2019/02/27 繁盛の黄金律

こんな場所で店をやってはいけない

飲食店を経営するうえでリスクの高い土地は、どんなエリアで、どのような不安要素があるのか。また、逆に適した立地はどんなところなのか。集客の時間帯なども踏まえて解説します。

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Vol.90

学生街・オフィス街は、1年の3分の1が稼動しない

 今回は、危険な立地についてお話をします。外食業として避けたい立地です。

 まずは学生街です。これは昔から言われ続けてきたことです。1年の約3分の1は、学生がいないのですから、これほどリスクの高い立地はありません。学期中の低価格ランチだけが市場です。“定食屋”ですね。これも、大学内の学生食堂という強敵がいますから、ちょっと強気の価格を打ち出したらはじかれてしまいます。昔の大学周辺には、とんかつ店があったり、ラーメン店があったり、安居酒屋があったりで、けっこう飲食店が集中していたものですが、今はどこも閑古鳥が鳴いています。学生が驚くほど酒を飲まなくなっていますから、居酒屋も厳しいです。

 「学生街の喫茶店」という歌があるくらいだから、喫茶店はよいのではないかと思いがちですが、これがいちばん危険です。滞席時間ばかり長くて客単価は上がらない。もっともやってはいけない商売です。というわけで、例外もありますが、たいがい何をやってもダメです。学生街には近づいてはいけません。

 また、オフィス街も危険立地です。こちらも、休日ばかりが増えて、稼働日数が驚くほど少ないのです。最近は休日が長期化することも多く、さらに稼動日数が減っています。確かにオフィス街は、ランチのぶ厚い市場があります。大きなオフィス街はどこもランチ難民であふれ返っていますから、ランチ特化型の商売は成立可能でしょう。しかし、これもボリュームゾーンは1,000円までです。1,000円以上のランチは、高価格帯に属します。その客層がいたとしても、来店頻度はグッと落ちますし、市場は小さくなります。

 ランチで大事なことは、適正価格と回転です。短時間で一気に稼げる商売でなければ成立しません。注文から提供までに20分もかかるような店は、お客は使いたくても使えません。絞り込まれた人気商品が高速回転する店しか成立しないということです。ファストフードや丼物メニューの店、麺類の店は、オフィス街には合います。また、テイクアウトも、オフィス街に適しています。フードトラックもよいでしょう。さらに、デリバリーもこれから伸びていくでしょう。

 夜はどうか。ここでも、アルコール離れが驚くほど進んでいます。オフィス街の居酒屋は軒並み客数を落としています。ただし、ちょい飲みの「晩杯屋」や「HUB」のような、じっくりと腰を落ち着けて飲むタイプではない店は、可能性があるでしょう。でもこれも、純粋なオフィス街ではなく、オフィス街とつながる駅前立地が適しています。とはいえ、土・日曜日、祝日はまったく当てにできないことを覚悟しておかなければなりません。オフィス街も稼働日数がどんどん減っていることを、肝に銘じておきましょう。

 「from school」「from office」(学校から、オフィスから)の市場はどんどん小さくなっているのです。

オフィスも住宅地もある駅前が、最有望立地

 もうひとつ、ショッピングセンター(SC)内は、これから危険度がどんどん増します。どのSCも、集客力がどんどん落ちています。大手外食グループも、いまSCから逃げていて、デベロッパーはテナントが埋まらず、四苦八苦しています。

 一部の大型SCは、依然高い集客力を誇ってはいますが、こういうところは家賃も高い。しかも退出の通告があれば、すぐに出て行かなければなりません。儲かっていても出て行かなければならないのです。今は、人気の個人店にもお誘いがかかるようになっていて、デベロッパーは甘言の限りを尽くして入店させようとしますが、安易に出店を決めてはいけません。売れても地獄、売れなくても地獄なのです。SC内は、飲食でも物販でも、売上はSC本体の客数と完全に連動しますから、SC自体の魅力や集客力が下降線に入ったら、どんなに努力しても売上は下降線をたどることになるのです。そして、大方のSCが今、下降線に入っています。

 「じゃあ、どこがいいの?」ということですが、それは駅前でしょう。駅前といっても、大ターミナル駅ではありません。JRや私鉄の沿線の、周囲に広範に住宅地がある駅前周辺です。1日の乗降客数が5万人以上ある駅が望ましく、住宅地の住人の多くが通勤に利用する駅です。そこには可能性が十分にあります。この立地は、たいていの飲食業が成立する立地でしょう。帰宅客のちょい飲みも成立しますし、夕食用などの惣菜店もいい。しかし、いちばん大事なのは、高齢の夫婦や、バリバリ働いている“現役組”の子連れファミリーです。高齢者夫婦は、平日の朝、昼、夕食、すべてに対して顧客になってくれます。またファミリーは、土・日曜日や祝日に、ファミリー単位で来店してくれます。

 つまり、平日も土・日曜日や祝日も稼働する商売を適地に打ち込めば、まんべんなく売れるということです。この立地に合う商売は何なのか、をじっくりと考えてみてください。いろいろとアイデアが浮かぶはずです。テイクアウトも有望です。

 この駅前立地も、住宅地一辺倒であるよりも、オフィス街の要素を含んでいたほうが、圧倒的に強くなります。平日の夜の集客力がまったく違うのです。ただし、こういう立地は、有力チェーンがベストポイントを押さえていますから、彼らと戦って勝つための特徴や、看板メニューなどの強い“武器”を持っていなければなりません。

株式会社エフビー 代表取締役 神山 泉 氏
早稲田大学卒業後、株式会社 柴田書店に入社。「月刊食堂」編集長、同社取締役編集部長を経て、2002年に株式会社エフビーを発足。翌年、食のオピニオン誌「フードビズ」を発刊。35年以上もの間、飲食業界を見続けてきた、業界ウオッチャーの第一人者として知られる。