人が母屋の主人になった形ですが、それで母屋の屋台骨が盤石になるのならば、それにこしたことはないではありませんか。

株式会社エフビー 代表取締役 神山 泉 氏
早稲田大学卒業後、株式会社 柴田書店に入社。「月刊食堂」編集長、同社取締役編集部長を経て、2002年に株式会社エフビーを発足。翌年、食のオピニオン誌「フードビズ」を発刊。35年以上もの間、飲食業界を見続けてきた、業界ウオッチャーの第一人者として知られる。

※本記事の情報は記事作成時点のものであり、情報の正確性を保証するものではございません。最新の情報はご自身でご確認ください。

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