都度揚げ天ぷらを前面に、記憶に残る店づくりで集客

オーダーが入るごとに、小ポーションで揚げたてを提供する“都度揚げ天ぷら”がヒット。定番だけでなく洋風の食材を取り入れた「変わり種」も10種以上提案し、女性から注目を集めている。

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天ぷら・日本酒 一門

茨城 水戸 天ぷら

磨き上げた赤銅が輝く一番人気のカウンター席。目の前で揚げた天ぷらを食べられる

天ぷらメインの居酒屋業態でアッパー層を開拓!

茨城・東海村で約20年間、一軒家をビストロ、炭火焼鳥、ラーメン店の3業態に分けた複合店を経営してきたオーナーの圷 和美氏が、水戸に進出。2017年9月に、水戸駅から車で約8分の駅前通り沿いにオープンを果たした。「店の周辺にある地元企業や、水戸駅近くのビジネス層を集客するため、水戸市内にはない新しい業態を模索しました」と、圷氏は振り返る。

商圏調査で気がついたのは、おいしい天ぷらを気軽に食べられる店が少ないこと。高級天ぷら店が1軒あるほかは、居酒屋や和食店で「天ぷらの盛り合わせ」がメニューにある程度だったという。そこでひらめいたのが「天ぷらを酒の肴にして、茨城の地酒やワインを楽しめる居酒屋」。天ぷらを看板メニューに落とし込むとともに、天ぷらの持ち味を際立たせるために考案したのが、オーダーが入るごとに揚げ、小ポーションで揚げたてを提供する“都度揚げ”というスタイルだった。これが、徐々に評判を呼ぶ。魚介や野菜など定番の素材はもちろんだが、「牛リブロースの大葉巻」(388円)や「モッツァレラチーズ トマトのカプレーゼ」(237円)など、洋風の食材を取り入れた「変わり種」も10種類以上提案し、女性から注目を集めた。

さらに、もう1つの看板が、茨城・霞ヶ浦の契約農家から直送される鴨。合鴨ではなく、都内のミシュランクラスの高級店で扱われている鴨と同等のフレッシュな素材で、「鴨すき」(2,138円)、「鴨なべ」(2,376円)のほか、「特製鴨醤油らーめん」(950円)などで提供。シメの一品としても人気を博している。そのほか、ご飯をすべて土鍋で炊いたり、デザートを手作りすることでも他店と差別化。「食事を楽しみたいお客様や、子ども連れ、シニアなど、幅広いニーズに応える店づくりを心がけています」と圷氏。主な客層は、地元企業のオーナーをはじめとしたビジネス層だが、女性やファミリーも順調に増加している。

一方、ドリンクでは大きな日本酒セラーを入口に設置してアピール。なかでも、地元の蔵元による「生樽酒」と、高級日本酒が売りだ。「生樽酒」はお土産を兼ねた升(250円)を購入してもらって提供するもので、存分に味と香りを楽しめる。また、1升1万円クラスの高級日本酒を、うすはりの半合グラスでリーズナブルに提供。高価格の銘柄を気軽にオーダーできると好評を博している。

空間も多彩だ。古民家風のテーブル席のほか、小上がりの半個室の掘りごたつ席、目の前で天ぷらを揚げてくれるカウンター席、完全個室の座敷席などがある。「この立地で長く愛される店になるために、様々な利用シーンを想定しました。トイレの際などにほかの席を見て、別の機会で利用されることも少なくありません」(圷氏)。

販促では、「まずは、売上より信用」と語る圷氏。現在はWeb販促をぐるなびに絞っており、口コミで店を知った人がぐるなびで情報を見てから来店するケースが多く、開店以来、高いアクセス数を維持している。今後は、20代後半から30代をターゲットに、カジュアルな新業態の開発にも取り組んでいく。

ここがポイント!

「都度揚げ天ぷら」でブレイク!
酒の肴にふさわしい一口サイズで、注文ごとに揚げたてを提供する“都度揚げ天ぷら”が人気。「牛リブロースの大葉巻」(写真)などの変わり種で認知を拡大。
日本酒ファンにも好評な「生樽酒」
茨城・水戸の蔵元(吉久保酒造)の「生樽酒」を、升で提供。升は有料だが、珍しい地酒の粋な飲み方が差別化につながり、来店・再来店を促進している。
和モダンなテーブル席など多彩な空間
古民家風のテーブル席(写真)のほか、小上がりのロフト風掘りごたつ席、カウンター席などがあり、仕事・プライベートの両面で利用する常連も多数。
巻物風メニューなど記憶に残る仕かけ
手作りの巻物風メニューで、記憶に残る仕かけを作るとともに、ドリンクのメニューには鈴をつけることで、迅速にオーダーに対応。接客力の向上を図っている。
エリアの特徴
水戸市は茨城県の中心的な商業都市で、県庁所在地でもある。JR水戸駅周辺には、政治・文化・経済の各施設が集まっており、賑わっている。
天ぷら・日本酒 一門
茨城県水戸市元吉田町124-3
https://r.gnavi.co.jp/r35101uc0000/
代表取締役 圷 和美 氏
23歳で、故郷の茨城・東海村で飲食業をスタート。2017年、42歳の時に水戸へ進出。