2019/04/16 特集

何が変わる? どう変わる? 消費税10% Are You Ready?(2ページ目)

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消費税10%への移行に伴い、国内では初めて「軽減税率」が導入!

軽減税率とは?
消費税の税率を特定の商品に限り低くすること。10月に予定されている10%への引き上げでは、「飲食料品」と「週2回以上発行の新聞」が対象で、8%に据え置かれる。ただし、酒類と外食などは対象外。また、テイクアウトとデリバリーは8%だが、同じ料理を店内で提供すると10%。ケータリング・出張料理も10%になる。

飲食店への影響は?

適切な商品管理が必要
テイクアウトや物販、デリバリーを導入している場合、今後は8%と10%が混在することになる。販売時だけでなく、仕入れでも同様。そのため、商品管理と経理処理を、税率・税額ごとに区分して行う義務が生じる。

申告・納税の変化
仕入れる食材の多くは8%だが、外食として提供するときは10%。売上にかかる10%の消費税と、仕入れにかかる消費税(酒以外はほぼ8%)の差額が納税額になるので、売上が同じなら必然的に納税額は増える計算になる。

日本で初導入の「軽減税率」。「外食」と酒類などは対象外

 消費税10%に伴い、日本で初めて導入される「軽減税率」について、詳しく見ていこう。そもそも、消費税は所得に関係なく一律に課税され、所得が低い人ほど税負担が重い。軽減税率は、生活必需品に対する税率を低く抑えることで、低所得者層へ経済的な配慮をすることが目的とされている。

 今回、軽減税率の対象となるのは、「酒類を除く食品表示法に規定されている飲食料品」と「週2回以上発行されている定期購読の新聞」など。したがって、スーパーやコンビニで、酒類以外の飲み物、肉や野菜などの食材、砂糖や塩などの調味料、調理済みの惣菜や弁当を購入するときの税率は8%のまま。ただし、みりんは酒税法上の酒類(アルコール分1度以上)なので対象外。調味料として並んでいる「料理酒」も対象外だ。

 「飲食料品」が軽減税率の対象となる一方で、「食事の提供」は対象外になった。すなわち、飲食店(ファストフード店やコーヒーショップを含む)や、コンビニエンスストアのイートインは10%。同じ料理でも店内(テラス席なども含む)で食べれば10%、テイクアウトなら8%という、複数税率の混在となる。では、フードコート、デリバリー、ケータリング、出張料理はどうか。線引きの基準は「飲食設備(テーブルやイス)」と「飲食させる役務の提供」の有無。そのため、飲食設備のあるフードコート、調理や配膳などの役務(サービス)を伴う出張料理やケ―タリングは10%、飲食設備も役務もないデリバリーは8%となる。

 これらは「外食が贅沢品とは言わないまでも、生活必需品ではないと位置付けられた結果」と二杉氏。だが、「女性の社会進出や高齢化を背景に、外食の利便性に対するニーズは依然として高い」と指摘する。飲食企業としては、外食へのこうしたニーズに応えて、増税に対応することが期待される。

売上が同じでも納税額は増加。商品管理の徹底が不可欠

 軽減税率の導入による影響は多岐に渡るが、確実に変化・増大する実務上の対応・対策を押さえたい。まず最初に、自店の商品の中に軽減税率の対象品目があるかないかを区分しよう。例えば寿司店の場合、来店客が店内で食べる寿司の消費税は10%だが、お土産用に提供するものは8%。これまでは、店内飲食とお土産の総額に対して8%を消費税とすればよかったが、軽減税率導入後は、10%と8%の商品を区別して会計処理を行い、レシートを発行することが求められてくる。消費者から「これは何%?」と聞かれることもあるだろう。現場で混乱が起きないように、早めにスタッフ全員に周知徹底しておきたい事案だ。

 区分が必要なのは、提供する商品だけでなく、仕入れも同様。飲食店の場合、原材料のほとんどは「飲食料品」なので税率は8%。しかし、酒類は対象外なので、日本酒、ビール、ワイン、焼酎、そしてみりんも10%だ。一方、ノンアルコール飲料(アルコール分1度未満)は8%。箸、お手拭きなどの消耗品や備品はすべて10%になる。

 ここで注意したいのが、飲食店の場合、仕入れの多くは8%だが、販売は10%であること。店が納税する消費税額は、「売上に対する消費税」から「経費(仕入れなど)に対する消費税」を差し引いた金額だ。つまり、上の囲み内の「例」のように、売上が300万円、仕入れが90万円の場合、軽減税率導入前なら消費税率はどちらも8%なので、納税額は16万8000円。しかし、10月以降、売上にかかる消費税のみ10%になるので、納税額は22万8000円になり、売上が同じなら税負担が増えてしまう。実際には、売上のなかにも8%の商品がある店も多いだろうし、仕入れの中にも10%の品目があるだろうから一概には言えないが、店の納税額が増える可能性は高い。この点をしっかり念頭に入れて、まずは正確に制度を理解し、実務処理を準備することが肝要だ。

 前述したレシートを含め、様々な請求書や領収書などの書類も、軽減税率の導入に伴って、様式や要件が変更になる。これまでのように単一の消費税率であれば、経費の総額に8%を掛ければ、「経費に対する消費税額」(=控除税額)が算出できるが、軽減税率導入後は、控除の要件に「区分記載請求書等保存方式」が義務付けられる。これは、品目ごとに税率・税額を区分して記載する方法。また、2023年10月からは、「適格請求書等保存方式」(「インボイス制度」)」に移行予定で、税務署長から登録を受けた課税事業者(適格請求書発行事業者)が発行する「インボイス(=売り手が買い手に対して発行する書類。税率・税額を明記する)」の保存が必要になってくる。

 こうした将来の変更にも対応可能なレジシステムの導入を検討することも一案だが、まずは現在のレジが複数税率に対応できるかどうかを確認したい。「対応レジなどの購入が必要な場合は、『軽減税率対策補助金』制度があるので、この機会にシステムを更新するとよいでしょう」と二杉氏。9月30日までに対応レジを購入、もしくは改修すれば、補助の対象になる(12月16日までに申請)。まだ十分に間に合うので、ぜひ検討してみよう。

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