2015/12/22 特集

2016 “千客万来”になる! おさえておきたい外食トピックス(2ページ目)

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加速するインバウンド需要。一方でさらなる求人難も

――海外からの訪日外国人、いわゆるインバウンドも増加しました。

2015年はそれが大都市圏だけでなく、地方まで一気に波及した印象があります。最近は都心部からかなり離れたビジネスホテルも予約が取りにくくなっています。その中心は中国、台湾、韓国。低迷傾向にある大手居酒屋チェーンなどは、観光バスで立ち寄る外国人ツアー客のランチ需要を獲得して、売上を伸ばしているところもあります。ワタミフードシステムズ株式会社では、2015年月に、完全予約制のインバウンド専門の日本食店をオープンしました。かなり思い切った例ですが、4年後の東京五輪に向けて、こういった動きは増えていくかもしれません。

ただ、ここで留意しておきたいのは、インバウンド需要が決して“万能薬”ではないということ。メニューや従業員の教育などしっかりした受け入れ体制を整えずに外国人客を取りにいくと、結果的に店内が混乱し、サービスの低下を招いて顧客離れを起こすケースもありえます。ここでもやはり、どんな店づくりをしたいかという本質に立ち返ることこそが重要だと思います。

――店づくりという面では、人手不足は解消されていくでしょうか?

いえ、これは2016年も引き続き飲食店を悩ませる問題となるでしょう。景気がよくなり、売り手市場の傾向が強まるほど、長時間労働のイメージが強い飲食業界には人が集まりにくくなる。2015年は「ブラックバイト」など偏ったイメージの言葉が一人歩きし、このような状況をさらに悪化させました。こういう厳しい状況下では、いたずらに時給を上げて限られたパイを奪い合うだけではなく、今いる人を辞めさせない工夫が大切になります。

――よい処方箋はありますか?

例えば2016年1月から、国民1人ひとりに桁の番号を割り振るマイナンバー制度が始まりますね。これを好機ととらえるのも1つの発想です。このシステムが軌道に乗れば、納税だけではなく、社会保険や雇用保険の手続きも一元管理されるようになる。そうなると不透明なアルバイトの雇用は通らなくなります。残業手当や福利厚生も含め労働環境をしっかり整えて、それでも利益を出せる体質に変えていくしかありません。2016年は、その元年だととらえるべきです。

肉ブームは継続の予感。赤身はさらに人気拡

――今後、繁盛店のビジネスモデルが変わっていきそうですね。具体的にはどんな施策がありうるでしょう。

規模の大小には関わらず、セントラルキッチンの位置付けが見直されると思います。これまでは多店舗展開をしている大手チェーンがスケールメリットを活かすために導入しているケースが多かった。しかし、工場化というような大袈裟なものではなくても、いくつかの店舗を展開している中規模の会社であれば、うまく調理場を集約することで仕込みの作業を合理化できる。それによって従業員1人ひとりの労働負担を軽くできればいいわけです。うまく活用すれば「手仕込み」の魅力をアピールしつつ、同時にコストを下げることも可能です。

――2015年を振り返って、注目された食材などはありましたか?

3月に北陸新幹線が開通したこともあり、日本海の食材として高級魚・のどぐろの需要が上がりましたね。また、肉ブームが堅調ななかで、牛肉では赤身のニーズがより高まった印象です。東京・新宿の立ち食い焼肉「治郎丸」のような手軽な業態も引き続き人気を集めていますが、今や高級霜降り肉より高価な赤身も珍しくない。その中で六花界グループが、来店客が購入した肉を次回来店時まで熟成させてくれる「ミートキープ」の店を打ち出したのは独創的でした。熟成肉に体験という付加価値を乗せるこのような試みは、2016年も注目されると思います。

野生鳥獣の食肉を指すジビエという言葉も、ハンバーガーチェーンの「ベッカーズ」が期間限定で「信州ジビエ THE☆鹿肉バーガー」を売り出したりと、浸透してきました。狩猟頼りで供給が不安定なことや、衛生面の問題が解消されれば、市場は拡大しそうです。

野菜では、パクチーへの注目度が高まっているのを感じますね。残念ながら私は苦手なのですが、「パクチーモヒート」のようなカクテルができたり、鍋の具材に使われるほか、専門店も登場しました。野菜やサラダは、やはり女性客の人気が高い。今後は肉業態の中に野菜を取り入れる店も増えるのではないかと予想します。

PICK UP TOPIC のどぐろ

北陸新幹線開通で北陸食材に注目が集まり、専門店も登場
2015年に注目された食材の1つ「のどぐろ」。3月の北陸新幹線開通もあって北陸食材が脚光を浴びた。月には東京・銀座に「のどぐろ専門 銀座中俣」がオープン。旨みが凝縮され、脂ののったのどぐろを売りに、40~50代のビジネス層を獲得。2016年はランチ営業も開始する予定で、のどぐろの魅力をより多くの人に知ってもらいたいと考えている。

「のどぐろ専門銀座中俣」では長崎県産ののどぐろ「紅瞳(べにひとみ)」を様々な料理で提供。特に旨みをシンプルに味わえる「のどぐろ姿塩焼き」(写真左/4,298円)が一番人気
のどぐろ専門 銀座中俣
銀座中俣東京都中央区銀座-10-12 銀座サマリヤビルB1
http://r.gnavi.co.jp/caf6ytf90000/

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